太田虎次朗(明豊)プロの兄が立てなかった舞台へ
3年連続の選抜甲子園出場の明豊で、九州大会で獅子奮迅の投球を見せたのが左腕の太田 虎次朗だ。巨人・太田 龍投手の兄であることが大きな話題となったが、太田の投球無しでは明豊の躍進はあり得なかった。
秋季大会は主に先発としてチーム最多の6試合に登板し、32回1/3を投げて防御率1.95の48奪三振。九州大会では1回戦の九州国際大付戦、準々決勝の神村学園戦と2試合で先発しゲームメイクすると、準決勝の大崎戦では5回から救援で登板し、敗れはしたものの7回2/3を投げて2失点、11奪三振2失点と力投を見せた。
「冷静で淡々と投げるタイプ」と川崎監督が評するように、決して口数の多い訳ではないが、太田は虎視眈々と日本一を目指して冬のトレーニングに励んでいる。
バランス重視で球速アップに成功
鹿児島県出身の太田は、さつま町立宮之城中で3年間を過ごした。甲子園で戦う明豊の姿に憧れを抱きながら中学3年間で腕を磨き続けた。そんな太田の投球を見たコーチ陣の目に止まったことで明豊へ入学するに至ったが、当時は中学生の中でもそこまで目立つ存在はなかったと自己分析する。
「ユニフォームも格好良いなと思っていたので、声を掛けていただいた時は嬉しかったですね。入学した当時は周りのレベルの高さに驚きましたし、球速も130キロ出るか出ないかの投手でした。1年生の時の冬の練習で球速が上がりました」
球速が上がった要因に、太田はフォームのバランスを挙げる。冬のトレーニングでもちろん体も大きくなったが、それ以上にじっくりとフォーム作りに取り組んだことで、感覚良く投げることができるようになった。
球速アップと同時に制球力も向上し、2年夏の交流試合・県立岐阜商戦からベンチ入りを果たす。1回1安打1失点で甲子園デビューを飾り、最速140キロをマークした。
「具体的にここを修正しろとは言われなかったのですが、投げやすいフォームで投げようとコーチには言われていました。そこを意識するうちにバランス良く投げることができるようになり、ボールも低めにコントロールできるようになりました」
一番弱いと言われたことを認めてエネルギーに変えた
そんな太田について川崎監督は、「気持ちで投げる京本(二枚看板の一人)とは対照的に、冷静に淡々と投げるタイプで、三振を取れるボールがあるので奪三振率は高いと思います。ここぞという場面で、狙って三振が取れるピッチャーです」と持ち味を語る。
切れ味の鋭いスライダーに、カーブ、チェンジアップと投げ分け、秋季大分県大会決勝の大分商戦では、5安打13奪三振を記録し見事完封勝利。また九州大会でも、3試合16回1/3で21奪三振を記録し、見事持ち味を発揮した。
「自分でも三振を取れることが持ち味と思っていて、大分県大会は順調に進んでいったと思います自分のピッチングもしっかり一人一人のバッターと考えてあげることができて抑えることができたと思います」
だがその一方で、新たな課題も見つかった。
九州大会では2試合で先発として試合を作ったが、立ち上がりにやや不安を残し、また奪三振率は高い一方、ストレートで押していくピッチングはまだできないと感じている。夏に向けてライバル達もレベルアップする中で、太田もこの冬に更なるレベルアップの必要性を感じてトレーニングに励んでいる。
「この冬は下半身を強化して直球や制球力を鍛えていき、また走り込みで気持ちの面もしっかり鍛えいきたいと思います。球速の面ではウェイトトレーニングなどをしっかりやって、春には145キロ投げ、チームが勝てるような投手になりたいと思います」
今年の明豊は「今までで一番弱いチーム」と川崎監督に言われてきた世代で、太田も常に危機感を持ちながら戦い抜いてきた。その選抜甲子園の舞台に立つまではその危機感を忘れること無く、大会に向けて仕上げていきたいと意気込みを語った。
「今までで一番弱いと言われたことを認めて、それをエネルギーに変えてこれまで頑張ってきました。日本一を取るために、大会まで気を抜かずに一人一人が練習で意識を高く持っていこうと話しているので、気を抜くこと無く甲子園で日本一を取れるように頑張っていきたいです」
兄も踏むことが出来なかった甲子園の舞台。
普段は寡黙でも、「兄には負けたくないところもある」と対抗心はしっかりと持っている。どん投球を見せるのか見逃せない
(記事=栗崎 祐太朗)
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