Interview

県立岐阜商の小さきエース・野崎慎裕が144キロ左腕になるまで【前編】

2021.03.10

 名将・鍛治舎巧監督が母校の県立岐阜商に2018年より復帰すると、確実に力をつけていき、昨秋は2年連続で秋季東海大会の準優勝を飾る。今春の選抜の出場を決めており、2021年も見逃せないチームとなっている。

 そんな県立岐阜商のエースとして牽引するのがサウスポー・野崎 慎裕だ。身長172センチ体重72キロと少し小柄ではあるが、最速144キロを計測する真っすぐを軸に相手打者を圧倒する。1年生の春から公式戦デビューを果たしている逸材である野崎は、どんな野球人生を歩んできたのか。

U15セレクションの経験を活かして

県立岐阜商の小さきエース・野崎慎裕が144キロ左腕になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
野崎 慎裕(県立岐阜商)

 4兄弟の3男として育てられた野崎は、兄の影響で幼稚園から野球を始めていたとのこと。主に投手もしくは一塁手を守り、小学生までは軟式をやっていたが、中学校へ進学すると硬式の西濃ボーイズでプレーすることを決める。

 「兄は中学校の部活動でしたが、自分は上のレベルで野球をやりたいと6年生の時から思っていて。その時に、当時のコーチが西濃ボーイズとつながりがあったので、チームを紹介してもらって入ることを決めました」

 1年生の段階から110キロくらいの球速を出していた野崎だが、練習を重ねていき2年生の時は125キロまで球速アップ。硬式を使うことに難しさはなく、順調にステップアップをしていった。そんな野崎が2年生の時に1つの転機が訪れた。

 「2年生の秋に出場した中日本ブロック選抜大会で活躍したのがきっかけで、U15の選抜セレクションに呼んでもらって参加しました。結果は駄目でしたが、参加していた選手とのレベルの差を感じたので、練習へのモチベーションは高まりました」

 上には上がいることを肌で感じた野崎。さらなる高みを目指すべく、これまではあまり取り組まなかった下半身強化にも積極的に打ち込むようになった。
 「坂道を使って100メートル10本、50メートル10本というように走り込みで下半身の強化をしました。おかげで3年生の春には127キロだった球速は夏には134キロまでアップしました」

 個人としてのスキルを伸ばした野崎だったが、チームはなかなか大きな大会で勝つことが出来ず、野崎は西濃ボーイズでの3年間を終えることとなる。そして高校では「練習の雰囲気の良さ。あとは監督の話を聞いて『甲子園で優勝を目指せる』と思った」ということで、県立岐阜商へ進むことを決心する。

[page_break:144キロ左腕の各球種のポイント解説!]

144キロ左腕の各球種のポイント解説!

県立岐阜商の小さきエース・野崎慎裕が144キロ左腕になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
野崎 慎裕(県立岐阜商)

 高い志をもって県立岐阜商の門をたたいた野崎はなんと1年生の春からベンチ入り。大会でも登板機会をもらうなど、早くからチームの戦力として投げるようになる。実際に春の県大会の準決勝・岐阜第一戦では先発を務めるなど、首脳陣の期待値の高さがうかがえる起用だが、野崎本人は壁を感じていた。

 「先輩捕手の石川さんに支えてもらいながら徐々に慣れることはできました。ただ、決勝戦では自分のボールが通じないですし、盗塁もどんどん許してしまって。試合を作れずに高校野球の壁を感じました」

 高校野球の洗礼を浴びる形で県大会を終えた野崎。だが、決勝戦から3週間経たないうちに開幕した東海大会の初戦・中部大一戦ではリリーフで7奪三振を奪うなど、チームのベスト4進出に貢献してみせた。この短期間で野崎は何が変わったのか。

 「配球を組み立てられるようになったことが大きいと思います。プロ野球の中継を見て、プロと自分の考える配球の違いを考えたり、先生から頂いた配球に関する冊子で勉強したことが繋がったと思います」

 特にポイントに置くのが初球のボールに対する反応。打者が見せた反応から、一通りの配球を描き、投げていく中で随時チェックして変更していくとのこと。それに伴って使う球種も増やす必要性を感じた野崎は、新たにチェンジアップを習得した。

 他にも様々な球種を操る野崎だが、ここで各球種のポイントを紹介していきたい。

県立岐阜商の小さきエース・野崎慎裕が144キロ左腕になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
左からチェンジアップ、ストレート、スライダーの握り

・ストレート
手が小さく指も長くないため、人差し指と中指はあえて広めにして握る。こうすることで、すっぽ抜けを防ぐが、親指を含めた3本指でボールをロックした状態で、指先だけ意識を高めてボールを切るようにして投げる。

・チェンジアップ
フォークを練習している中で習得したが、握りは中指の指先をわざと縫い目から、外して挟む。120キロくらいの球速で、打者から逃げるように曲げるために、脱力した状態で腕の内旋で抜けるようにして投げる。

・スライダー
中指と親指、そして人差し指の指先はしっかり縫い目にかけてあげる握りから、ボールを切るイメージでリリースして、右打者のアウトハイからインローへ曲げるようにしている。
その際に、そのまま抜いていくと115キロ前後の遅いスライダーとなり、パワーカーブのように手首のひねりも加えることで、125~130キロくらいの高速スライダーと投げ分けをしている。

 県立岐阜商では最速から40キロの球速差を付ける球種を持たせつつ、10キロ毎に投げられる球種を持ち合わせるようにしている。それが野崎の場合だと、
140キロ台:ストレート
130キロ台:高速スライダー
120キロ台:チェンジアップ
110キロ台:スライダー
100キロ台:カーブ
という棲み分けとなる。ここに配球を組み合わせていくことが、現在の野崎のピッチングを支えているのだ。

(記事=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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