東京五輪が控える夏、そして変革を検討する秋を語る　武井克時　東京都高校野球連盟理事長【後編】

　いよいよ東京五輪イヤーである2020年だ。東京の高校球界も多大な影響を受けることになる。しかも2020年からは球数制限も導入され、高校野球にも変化の波が押し寄せてくる。まさに激動の1年に向けての思いを、東京都高校野球連盟の武井克時理事長に語ってもらった。

前編はこちらから！
神宮第二との別れ、そして球数制限という検証への想い　武井克時 東京都高校野球連盟理事長【前編】

（聴き手：大島 裕史）

武井克時理事長

　東京五輪では神宮外苑にある国立競技場が、開閉会式が行われるメイン会場となるため、神宮球場は使えなくなる。準決勝、決勝は史上初の東京ドーム開催になる。それ以外にも、この夏は、例年とはかなり違う夏になる。

――東京五輪の影響で、スポーツ界だけでなく、コンサートやイベントなどでも会場探しに苦労しています。そうした中で、東京ドームを3日間押さえるのは、大変だったのではないですか？

武井 　本当は5日間を要望したのですよ。そうしたら、5日間貸し出すと、前のイベントの片づけをして、次の準備をすることになるので、1週間貸すことになるのです。3日間ならばという提案があったので、即答で3日間お願いしますと、返事をしました。一番いい日程をうちの方で要望したら、その通りやってくださった。それは配慮してくれましたね。

――8月1日（土）、2日（日）が準決勝、3日（月）が東西東京大会の決勝戦となっている。

武井　高校野球ファンに理解していただきたいのは、東京ドームは非常に整備されて、熱中症の心配がない。施設の面で素晴らしい球場なので、入場料を少し高くしなければなりません。なぜかというと、使用料が高いからです。これまで使ってきた球場に比べると、桁違いの使用料です。
　おそらく、東京ドームで高校野球をやるのは最初で最後だと思います。全てが未知のところがありますから、大変な準備もしなければならないです。

――それでも、東京ドームで試合をするのは、画期的なことですね。

武井　現実的に東京で2万人を超える球場は他にありませんから。統計的に決勝戦は、2万人前後は必ず来るので、それに対応することは、高校野球ファンのためでもあるし、選手のためでもあると思います。

――神宮球場が使えるのは、開会式とその翌日だけですね

武井　そうですね、これらの日は、夜はプロ野球も入っています。
　それに[stadium]大田スタジアム[/stadium]が7月14日からオリンピックの選手村の開村と一緒に、オリンピックの野球・ソフトボールの公式練習場になります。そのため[stadium]大田スタジアム[/stadium]も13日までしか使えないという厳しい現状が東東京大会にはあります。

――それに大田スタジアムは近くにホッケー会場もありますよね。

武井　それもあります。そうすると人の導線をどうとるのかとか、アップをするスペースをどうするかとか、応援団の待機の場所をどうするかとか、いろんな問題があります。

　その他にも、不確定なことがありますから。まだ見えないところがあります。

――それに選手たちの移動も大変ですよね。

武井　交通規制があって、バスが通れないとか。荷物もありますからね。東の大会を西でやらなければなりませんが、それは致し方ない。

――対策を考えるべきことが多いですね。

武井　これからオリンピックの組織委員会の方々と詰めていかなければならないところが、いくつもありますね。

――影響は大きいですね。

武井　東の大会を西の会場で行えば、間違いなくお客さんは減りますから、運営費にも響いてくるんですよ。夏の大会の余剰金で秋、春のマイナスを埋めている現状があります。[stadium]神宮第二[/stadium]球場もないわけですし、2020年は、減収は間違いないので、来年以降にも響いてきますね。

武井克時理事長

――高校野球連盟として、野球の普及にも力を入れていくことになりますね。

武井 　野球振興部というのを作ったので、そこで野球の普及、選手の障害予防、それから審判の養成などをやっていきます。
　4年前からブロック予選の会場校の生徒を中心に審判講習というのを2月に開いていますが、それを加盟校全部に広げようかなと考えています。
　できれば3年生と言っているのですが、2年生や1年生でも審判をやりたいという子がいるのですよ。
　それから、野球の普及については、10年前から日本高校野球連盟から海外、特に東南アジアに東京は力を入れてもらえないかという要請があって、5年前にミャンマーやシンガポール、マレーシアに行って、現地で親善試合と講習会を兼ねながら練習をやって、野球用具を提供するなど支援をしてきました。
　12月には東京から監督を10人くらいインドネシアに派遣して、現地の指導者のための野球教室を開くつもりです。東京の指導者にも勉強になると思います。野球の楽しさが伝わらないといけないので、原点に帰れると思います。

――大変な年になりそうですね。

武井　2020年は特殊な年で、我々も未知の扉を開くみたいなところがあります。それでも、高校野球を世界から来た人に見てもらえる。オリンピックを観に来た人たちに、東京ドームで試合ができることもあるので、ぜひ日本の高校野球を観てもらいたいと思います。
　地方大会の決勝戦は、甲子園の準決勝、決勝と変わらない試合がありますからね。
　2020年は球数制限が試合にどう影響するのか。そこが少し心配です。チームのエースが投げられないという状況が実際に出てきたら、高校野球が変わりますからね。この夏は期間が長くとれるので、その分、雨の影響を受けなければ、試合の間隔をかなり開けることができると思います。ただ心配なのが、準決勝、決勝が東西どちらかが連戦になってしまう。これは避けられないです。

　今年はいつもとかなり違う年になりそうだ。ところで、東京の高校野球ファンの間で以前から指摘されていたのは、秋季大会の組み合わせの問題だ。秋季大会はシード制がないため、強豪同士が序盤で対戦することが珍しくないが、特に2019年の秋は、日大三、八王子、東海大菅生、日大鶴ヶ丘、関東一、帝京などが同じブロックに入る、超激戦区になった。インタビューを締めくくる時に、武井理事長から、驚きの発言があった。

武井 　秋の大会をみると、いい投手が結構いるので、夏は東西ともに予想がつかず、いい大会になると思いますよ。
それから次の秋の大会から、シード制を導入するつもりです。夏の大会で、ベスト8またはベスト４に残ったチームを、試合数は他のチームと変わりませんが、やぐらの中での配分を均等に分かれるような制度を作ります。
　先の秋季大会のように、たくさん強豪校が潰し合うというのは避けられるかなと思います。

（取材＝大島 裕史）

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