Interview

都立の星から慶應期待の星へ。関根智輝(都立城東出身)が振り返る鮮烈デビューを果たした下級生時代

2020.11.21

 今年、プロから指名を受けた木澤尚文(東京ヤクルト1位 慶應義塾高出身)、佐藤宏樹(福岡ソフトバンク育成 大館鳳鳴出身)を受けた投手たちとともに投手陣の柱として注目された関根智輝都立城東出身)。

 高校時代は夏の大会で帝京相手に完投勝利を挙げ、ベスト4入りと都内屈指の好投手として活躍した。あれから4年、関根はいかにして慶應大でもドラフト候補へ上り詰めたのか。まずは高校最後の夏から開幕投手となり勝利を飾った鮮烈デビューを飾った下級生時代を振り返る。

最後の夏でプロ入りを諦めていた

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高校時代の関根 智輝(都立城東)

 関根がドラフト候補として評価が急上昇したのは高校3年春だ。都大会でもベスト8入りを果たし、最速145キロにも到達し、大会直前の練習試合でも二桁奪三振を奪うなど、圧巻の投球を見せていく。実際に練習試合の投球を見たことはあるが、常時140キロ台。スライダー、カーブの落差も素晴らしく、面白いように空振りを奪っていた。

 「今、振り返れば、大会前の練習試合が一番良かったと思います」と笑う関根。打線も好調で、関根だけではないチームとして熱心な城東ファンからは2001年以来の甲子園出場も大きな期待がかかった。

 しかし大会前、関根は胃腸炎にかかってしまい、大会序盤は寝込む日々。復帰登板をしたが、本来のストレートを投げることはできなかった。この大会の活躍次第で高卒プロも考えていたが、「この投球ではプロは無理だなと。ベスト4まで行かせていただきましたが、打線に助けてもらった試合も多く、大学から目指そうと思いました」

 そこで関根は池上 茂前監督のススメから東京六大学を目指すことを決める。

 「前監督の池上さんは東京大出身なので、あの大応援団がいる神宮球場で野球をやるのは、とてもいいことだと聞いていて、その中で慶應を勧められました。『今、慶応は投手が少ないからすぐ投げられる可能性があるよ』と聞いて、それで受けてみよう」

 そして難関のAO試験を合格し、慶應大入学が決まった。合格が決まった心境をこう振り返る。

 「ちょうど合格発表日が学校の定期テスト期間中でした。親から合格発表の連絡をいただいて、とてもほっとした記憶があります。AO試験から合格発表まで1週間ぐらいの期間がありましたが、とにかく長かったですね」

 慶応は関根に対する期待は高かった。長年、エースとして活躍した加藤拓也(現・矢崎拓也 慶應義塾高出身)がプロ入りし、柱となる投手が不在。関根は佐藤とともにチャンスを与えられ、石垣島のキャンプにも参加。そこで、当時の林卓史助監督に教えを受けることになる。

[page_break:林助監督から専門的な指導を受け、成長。しかし2年生のときにトミージョン手術に]

林助監督から専門的な指導を受け、成長。しかし2年生のときにトミージョン手術に

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慶應大 関根 智輝 *2017年明治神宮大会環太平洋大戦より

 「林さんから投球、配球、フィールディング、牽制と投手の全般的なことはみっちり教えてもらいました。自分は都立城東を卒業するまで、いわゆる専門的に教えてもらったことがなく、自分でどうすればいいか考えながらやっていました。投手としてはここまで専門的に教えてもらうことがなかったので、すべてが新鮮でしたね」

 関根が取り組んだのは苦手だったフィールディング。キャンプ期間でしっかりと取り組み、成長を見せた関根はキャンプ明け後のオープン戦にも合流し、連日の好投。開幕戦のメンバーに入っただけではなく、開幕投手にも抜擢される。

 「先輩によると、練習の流れなどから誰が開幕投手なのかが分かるようなんです。自分には全く分からなかったのですが、開幕が近づいて先輩から『(開幕投手は)お前だよ』といわれて、まじかと思って、何も信じられなかったのですが、開幕前日に発表され、驚きました」

 慶應大では90年ぶりの開幕投手を任された関根は5回を投げ、無四球、6奪三振、1失点の快投を見せ、初勝利に輝く。

 1年春は6試合に登板し2勝1敗、20.1回を投げ、防御率4.87に終わったが、1年秋は夏場似ストレートとスライダーを磨き直し、さらに大学時代に習得したツーシームをマスター。投球面で進化を果たした関根は6試合に登板し、防御率1.83の好投を見せ、リーグ優勝に貢献する。

 この時はただ無心で投げ、1学年上の郡司裕也(中日 ※仙台育英出身)のリードについていくだけだった。

 「もう郡司さんのリードについては一切首を振らず、全面的に信頼して投げていました。それで結果も出たと思います」

 さらなる活躍に期待がかかった2年生だったが、キャンプで足を捻挫してしまう。この時、無理に開幕に合わせようとしっかりと完治させずに復帰してしまったのだ。

 「完治させる過程をしっかりと踏まず、投げたのが駄目でした。投げられるんですけど、思うようにストレートが走らない時期が続いて、打たれて、リーグ戦でも出番が与えられませんでした」

 結果、3試合に登板し、防御率11.25に終わり、早慶戦で肘を故障してしまった。手術をするほどの重傷だった。その手術とは「トミージョン手術」のことである。もちろん保存治療をしながら、プレーする選択肢もある。それでも関根は将来を見据えてトミージョン手術することを選択した。

 「大久保監督さんと話をして、自分はこの先も野球を続けたいという思いがあったため、しっかりと手術をして治そうと思いました。2年生のときに手術すれば、完全復帰するまでの1年半とすると4年春には復帰できる。4年春は今後の進路を決める上でも大事なシーズンですから、手術しました」

 こうして手術を決めた関根。それからは地道なリハビリに励んでいく。

(記事=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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