Interview

太田虎次朗(明豊)プロの兄が立てなかった舞台へ

2021.03.04

 3年連続の選抜甲子園出場の明豊で、九州大会で獅子奮迅の投球を見せたのが左腕の太田 虎次朗だ。巨人・太田 龍投手の兄であることが大きな話題となったが、太田の投球無しでは明豊の躍進はあり得なかった。

 秋季大会は主に先発としてチーム最多の6試合に登板し、32回1/3を投げて防御率1.95の48奪三振。九州大会では1回戦の九州国際大付戦、準々決勝の神村学園戦と2試合で先発しゲームメイクすると、準決勝の大崎戦では5回から救援で登板し、敗れはしたものの7回2/3を投げて2失点、11奪三振2失点と力投を見せた。

 「冷静で淡々と投げるタイプ」と川崎監督が評するように、決して口数の多い訳ではないが、太田は虎視眈々と日本一を目指して冬のトレーニングに励んでいる。

バランス重視で球速アップに成功

太田虎次朗(明豊)プロの兄が立てなかった舞台へ | 高校野球ドットコム明豊・太田 虎次朗

 鹿児島県出身の太田は、さつま町立宮之城中で3年間を過ごした。甲子園で戦う明豊の姿に憧れを抱きながら中学3年間で腕を磨き続けた。そんな太田の投球を見たコーチ陣の目に止まったことで明豊へ入学するに至ったが、当時は中学生の中でもそこまで目立つ存在はなかったと自己分析する。

 「ユニフォームも格好良いなと思っていたので、声を掛けていただいた時は嬉しかったですね。入学した当時は周りのレベルの高さに驚きましたし、球速も130キロ出るか出ないかの投手でした。1年生の時の冬の練習で球速が上がりました」

 球速が上がった要因に、太田はフォームのバランスを挙げる。冬のトレーニングでもちろん体も大きくなったが、それ以上にじっくりとフォーム作りに取り組んだことで、感覚良く投げることができるようになった。

 球速アップと同時に制球力も向上し、2年夏の交流試合・県立岐阜商戦からベンチ入りを果たす。1回1安打1失点で甲子園デビューを飾り、最速140キロをマークした。

 「具体的にここを修正しろとは言われなかったのですが、投げやすいフォームで投げようとコーチには言われていました。そこを意識するうちにバランス良く投げることができるようになり、ボールも低めにコントロールできるようになりました」

[page_break:一番弱いと言われたことを認めてエネルギーに変えた]

一番弱いと言われたことを認めてエネルギーに変えた

太田虎次朗(明豊)プロの兄が立てなかった舞台へ | 高校野球ドットコム明豊・太田 虎次朗

 そんな太田について川崎監督は、「気持ちで投げる京本(二枚看板の一人)とは対照的に、冷静に淡々と投げるタイプで、三振を取れるボールがあるので奪三振率は高いと思います。ここぞという場面で、狙って三振が取れるピッチャーです」と持ち味を語る。

 切れ味の鋭いスライダーに、カーブ、チェンジアップと投げ分け、秋季大分県大会決勝の大分商戦では、5安打13奪三振を記録し見事完封勝利。また九州大会でも、3試合16回1/3で21奪三振を記録し、見事持ち味を発揮した。

 「自分でも三振を取れることが持ち味と思っていて、大分県大会は順調に進んでいったと思います自分のピッチングもしっかり一人一人のバッターと考えてあげることができて抑えることができたと思います」

 だがその一方で、新たな課題も見つかった。

 九州大会では2試合で先発として試合を作ったが、立ち上がりにやや不安を残し、また奪三振率は高い一方、ストレートで押していくピッチングはまだできないと感じている。夏に向けてライバル達もレベルアップする中で、太田もこの冬に更なるレベルアップの必要性を感じてトレーニングに励んでいる。

 「この冬は下半身を強化して直球や制球力を鍛えていき、また走り込みで気持ちの面もしっかり鍛えいきたいと思います。球速の面ではウェイトトレーニングなどをしっかりやって、春には145キロ投げ、チームが勝てるような投手になりたいと思います」

 今年の明豊は「今までで一番弱いチーム」と川崎監督に言われてきた世代で、太田も常に危機感を持ちながら戦い抜いてきた。その選抜甲子園の舞台に立つまではその危機感を忘れること無く、大会に向けて仕上げていきたいと意気込みを語った。

 「今までで一番弱いと言われたことを認めて、それをエネルギーに変えてこれまで頑張ってきました。日本一を取るために、大会まで気を抜かずに一人一人が練習で意識を高く持っていこうと話しているので、気を抜くこと無く甲子園で日本一を取れるように頑張っていきたいです」

 兄も踏むことが出来なかった甲子園の舞台。
普段は寡黙でも、「兄には負けたくないところもある」と対抗心はしっかりと持っている。どん投球を見せるのか見逃せない

(記事=栗崎 祐太朗

関連記事
逆境下「別府に活気を」明豊指揮官が宿した執念
「勝てる投手になりプロへ」明豊の背番号1・京本眞が持つ才能とは?
真の近畿BIG4は?西日本注目投手リスト19名

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.28

大阪桐蔭、大会NO.1右腕に封じ込まれ、準々決勝敗退!2失策が失点に響く

2024.03.28

中央学院が春夏通じて初4強入り、青森山田の木製バットコンビ猛打賞も届かず

2024.03.28

【センバツ準々決勝】4強決定!星稜が春初、健大高崎は12年ぶり、中央学院は春夏通じて初、報徳学園は2年連続

2024.03.28

健大高崎が「機動破壊」以来、12年ぶり4強、山梨学院は連覇の夢ならず

2024.03.28

星稜・戸田が2安打無四球完封で初4強、阿南光・吉岡はリリーフ好投も無念

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.25

異例の「社会人野球→大学野球」を選んだ富士大の強打者・高山遼太郎 教員志望も「野球をやっているうちはプロを狙う!」父は広島スカウト

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】