Interview

ダルビッシュ有、大谷翔平らを追いかけて 中国地区屈指の大型右腕・仲村竜(岡山学芸館)の夏への誓い【後編】

2021.07.05

 昨秋のドラフトでは秋広 優人二松学舎大附出身)、阿部 剣友札幌大谷出身)の2メートルコンビが指名された。ドラフト戦線において“大型投手”は、やはり各球団が求める選手の1人である。

 事実、選抜ではこの世代の大型投手の代表格・達 孝太天理)は大きな注目を浴びた。そんな“大型投手”と分類してもいい逸材が岡山の新鋭・岡山学芸館にいる。最速147キロを計測する184センチ右腕・仲村 竜である。

 今回は新チーム発足時の話やピッチングフォームについて話を聞かせてもらった。

ダルビッシュ有、大谷翔平らを追いかけて 中国地区屈指の大型右腕・仲村竜(岡山学芸館)の夏への誓い【後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
プロ注目の最速147キロ・仲村竜(岡山学芸館) 大型右腕が地元・沖縄から岡山へ飛び出したワケ【前編】

「実りの秋」にできず、屈辱味わう

ダルビッシュ有、大谷翔平らを追いかけて 中国地区屈指の大型右腕・仲村竜(岡山学芸館)の夏への誓い【後編】 | 高校野球ドットコム
仲村竜

 いよいよ迎えた新チーム。仲村の中では「夏の大会は苦しい場面で継投させてしまった」ことを反省して、完投できるような体力をつけること。そして中国大会優勝というところを目標に定めて練習に打ち込んだ。

 佐藤貴博監督も「今年は計算できる投手がいることが強みです」と語っていた通り、指導者間の中では投手陣への期待は大きかった。ただ、結果は苦しいものだった。

 エースナンバーを背負って再び秋の大会に入り、予選を突破して県大会にも無事出場。県大会に入っても順調にベスト4まで勝ち上がる。中国大会への出場権は3つあったため、残り1勝で中国大会への出場が決まる。

 大事な一戦となった準決勝の相手は、夏に敗れた創志学園。チームにとっても仲村も負けられない試合だったが、2対5で敗戦した。仲村は7回途中で3失点をして降板。投げ抜くことが出来ずにチームに勝利をもたらすことが出来なかった。

 翌日の3位決定戦の倉敷工戦でも仲村は先発のマウンドを任されるが、1回持たずに降板。試合には勝利したものの、エースとしてのピッチングが出来なかった。ここでのピッチングは仲村にとって忘れがたい試合となった。

「帰りのミーティングで自分のピッチングについて時間を作って話をしてくれて、自分の弱みとか沢山指摘してもらいました。『変わらないとダメだ』と一言ももらって。大きな経験だったと思います」

 しかし短時間で劇的に変わるのは難しい。中国大会の初戦・石見智翠館戦では3回持たずに4失点と苦しい結果。続く準々決勝・下関国際戦ではマウンドに上がることがなく、試合にも1対5で敗戦。目標だった中国大会優勝にはあと少し届かなかった。

[page_break:フォームを改造、聖地に戻って雪辱誓う]

フォームを改造、聖地に戻って雪辱誓う

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仲村竜

 秋を振り返って「監督からの信頼がないから下関国際戦は投げられなかったんだと思います」と語ったうえで、自身のピッチングをこのように振り返った。
 「良いピッチングが1イニングもできなかったと思います。自分のピッチングができずに交代することが多く、チームに勢いを与えることが出来ませんでした」

 気持ちは十分だった。しかし勝負所で思い切って投げられずに球数が増えてしまいスタミナ切れ。自身に負けたことが大きかったと仲村は分析した。自信を深めるべく、自分に妥協せずに練習に打ち込むが、フォームの課題も既に明確になっている。

 「腕をどうしても小さく使ってしまうので、十分に上半身を活かし切れていないところがあります。ダルビッシュ有さんや大谷翔平さんなど、同じ長身投手がどんな体の使い方をしているのか見ながら、大きく使えるようにしています。そうすればもっと楽にスピードも出せると思うので」

 また、本人の中では股関節の柔軟性も課題の1つだと語る。
 「1年生の時からずっと(投球時の)歩幅が6歩なんです。だからイメージよりも速くリリースしてしまって、高めに浮くことが多くなっていると思っています。下半身の力も使いきれずスピードも出ていないので、6歩半から7歩くらいまで広げられれば、全身を使って角度を付けながらも伸びのあるボールが投げられると思っています」

 硬式になってからストレートは「地面に叩きつけるようにして投げています」とのことだが、よりリリースポイントを安定させるためにも股関節の柔軟性を磨くことも仲村にとっては大事なポイントになっている。

 1年生の夏に甲子園を経験した長身右腕もいよいよラストイヤーとなる。「甲子園の雰囲気はあそこでしかわからないので、甲子園に行って悔しさを晴らしたい」と3年前の悔しさを晴らすことに燃えている。そのためにもこの期間の過ごし方は、とても重要だと感じ取っている。

 「秋はエースとしての実力が足りませんでした。ですので、弱みを見せずに誰よりも練習して周りから認めてもらうようになって、甲子園にもう一度行けるように意識を高くもってやります」

 指揮官の佐藤監督も「仲村に関しては、僕自身物足りないです。まだまだです」と仲村に求めるものは高い。その一方で、「将来、テレビの前で投げている可能性があると思うので期待はしています」とコメントを残している。

 150キロのストレート。そしてストレートだけで三振を奪える投手を目指し、今も研鑽を重ねる仲村。インタビュー中、コメントの端々から自分に対して厳しく高いハードルを立てていることが見えてきた。

 春の県大会では初戦となる2回戦・おかやま山陽の前に、1対3で敗戦。残された大会は夏のみとなり、初戦は作陽と決まった。直近の練習試合ではコンスタントに140キロ台を計測し、九州国際大付との練習試合でも好投を見せるなど、調子は上がっている。この夏、一気に世代屈指の大型右腕へ。仲村の集大成に注目したい。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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