フォーム、変化球の感覚を自ら解説!小園健太(市立和歌山)の投球術に対する考えとは?【後編】
2021年の高校野球界を牽引すること間違いなしの逸材・小園 健太(市立和歌山)最速152キロの真っすぐをはじめ、小さく動く変化球などポテンシャルだけではなく、投球術も長けている小園。
中学時代は貝塚ヤングで全国制覇を経験し、市立和歌山へ進学後も順調に成長する剛腕は、いかにしてボールを操っているのか。そのテクニカルについて今回は触れていきたい。
現在のフォームとなった経緯
ノーワインドアップから始動する小園 健太の投球フォーム
セットポジションから動く投手が多い中、ノーワインドアップから始動されているのは、どういった狙いがあるのでしょうか。
小園健太投手(以下、小園):一時はセットポジションで始動することもありました。ですが、それではストライクが取れたとしてもボールに力を伝えることが出来ていませんでした。自分の求めるようなボールを投げるには、ノーワインドアップからの方がきちんと力強いボールを投げられたので、その形になっています。
なるほど。だから軸足に重心がしっかり乗っている印象があるんだと思いますが、足を上げられる際は注意されていることはありますか。
小園:バランスは大事にしていますが、ステップする足にどのように力を伝えられるかが一番大事です。実際に、ステップする足でバランスを取るようにしているので、ショート方向に蹴りだすようにして安定させています。
力を伝えるのであれば、重心移動もカギになると思いますが、その辺りはどうでしょうか。
小園:重心移動は練習をしてきて掴んだものなので、大事な部分ですし、同時に課題でもあります。イメージでは前に移動していても上半身は残してあげて、なるべく胸を横に向けた状態を意識しています。なので、結果として胸が張れる形になっていますが、市立和歌山で体幹と同時にバランス系のトレーニングもやってきたことで、バランスが自然と身についていきました。
小園健太(市立和歌山)の体重移動
また、フォーム全体を通して脱力できているのが印象的なのですが、意識的に取り組まれていることでしょうか。
小園:あまり意識したことはないです。ただ、力みというのはピッチングにおいては要らないことだと思っていますので、力むことがないようには注意しています。
深いこだわりを感じることが出来たのですが、キャッチボールからフォームをチェックするようにしているのでしょうか。
小園:投げる時はあまり意識してしまうとよくないと思っています。ですので、意識するのはシャドーをするときだけにして、キャッチボールではボールの回転軸がどれだけ真っすぐになっているのか。そこを意識するようにしています。
なるほど。ではマウンドで投げている際は、打者の表情などは見るようにされていますか。
小園:どんな空振りをしたのか。またバッターの待ち方やボールを投げた時の表情などを見て、どんなボールを相手が待っているのか。それを見て、投げるボールをどうするのか考えることはあります。
小園健太の変化球を徹底解剖!
左:ストレート 右:カットボール
ここまでは小園の投球フォームについて迫っていった。細かな部分まできちんと考えられており、小園の試行錯誤、創意工夫がされてきたことが伝わってきた。では球種に関してはどうなのか。現在はストレートをはじめ、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシームといったボールを使い分ける。それも強力な武器であるが、そのなかでも今回はストレート、カットボールについて解説してもらった。
【ストレート】
人差し指と中指をくっつけるように握ります。スピンの利いたボールを投げたいと思ったときに、離れていると投げにくいと感じてから今の握りになっていますが、ポイントは指先に力を伝えられるか。そしてしっかりとボールを押し込むイメージでリリースできるかが大事にしています。
【カットボール】
人差し指、そして親指は縫い目にかけてあげるように握ります。イメージとしては打者にはどれだけストレートと感じてもらえるかを大事にしているので、真っすぐに近い感覚でリリースしています。ただ、最後は人差し指でボールを押すように投げてあげるとボール半個、もしくは1個ズレるようにしています。
左:スプリット系ツーシーム 右:シュート系ツーシーム
スプリット系ツーシーム
限りなくスプリットに近いイメージで、リリースの瞬間に人差し指を押しながらボールを離す。なるべくストレートに近い軌道から最後に沈ませることを想像して投げ込みます。
シュート系ツーシーム
他の球種とは違って、中指を縫い目にかけて腕の内旋も利用しながら最後に押し込む感覚でリリースします。ボールの軌道はシュートに近い感覚でイメージをしてあげてボールを曲げようとしています。
1年生の夏、南部戦の敗戦から磨いてきた小園のウイニングボール。この冬にマスターしたいと考えている球児たちの参考になれば幸いだ。
また投球フォームも、自身の感覚をきちんと言葉で表現できることも、ドラフト候補たる理由を感じさせてくれた。この1年、小園はどのような活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみである。
年内最後の試合では9回投げて6安打13奪三振2失点の内容で終えた。いよいよ自身の将来もかかった大事な1年となるが、一番の課題は股関節だと小園は感じている。
「股関節に柔軟性が出てくれば、体重移動の時間がもっと作れるのでフォームにゆとりが生まれてくると思います。そうすれば下半身の力をもっと使えると思うので、そこは課題だと思います」
指揮官の半田監督も同じ課題を指摘しながらも、焦らせるようなことはしない。
「股関節が硬くて使いきれていないところがありますので、この冬でどこまでいけるのか。まだまだ伸びしろがあると思っていますし、155キロくらいはいくんじゃないのかなと思いますが、変に周りの期待に応えようとしないで、勝てる投手を目指してほしいと思います」
理想の投手像について聞くと、「マウンドに上がるだけで雰囲気を変えられる。相手を圧倒できる投手になりたいです」とコメントを残した小園。“世代No.1投手“の評判通りの投球を1年間見せてくれるのか。小園の1年間から目が離せない。
(記事=田中 裕毅)