Interview

県内屈指のアンダースローのきっかけとなった帝京戦 中川颯(桐光学園ー立教大) vol.2

2020.12.15

 1998年世代は投手大豊作の1年。プロでは山本 由伸都城出身)、大学では早大の早川 隆久木更津総合出身)と実に多い。その中で異色の存在といえるのが立教大の中川 颯桐光学園出身)だ。高校時代から有名なアンダースローとして、二度の関東大会出場、最後の夏はベスト4。

 立教大進学後は1年春に大学選手権優勝を経験。61試合に登板し、10勝8敗、通算141奪三振と好成績を残し、今年のドラフト会議ではオリックス・バファローズに4位指名を受けてプロ野球選手になる夢を叶えた。ちなみに現在、プロ野球界でアンダースローで実績を挙げたのはこの3人。

高橋 礼投手(福岡ソフトバンク)専大松戸出身
與座 海人(埼玉西武)沖縄尚学出身
牧田 和久(東北楽天)静清工出身

 中川はアンダースローで勝負出来る投手として評価され、夢を叶えることができた。では中川はいかにしてこの位置にたどり着いたのか。本編は、そのサクセスストーリーを振り返る第2回である。

県内屈指のアンダースローのきっかけとなった帝京戦 中川颯(桐光学園ー立教大) vol.2 | 高校野球ドットコムvol.1、3はこちらから!
負けん気の強いアンダースローの中川颯(桐光学園ー立教大)の投手人生の始まり vol.1
苦しみ抜いた中川颯(桐光学園ー立教大)が生み出したアンダースロー論 vol.3

帝京戦の好投から掴んだベンチ入り投手の座

県内屈指のアンダースローのきっかけとなった帝京戦 中川颯(桐光学園ー立教大) vol.2 | 高校野球ドットコム
高校時代の中川 颯(桐光学園出身)

 大会が終わり、5月の練習試合。中川は帝京との練習試合でチャンスが与えられる。

 この年の帝京清水 昇(東京ヤクルト)が投の柱として活躍し、強打も魅力で、夏の東東京大会で準優勝する強力なチームだったが、その帝京相手にリリーフとして3回無失点の好投。さらに本塁打も打ったのだ。この試合を機に練習試合でチャンスを与えられた。

 「甲子園でプレーしている姿をテレビで見ている有名チームを抑えることができたのは自信になりました。ホームランは打てると思っていなくて、うまく当たったら入ってしまった感じでした。」 

 それから練習試合でも結果を残し、中川は1年夏から背番号「13」として、ベンチ入りを果たす。5試合中、4試合に登板。強打者揃う慶應義塾戦では9回1失点の好投を見せた。

 「初めての夏はすごく楽しくて緊張感がある大会でした。大会序盤は楽しめたんですけど、慶應義塾戦、横浜隼人戦は暑かった記憶が強かったですね。頭がぼぉーとしてしまい、体力をつけて、また頑張っていきたいと思いましたね」

[page_break:2年冬の頑張りにより投打で急成長]

2年冬の頑張りにより投打で急成長

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高校時代の中川 颯(桐光学園出身)

 1年秋からエース格となり、県大会準優勝で、関東大会に出場。その後もエースとして安定した成績を残す。

1年夏 県ベスト8
1年秋 関東大会初戦敗退
2年春 ベスト4
2年夏 ベスト4
2年秋 関東大会初戦敗退

 二度目の関東大会では早川 隆久擁する木更津総合に1点差の敗退。とにかく悔しい気持ちしか残らなかった。

 「1年生の秋は浦和学院、2年秋は木更津総合と、関東大会で優勝したチームに1点差で負けたんです。あと一歩及ばずに負けてしまい、本当に悔しかったですね」

 2年冬は懸命にトレーニングに取り組んだ。
 「あと一歩で届かないみたいなことがずっと続いていたので、この冬は腹くくってやるしかないなと野呂監督さんにも『腹くくれ』といわれて、追い込めて、その時の冬は今につながっていると思います。

 特別なことをせず、毎朝早くて、ポール間走、ランニングをしていて、周りの人よりも人一倍するということを心がけていました」

 技術的にこうしたというのは特に無い。ひたすら体作り、トレーニングに明け暮れた結果、投打ともにパワーアップ。本塁打は10本以上放ち、通算26本塁打を打つまでの強打者に成長。投げても130キロ台ながら以前よりも力で押せるようになった。

 最後の夏は横浜に破れ、準決勝敗退に終わったが、石川 達也(法政大-横浜DeNA)からレフト方向へ本塁打を放ち、今までとは違う中川の姿を魅せることができた。

[page_break:1年春で大学日本一も壁にぶつかる]

1年春で大学日本一も壁にぶつかる

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立教大に進学した中川 颯

 高校卒業後は東京六大学の立教大へ進学。進学校の桐光学園に進み、最高の形で東京六大学でプレーすることが叶った。

 中川は大学で活躍することに備え、夏の高校野球を終えてからはほとんど投げることなく、トレーニングに明け暮れた。実際に大学の野球部に合流すると、ボールの勢いが違う事に気づいた。

 「あえて肩を休ませていたのですが、非常にボールの勢いも変わってきて、ストレートだけで押した投球もできるようになっていました」

 1年春からベンチ入りした中川は10試合に登板し、防御率2.57と好成績を残し、リーグ優勝を経験。さらに大学野球選手権では投打の主力が全国大会の舞台で躍動し、1年春にして初優勝を果たす。中川にとっては出来すぎの結果だったと振り返る。だからこそ、1年秋以降は、壁にぶち当たる。

 1年秋以降はマウンドに立つと打たれる日々が続いた。これまで抑えることができていた。

1年秋 9試合1勝1敗 防御率4.35
2年春 7試合0勝1敗 防御率6.17
2年秋 7試合3勝0敗 防御率3・04

 「4年生までは苦しいシーズンでした」

 3年生も防御率としては良いものの、まだ本人の中で苦しかった振り返る。

3年春 8試合1勝2敗 防御率3.38
3年秋 8試合1勝1敗 防御率2.45

 防御率が悪化した要因は力で抑えにいく傾向が強かったと振り返る。

 「1年春で、全国も優勝して、力で抑える感覚を覚えてしまったので、勘違いしたところはあります。でも自分の球速は上投げの投手と比べたら遅いので、何も工夫しなければ打たれてしまう。

 1年生のときはほぼ何も考えずに配球も捕手に任せていてがむしゃらに振って抑えることができましたが、調子が悪くなって、相手から研究されてから打たれるようになり、ずっと投球を考えてきましたが、明確に打者を抑える投球術、武器を見出すことができず、最終学年にきました」

 ではいかに修正をしたのか?ついにラストシーズンにしてその答えが見つかる。

(記事=河嶋宗一

vol.2はここまで。最終回となるvol.3は、12月17日に配信の予定です。次回もお楽しみに!

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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