野球をプレーするうえではもちろん、生きていくうえでもメンタルの保ち方は大きな要素となる。ここぞの大一番や苦しい時、プロ野球選手たちは、どのようなことを意識してきたのだろうか。
仙台育英高校からヤクルトへと入団し、2018年オフに楽天へと移籍。2021年シーズンからルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーする由規に話を聞いた。
トライアウトでチームメートと対戦

佐藤由規(写真提供=埼玉武蔵ヒートベアーズ)
昨日の敵は今日の友。当然、その逆もある。移籍が伴う勝負の世界では頻繁に起こりうる。由規にもつい最近そういった出来事があった。
楽天から戦力外を受けた由規は、昨年12月に神宮球場で12球団合同トライアウトに参加した。そこで由規は打者3人と対戦し、本塁打、死球、見逃し三振の結果を残している。真剣勝負の大一番。それもひとり目の対戦で本塁打を打たれてしまった。
由規から本塁打を放ったのは、楽天でチームメートだったルシアノ・フェルナンドである。2年間同じユニフォームを着て戦っていた仲間との対戦はどういった心境だったのだろうか。
「トライアウト当日に対戦相手を知ったんですけど、フェル(フェルナンド)とは『お互いにやりづらいね』って話をしてましたね。手の内がわかってるのもありますしね。実戦になればそんなことは考えないのですが」
対戦相手がわかった時から複雑な心境はお互いにあったようだ。だが、打たれたことに関しては淡々としていた。
「(ホームランを)打たれてしまったなぁって感じです」
打たれた恨み節はもちろん、悲壮感もまったくない。その出来事を前向きに捉えているように見受けられる。
「また同じチームでやることになったのもなにかの縁ですし、もうホームランを打たれることはないんだな、って思いますね」
そう、フェルナンドもトライアウト終了後に由規と同じ埼玉武蔵ヒートベアーズと契約しており、2021年シーズンからは再びチームメートとなったのである。
自分から真剣勝負の場でホームランを打った選手が、後ろを守るというのはきっと心強いことだろう。