Interview

元プロから教わった理論をもとに通算37本塁打。大会屈指のスラッガー・小澤周平(健大高崎)の進化の軌跡

2021.03.18

 今年にセンバツ出場出場チームの中で最も本塁打を打っているスラッガー・小澤周平健大高崎)。3月に入って本塁打2本増やし、通算37本塁打を記録している。そんな小澤の歩みを振り返っていきたい。

元プロから教わった打撃理論をアレンジを重ねて進化を遂げた

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1年秋の小澤周平(健大高崎)

 ホームランは常に憧れ、それを実現してきた。小学校1年生から野球をはじめ、山手メッツでプレーし、腕を磨いた小澤。小学校の間に小澤がスラッガーへ化ける出会いがあった。それが元プロ野球選手・佐野 元国横浜出身)氏だ。現役時代の本塁打は1本。しかし卓抜とした打撃理論はアマチュア界では評判で、小澤にとって小中学校の先輩。家も近所で、「親の勧めで佐野さんの野球教室にいったのですが、そこでスイングを教わりました。「今も意識しているボールに対して平行なスイングをする。打撃はずっと自信がありましたし、ホームランを打つことができました」

 小学時代は少年野球仕様として狭いにしても、46本塁打を記録。なかなか飛ばせるものではない。体格も大きいわけではなく、打球を飛ばせる小澤の技術は群を抜いていたと思わせるエピソードだ。

 小澤は小学校6年時に参加人数700人の激しい競争を勝ち抜き、ベイスターズジュニアに選出。当時は横浜南ボーイズに進むと、フェンスが深くなっても通算20本塁打を記録。

「硬式に変わってそんなに打てなかったですね」と振り返るが、十分にすごい数である。

 そんな小澤が健大高崎に進んだのはボーイズの先輩・大越弘太郎(亜細亜大)に憧れたのがきっかけだ。

 小澤は早くも頭角を現し、春季大会後の練習試合ではスタメン起用され、星稜との練習試合では荻原吟哉(亜細亜大)が投げ込んだ直球をもの見事にライトスタンドへ運んだ。そのあと、健大高崎のネット裏に選手の計測された筋力数値やスイングスピードが張り出された掲示板をのぞき込むと、3年生を差し置いて上位に入っていた。この時から非凡な才能を示していたのだ。

 最も健大高崎の環境は小澤に最適だった。盛岡大附でコーチ経験のある赤堀コーチが小澤たちの代の入学と同時期に赴任。そこで教わった「ボールのラインに対してバットの軌道を入れること」というものは、佐野氏から学んだ打撃理論に近い。赤堀コーチは入学する選手たちの中学時代の打撃理論を理解した上でコーチングにあたるそうだが、小澤がそれほど苦労することなく、順応できたのは小学校時代からの下積みがあったこと。また、小澤自身、打撃の探究心が深い選手だったことだ。

[page_break:この冬にかけて守備と打撃も上達!]

この冬にかけて守備と打撃も上達!

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 打撃フォームに対する意識を聞いてもしっかりと自分の言葉で帰ってくる。また小澤が素晴らしいのはそうした知識をチームメイトに共有できること。高校通算23本塁打のスラッガー・森川倫太郎も打撃で悩んでいた時に小澤からアドバイスをもらい上達ができたという。またほかの選手に話を聞いても、「打撃理論が本当に詳しくて良きコーチ役です」と絶賛する。

 そんな小澤は1年から順調に本塁打を積み重ね、1年秋までに17本を記録。そのうち1本がセンバツ出場へつなげる一打だった。地元開催となった秋季関東大会の常総学院戦の9回表に、一條力真(東洋大)から同点2ランを放つ。

「(一條投手は)ストレートととフォークをコンビネーションにする投手ですが、初球、甘めのストレートが入ってくるというデータが入っていました。その初球を狙い打ってうまく打ててよかったです。あの場面はつなぎたい気持ちと自分で決めたい気持ちが両方でした。実際に打てて自信となり、自分の中で勝負強さが出てきたと思います。この本塁打を機に長打力もぐっと伸びてきました」

 2年秋までには通算35本塁打に到達。小澤の言葉通り、昨秋の関東大会決勝では再び常総学院と当たり、決勝戦の2ランを放っている。そんな小澤の打撃のポイントは以下の通りである。

「自分の技術の話になりますが、ボールの軌道に対してラインを入れるということは自分としては、投げ込んでくるボールが自分のもとに近づいてきたら、ボールが3つ飛んできていることを想定しています。

 そのラインに対して、ボールとバットついている時間が長くすることを意識してボールををとらえています。また不調時には下半身を低くして、どっしりと低く構えることを意識しています。自分の打撃で特徴的なのは、右足に踏ん張れること。崩されても踏ん張れるのが特徴です」

 打撃が注目される小澤だが、セカンドの守備も上達を見せている。まだ2年秋の時は「1学年上の橋本 脩生さん(国学院大)、福岡勇人さんから教わっていて、それでもあの人たちのスピード、ポジショニング、グラブさばきと比べると全然まだまだで、自分は確実に処理してアウトにするタイプだと思います」と語っていたが、2月の取材に訪れた時の小澤の二塁守備はかなり上達し、スピード感や動きのキレも出ていた。小澤は「冬場のトレーニングの成果が出ているのかなと思います」と笑顔を見せたが、守備も見逃せない存在となった。

 目指す通算本塁打は60本。今、雑誌に挙がっているスラッガーや通算40本塁打以上の選手に対しては対抗心を燃やす小澤。ライバルの1人として上げていた前川右京(智辯学園)と仲良くなり、打撃論についてLINEなどで意見を交わすこともあるという。

 選抜も近づいてきた。目指すは「日本一のキャプテンになりたいです」。
打撃論を惜しみなく伝える小澤を慕う選手も多く、自主的に練習をする選手も多い。
「今年の選手たちは向上心の高い選手が多い」と青柳監督と評するが、中心選手である小澤が作ってきたものだろう。

 1年秋から主力選手として活躍するも、実はこれが初の甲子園。関東で猛威を振るってきた打撃を全面発揮する。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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