Interview

中3で180センチ・102キロ。埼玉の怪童・五十嵐将斗(川口リトルシニア)に迫る

2021.05.29

 埼玉県に規格外の中学生スラッガーがいる。川口リトルシニアでプレーする五十嵐将斗は身長180センチ、体重102キロと中学生離れした体格で、いかにも強打者という風格を醸し出していたが、取材日の打撃練習でも期待通りの打棒を披露した。

 小学校6年時にリトルリーグの日本代表としてアメリカで行われた世界大会に出場。投手としては3勝、打者としては本塁打1本を記録し、投打でチームの3位入賞に牽引した。それから約3年が経過し、現在中学3年生となった五十嵐は半年後、高校野球生活を控えている。今回は五十嵐のこれまでの野球人生、そして彼の魅力に迫っていく。

爪痕残した世界大会

中3で180センチ・102キロ。埼玉の怪童・五十嵐将斗(川口リトルシニア)に迫る | 高校野球ドットコム
五十嵐将斗(川口リトルシニア)

 小学2年生の頃、12歳、10歳離れた二人の兄に導かれ野球を始めた五十嵐は、兄たちが所属した川口リトルに入団する。身長も小学4年生の頃には7センチ伸びて167センチにまで成長した。そんな五十嵐はリトルリーグでは入団当初から一つの目標を掲げていた。それは世界大会出場。リトルリーグはアメリカ母体の国際的な連盟で、毎年同国で世界選手権(リトルルーグ・ワールドシリーズ)が開催されている。日本のチームは全国12連盟、674チーム(2020年3月時点)が参加する全日本リトルリーグ野球選手権大会で優勝した1チームが日本代表として出場することができる。

 小学校6年生となった五十嵐は2018年の全日本選手権で優勝を果たし、世界大会の出場権を得た。

「リトルに入った時からの目標だったので、選ばれた瞬間はすごく嬉しくて、アメリカも初めてだったので楽しみでした」と当時を笑顔で振り返った。

 世界大会では3位という堂々の成績を残す。投手としては、パナマ代表戦、プエルトリコ代表戦、アメリカ・ジョージア州代表戦で先発し、いずれも勝利投手となる。そして打者としては3位決定戦のアメリカ・ジョージア州代表戦で本塁打を放った。「なかなか出なくて最後の試合でやっと1本出たので嬉しかったです」。大舞台で日本のスラッガーとしてしっかり爪痕を残した。

 投打で日本代表の3位入賞に牽引するも世界のレベルを痛感した大会だったという。

「外国のピッチャーは球も動いたり速いというのは、わかってはいたんですけど、打席に入って改めて実感できました。特にパナマの選手で、同じ小6で130キロ投げる投手がいて、球が見えなかったです。日本では速くても125とかなので、130となると勘じゃないと打てないと思いました」

 大きな目標を達成した五十嵐は中学も二人の兄と同じく川口リトルシニアに進んだ。

[page_break:こだわりは豪快なフォロースルー]

こだわりは豪快なフォロースルー

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五十嵐将斗(川口リトルシニア)

 川口リトルシニアでは、入団直後から2つ上の3年生に帯同して公式戦に出場した。当時の五十嵐について、プロ野球での経験もある三好正晴コーチは、「今の雰囲気と一緒で、しっかりバットが振れますし、普通の中1ではないなっていう印象でした」と舌を巻いたという。

 それでも2年生の頃に不振に陥った。「『打てない』と気持ちが焦ってしまい自分のスイングが変になったりして、調子が悪くなっていきました」。そこで兄たちにアドバイスをもらい打撃の見直しを図った。それまでは、打席内で考えすぎてしまうことが多かった五十嵐。それを感じていた兄たちから「打席内では『タイミングを合わせてフルスイング』ということだけを考えるように」との指摘をもらい本番では頭の中をシンプルにして臨むようになった。

 そして三好コーチも五十嵐の打撃フォームの修正を試みた。

「(以前は)どちらかと言うとミートポイントが体に近かったです。今までの打ち方だと今後の高校野球、大学野球へ向けて厳しいかなという思いがあって、それをもっと体の前に変えるように助言しました。やっとなんとなく馴染んできたかなという感じです」

 現在は中学通算20本塁打まで到達。ここ最近では10試合で5、6本記録しており、調子は上々のようだ。打撃練習では両翼90メートルの川口リトルシニアグラウンドで柵越えを連発。最長で推定135メートル、グラウンド奥にあるサブグラウンドまで飛ばしたこともあるそうだ。

 そしてなんといっても豪快なフォロースルーが魅力だ。自身も「自分はミートポイントが近いので、当たってからの前(フォロースルー)の大きさを一番意識しています」と意識を語るが、対戦相手としてもスイングを見ただけで脅威に感じるだろう。

 打線では3番を打ち、三塁手と一塁手をこなしている。守備においても自分の”型”を持っており、うまく体を使えている印象。柔らかいステップから、自信があるという肩で力強い送球を見せた。

 三好コーチも「ああ見えて守備もそこそこできますし、走れるので全てでレベルが高く、確実性のある選手になってもらえたらなと思います」と期待を寄せる。

 五十嵐は現在、7月20日に開催予定のMCYSA全米選手権大会の日本代表にも選出されている。開催となれば2度目となる世界の舞台だ。

「小学校の頃はあまりいい成績が残せず、世界の選手たちの凄さは6年生の頃に実感しました。なので、もう一度アメリカでプレーして活躍したいです。全米選手権が開催されたら暴れたいと思います」と鼻息を荒くする。

 経験豊富なスラッガー・五十嵐将斗はどんな活躍を見せてくれるだろうか。これからの成長を楽しみにしたい。

(記事=藤木拓弥

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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