Interview

「この舞台を準備してくださったことに感謝」18年ジャイアンツカップ優勝投手・島野愛友利の現在。

2021.06.17

 第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会の決勝が阪神甲子園球場で行われることが4月に発表された。女子高校球児にとっては悲願の出来事である。

 今夏の選手権大会には過去最多の40チームが出場する。注目校の1校に挙げられるのが、選抜大会2回、選手権大会1回の優勝を誇る神戸弘陵だ。女子選手ながら最速123キロの速球を投げるエースの島野 愛友利(3年)は大淀ボーイズのエースとして、ジャイアンツカップ優勝に導いた実績を持つ。

 兄の凌多(大阪桐蔭→龍谷大→社会人)と圭太(履正社→帝京大)も甲子園の出場経験があり、3兄妹での甲子園出場にも期待が高まる。早くも高校ラストイヤーを迎えた島野の現在地に迫った。

中学時代の仲間から刺激をもらいながら

「この舞台を準備してくださったことに感謝」18年ジャイアンツカップ優勝投手・島野愛友利の現在。 | 高校野球ドットコム
島野愛友利の投球フォーム

 中学野球日本一投手として、鳴り物入りで入学した島野。一昨年の選手権で1年生ながらリリーフ登板するなど、早くから強豪校のメンバー争いに割って入った。順調なスタートを切ったように思われたが、「高校はレベルが高く、壁にぶつかった」と実力差を痛感した。特に繋ぐ意識の強い打線への対応に苦労したという。

 昨年は主力選手として前年以上の活躍を見せるつもりだったが、コロナ禍で大会の中止が相次いだ。「一つ上の先輩とできる最後の1年だったんですけど、大会もなくなってしまって、あまり全力を出し切れていない1年間だったと思います」と振り返る。全国規模の大会が開催されず、力を試す場すらなかった。その中でも「その期間があったからこそ得たものはたくさんあると思うので、それを今年には活かしていきたいです」と前向きに捉え、今シーズンに挑んだ。

 今年初の大会となった第22回全国高等学校女子硬式野球選抜大会では投手陣の柱としてフル回転。しかし、準決勝で履正社に0対4で敗れ、3連覇とはならなかった。チーム、個人としても課題が見えた大会だったと島野は話す。

「自分も含めてチーム全体で課題が残る大会だったので、これを夏に活かしていかないといけないと思います。チームとしては繋ぐバッティングができず、自分自身は連戦に弱く、安定したピッチングができなかったのが夏の課題です」

 選抜を終えてからは「ブルペンでより大会を意識して投げるよう取り組んでいます」と実戦を想定した投球練習に重きを置いた。取材日も試行錯誤しながら投球練習をする姿が見られた。

 島野が選抜大会で戦っているのと同時期に甲子園では選抜高校野球が行われていた。大淀ボーイズの同期では明豊からともに投手陣を支えた京本 眞鳥取城北からはバッテリーを組んだ岸野 桂大と3番遊撃手としてチームの中核を担った松田 龍太が出場。試合当日には「応援しているよ」などと連絡を取り合ったという。

「凄く嬉しかったですし、甲子園で活躍している選手と一緒に野球ができたと考えると凄く誇らしいです」と同期の活躍を見ていた島野。この時はまだ、自分も甲子園に立てるチャンスが巡ってくるとは思ってもいなかった。

 だが、その約1か月後に女子の選手権大会決勝が甲子園で行われることが発表された。そのことについて、島野はこう語ってくれた。

「男の子と同じ甲子園の舞台に立てると思っていなかったので、凄く嬉しい気持ちです。ここまでの舞台を用意して下さったことに感謝しています」

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悲願の甲子園の舞台へ

「この舞台を準備してくださったことに感謝」18年ジャイアンツカップ優勝投手・島野愛友利の現在。 | 高校野球ドットコム
島野愛友利

 甲子園を目指せることになり、練習にもより熱が入るようになった。「とにかくチームで優勝することが目標なので、チームを勝たせられるような活躍をしたいです。チーム力が一番大切だと思っているので、チーム一丸となって、一戦一戦頑張りたいです」と最後の夏に向けて意気込んでいる。

 練習熱心な姿は誰もが認めるところ。彼女の野球に対する姿勢について、石原康司監督はこう評価する。

「練習態度、取り組みについて言うことはありません。ストイックで、周りが尊敬するような子です。島野が打たれたら仕方ないとみんなは思っていると思います。それくらい一生懸命やっている子です」

 最上級生となってからは副主将を務め、主将の小林 芽生とともにチームを献身的に引っ張っている。取材中、島野の口からは「チームを勝たせるために」といった言葉が何度も聞かれたが、それを強く思うようになったきっかけがはジャイアンツカップ優勝だったという。

「中学生の時にチーム一丸となって勝ったのが印象的で、野球は一人ではできないということを学びました。野球をしている中では大きな出来事でしたし、優勝しているのとしていないのでは凄く差があったのかなと今は思います」

 女子選手が日本一になったチームのエースだったことで、世間からの注目を集めるようになった。それでも浮かれることなく、もう一度、歓喜を味わうために努力を続けている。

甲子園に出場できた際には「レベルアップしたところをしっかり見せていきたいです。ストレートで押していくことを見てほしいです」とアピールポイントを話してくれた。

 尊敬している投手はオリックスの山岡 泰輔で、体の使い方を参考にしているという。「腕だけにならないように全身を使って投げることを意識しています」と正しい動作を身に付けることに高い意識を置いている。体を大きく使った投球フォームは見栄えがあり、男子選手にとっても球速アップの手本になるのではないだろうか。

 卒業後の進路に関してはまだあまり考えていないそうだが、野球を続けたいという希望は持っている。まずは夏の戦いに向けて全力を尽くしてから、今後について熟考する見通しだ。

「ガッツあるプレーや細かいプレーは凄く魅力的だと思うので、ぜひ見てほしいです」と最後に女子野球の魅力について語ってくれた島野。今夏甲子園のマウンドに立つことは叶うのか。女子野球を代表する投手のラストサマーに注目だ。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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