Interview

ウエイトは一切しない。球界を代表する右腕・山本由伸が貫くトレーニング論

2021.03.02

 現在のNPBを代表する1人としてオリックス・山本 由伸都城高出身)が挙がるだろう。都城高時代は140キロ台後半の速球と切れ味鋭い変化球を武器に、現在、巨人に在籍する太田 龍(れいめい)、ヤクルトに在籍する梅野 雄吾(九産大九産)、阪神に在籍する濱地 真澄(福岡大大濠)投手とともに九州四天王と騒がれる存在に。甲子園出場こそなかったが、注目度は抜群だった。

 オリックスから4位指名を受けた山本はプロ2年目からセットアッパーとして活躍。3年目に先発に転向すると、最優秀防御率のタイトルを獲得。プロ4年目となる昨年は最多奪三振のタイトルを受賞と順調に階段を登っている。そんな山本が考えるトレーニングの考え方について迫っていきたい。

ウエイトよりも身体を上手く使う為のトレーニングを重視して取り組む理由

ウエイトは一切しない。球界を代表する右腕・山本由伸が貫くトレーニング論 | 高校野球ドットコム山本 由伸(都城-オリックス)

 山本の活躍により、この1年で、山本を参考にしたいアマチュアプレイヤーが増えてきた。投球フォームしかり、トレーニング論しかり。その中で山本といえば、投手でも一般的となった「ウエイトトレーニング」を行わない投手だと知られているが、その真相を本人に聞くと、
 「僕は、ウエイトトレーニングは一切していないですね。よく行っているブリッジはあくまでも(自分が取り組んでいる中での)1つで、柔らかさの中に強さを求める、体をうまく使う為のトレーニングとして取り組んでいます。
 投球動作で腕を動かす動作をすると、体幹が抜けるときがあるので、どんな態勢でも力が入るようにトレーニングをしています」

 山本がよく実践するのがジャベリックスローだ。また取材日は打撃投手の登板前に1キロほどの重量のボールを持って軽くネットスローする姿も見られた。
 「ジャベリックスローを取り入れている目的は、自分の体を大きく使って、ボールを投げる方向に明確に力を入れることです。
 また打撃投手の登板前に行っていたネットスローは重いボールを使うことで、ボールを乗せるタイミングの確認だったり、肩の開きがわかりやすいので、動作の確認の為に行っています」

 山本はこうしたトレーニングで自分の体の動きなどをチェックし、登板へ向けて準備を行う。

 山本はブリッジなどの自分の体の動きを確認するトレーニングを、かなり時間をかけて行う。たとえば、シーズンオフに1日練習ができる日の場合、ブリッジなどのトレーニングを朝9時から始めて12時まで行うと言う。そこからキャッチボールなど投球動作の確認練習や、技術練習に入っていく。さすがにシーズン中ではコンパクトにしていくのだが、練習の仕組み自体には大きな変化がない。つまりこの練習こそが今の山本の根幹を作り上げているのだ。

[page_break:これが大事だと思ったトレーニングをやり抜くことが大切!]

これが大事だと思ったトレーニングをやり抜くことが大切!

ウエイトは一切しない。球界を代表する右腕・山本由伸が貫くトレーニング論 | 高校野球ドットコム山本 由伸(都城-オリックス)

 では山本のように、ブリッジなどの練習は行えば、必ずレベルアップができるかと言えばそうでもない。
 「ブリッジは確かにマイナスにはならないですが…」と話した後、トレーニングの取り組みについて本質をつく回答をいただいた。
 「現在、練習法はたくさんあると思います。みんなもどれがいいんだろうと疑問に思うことがあると思います。
 世の中にはたくさんのトレーニング方法がありますし、今、流行っているトレーニングというのは目的を理解して取り組めば、どれもある程度効果があるトレーニングだと思います。僕、個人としては、まずはどれでもいいのでやりきることが大切だと思います。1つのトレーニングが合わないからからといって、次、次と進んでしまうと、自分が出来ていないことに気づかずに終わってしまうこともあるので、これだと思ったことをやりこんでいくことも大事です」

 山本が取り組んでいるトレーニングは斬新的なものが多く、取り入れるチームや選手も増えてきた。しかし山本が行っているから取り組むのではなく、自分にとってタメになるのか、成長できるトレーニングなのかを理解して取り組めるかが重要。山本にとっては、現在のトレーニングが大きなパフォーマンスアップにつながっているから、今も貫いているのであって、それがウエイトトレーニングでパフォーマンスアップにつながっているのであれば、正解だと言える。大事なのは、自分に必要だと思ったトレーニングを継続することだ。

 開幕投手に指名され、現在は開幕に向けて調整中の山本。取材日の13日には6人の打者相手に5球ずつ投げ、7度の空振りを奪うなど順調な仕上がりを見せ、その後の実戦登板でも150キロ超の剛速球を投げ込み、山本自身、手応えを感じていた。

 「自分の中で軽く投げている感覚でも、強いストレートを投げられることがテーマなので、力みなく投げられていることは良いことだと思っています」

 最後にこの1年の意気込みを語ってもらった。
 「とにかくチームが優勝することが一番なので、チームの戦力になれるように、勝ち星を積み重ねて、ファンの方を喜ばせたいと思っています」

 プロ野球選手としては順調すぎるくらい階段を登っている山本。なぜそれができているか。自分が大事だと思ったものを貫く信念があったからこそ、他の選手よりも突き抜けたパフォーマンスを発揮しているのかもしれない。

 短い取材時間ではあったが、どんな問いに対しても本質をついた回答を行う山本。今季のパフォーマンスがますます楽しみとなった。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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