高校通算36本塁打の万能プレーヤー・山下航汰(京都外大西)がプロ入りへ取り組んだ試行錯誤の日々【前編】
今月26日に迫ったドラフト会議で指名が期待されている京都外大西の18152(3年)。1年春からレギュラーの座を掴み、高校通算36本塁打を放った京都屈指のスラッガーだ。守っては本職の捕手以外に三塁手や外野手もこなせる万能プレーヤーでもある。
ドラフト会議まで1週間を切り、「不安とちょっとしたワクワク感があります。6:4で不安が勝っています」と率直な心境を語ってくれた山下。調査書が届いている球団もあるが、それだけで確実に指名されるわけではない。
「不安もありますけど、後は待つだけなので、しっかり準備したいと思います」と今は後輩と一緒にグラウンドで汗を流しながら、運命の日を待っている。
早くから芽生えていたプロ入りへの想い
キャッチボールをする山下航汰
OBに従兄弟の谷本大晟(駒大)がいた縁もあり、福井県から入学。1年夏には初戦の田辺戦で2打席連続本塁打を放つなど、早くから活躍を見せていた。2年夏の大会を終えた後にプロ入りを目指したいという気持ちが芽生えたという。
新チームでは主将となり、名実ともにチームを引っ張る立場となった。山下以外に旧チームからレギュラーで出ている選手はおらず、背負うものは大きくなった。
さらにこれまでの外野手から中学時代に慣れ親しんだ捕手に再コンバート。「色々考えることが多くて、大変なんですけど、とてもいい経験になったと思います。久しぶりなので、ちょっとワクワクした感じもありました」とブランクを感じることもなく、前向きな気持ちで取り組んでいた。
秋の大会では準々決勝で夏に敗れた京都国際にリベンジを果たして2年連続の準決勝進出。惜しくも近畿大会出場とはならなかったが、前年を一つ上回る3位になり、「去年のチームより良い結果を残したのは良かったと思います」と多少の満足感は得られたようだ。
しかし、冬場にはチームを引っ張る姿勢が見られないという理由で主将を降ろされた。代わりに抜擢されたのが、後輩の花井慧汰(2年)ということもあり、「やっぱり悔しい気持ちはありました。もっと自分がやらないといけないという気持ちが出てきました」と屈辱を味わいながらも意識を高めるきっかけになったようだ。
一選手としては長所である打撃をさらに磨きをかけてきた。「スイングの力がまだ弱かったので」とティー打撃でスイングスピードを強化し、筋力トレーニングにも注力。「強い打球が打てるようになって、肩が強くなった」と確かな成長を感じていた。
[page_break:プロ入りを意識して木製バットを使う]プロ入りを意識して木製バットを使う
バッティング練習をする山下航汰
冬に練習した成果を春の大会で試す予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、試合どころか全体練習すらできない状況になる。京都外大西も全国の学校と同じように6月まで活動自粛を余儀なくされた。
休校期間中は福井に帰省。谷本とその妹で、履正社の女子野球部に所属する晴望(2年)の3人で自主練習を続けてきた。名門の駒大でレギュラーを張る谷本の実力を目の当たりにしたことで、「スイングの力や守備が高校生とは違うので、学ぶところがたくさんありました」と自粛期間でも充実した時間を過ごすことができていた。
夏の甲子園開催が危ぶまれる中でも希望を持って練習に取り組んでいたが、5月20日に夏の甲子園の中止が決定。覚悟はしていたものの、やはり、「正直、甲子園がないのは薄々感じていましたけど、実際に甲子園がないと決まって少し落ち込みました。それでもプロを目指していたので、練習だけはしっかりやっておかないといけないと感じていました」
プロを目指すにあたり、自粛明けの6月から本格的に木製バットの使用を始めた。卓越した打撃技術を持つ山下だが、さすがに最初は対応に苦しんだという。
「最初はミートができていなくて、金属では飛ぶだろうなという当たりでも詰まったり、先っぽだったりするので、対応は難しかったです」
前編はここまで。後編では最後の夏に挑んだ山下選手に迫っていきます。
(取材=馬場 遼)
関連記事
◆連載 2020年インタビュー
◆木更津総合高等学校 早川 隆久投手「全国レベルの攻略困難な投手を目指して」
◆重みと責任を一身に背負い、早川隆久(早稲田大)は力と技で優勝に導く