Interview

ポイントは回転にアリ!高校通算36本塁打・山下航汰(京都外大西)が細身でも長打を連発できるわけ

2020.10.24

 今月26日に迫ったドラフト会議で指名が期待されている京都外大西18152(3年)。1年春からレギュラーの座を掴み、高校通算36本塁打を放った京都屈指のスラッガーだ。守っては本職の捕手以外に三塁手や外野手もこなせる万能プレーヤーでもある。

 ドラフト会議まで1週間を切り、「不安とちょっとしたワクワク感があります。6:4で不安が勝っています」と率直な心境を語ってくれた山下。調査書が届いている球団もあるが、それだけで確実に指名されるわけではない。

 「不安もありますけど、後は待つだけなので、しっかり準備したいと思います」と今は後輩と一緒にグラウンドで汗を流しながら、運命の日を待っている。

 後編では最後の夏の大会を中心に振り返ってもらった。

胸を張って締めくくれた高校野球生活

ポイントは回転にアリ!高校通算36本塁打・山下航汰(京都外大西)が細身でも長打を連発できるわけ | 高校野球ドットコム
ノックを受ける山下航汰

 木製バットで練習試合にも何試合か出場したが、思うような結果は出せなかった。夏の独自大会も木製バットで挑みたいという気持ちはあったが、チームメイトから「金属バットで出てほしい」と懇願されたこともあり、金属バットで出場することになった。

 京都府の独自大会は8つのブロックに分かれ、7イニング制でトーナメント戦を争う形で開催されることになった。甲子園には繋がらず、最大でも3試合しか戦うことができない。そうした中で「正直、モチベーションを上げるのは難しい選手もいた」と話すが、上羽功晃監督ら指導陣の後押しもあり、ベストな状態で夏を迎えることができた。

 しかし、初戦の大谷戦では前半から苦戦を強いられ、6回を終えて1対7と大差をつけられた。それでも5点差をひっくり返した秋の京都国際戦のように7回表に打線が繋がると、2点差に追い上げた二死二、三塁で山下に打席が回る。この日は打撃の調子が悪く、「正直、回ってほしくなかったです」と思っていたそうだが、ライト前にポトリと落とす同点の適時打を放ち、チームの危機を救った。試合は延長8回タイブレークの末に勝利。準決勝の洛西戦も2対0で勝利し、ブロック決勝にコマを進めた。

 京都共栄との決勝もタイブレークとなった。8回表の京都外大西の攻撃は先頭打者が犠打で送り、一死二、三塁で山下に打席が回ったが、高校最後の打席になるであろうこの場面で京都共栄ベンチは申告敬遠を選択。「3年生の記念大会だから勝負してくれると思った」という上羽監督の目論見は外れてしまった。結局、この回に得点を奪うことができず、8回裏に得点を許してサヨナラ負け。それでも、「あまり悔しくはなかったですね。2年半やって来て、西高の野球は上でも通用すると思ったので、西高に来て良かったと思います」と胸を張って高校野球生活を終えた。

[page_break:ホームランを打てて、打率も残せるバッターになりたい

ホームランを打てて、打率も残せるバッターになりたい

ポイントは回転にアリ!高校通算36本塁打・山下航汰(京都外大西)が細身でも長打を連発できるわけ | 高校野球ドットコム
山下航汰

 合同練習会は山下にとって実りのあるものとなった。自信のある打撃をより磨くために現在はフリー打撃やティー打撃でスイングを強くすることを意識して練習しているという。

 独自大会を終えた後にプロ志望届を提出。プロ志望届高校生合同練習会にも迷わず参加を決めた。

 山下にとって甲子園でプレーをするのはこれが初めてのことだった。「観客はいなくてそんなに緊張はしなかったんですけど、もしここに観客がいたらと考えたら、甲子園は良いなと思いました」と聖地を噛みしめた。

 2日目のシート打撃では第1打席でセンター前に安打を放ち、持ち前の好打をアピール。残りの2打席は雨天練習場での実施となったが、痛烈な当たりのショートゴロに死球とまずまずの内容だった。プロを目指す同級生たちとともにプレーしたことで、自分の実力により自信を持つことができたと振り返る。

 「バッティングでは他の人よりも勝っていると思いました。甲子園でやれたことは自分にとって良い経験になったと思いますし、スカウトの人にも良いアピールができたと思います」

 高校通算30本塁打以上を放っている打者の多くは恵まれた体格をしているが、山下は身長182㎝、体重74㎏と細身の体型だ。それでも本塁打を量産するコツは体の使い方にあるという。

 「下半身を使わないと飛ばないので、特に腰の回転を意識しています。先に腰を回して、バットと腕はついてくるというイメージです」

 腰の回転を主体として無駄の少ない動作を行うことで、全身の力を上手く伝えていることができている。これで体ができてくれば、プロでもかなりの打撃成績を収めることができるだろう。

 また、山下の強みは複数ポジションを守れる点だ。高校3年間では捕手、三塁手、左翼手で公式戦に出場したが、どこでも無難にこなせる器用さを持っている。ある球団は野手として山下を評価しており、取材当日も三塁手でノックを受けていた。将来的には打撃を活かして、コンバートされることも十分にありそうだ。

 「ホームランを打てて、打率も残せるバッターになりたいです」と自らの将来像を思い描く山下。26日のドラフト会議で指名はあるだろうか。

(取材=馬場 遼

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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