今年の高校生投手でトップクラスの評価を受けているのが山下 舜平大福岡大大濠)だ。

 189センチの長身から振り下ろすアベレージで140キロ後半を記録する圧倒的なストレートは角度があり、ブレーキの利いた精度の高いパワーカーブ。この夏の独自大会、甲子園で開催された練習会では高い潜在能力をこれでもかという程見せつけた。

 この1年でドラフト1位候補に挙がるまでとなった山下は一体どのような思考、鍛錬があって昇り詰めることができたのだろうか。後編の今回は、球速アップの裏側に迫った。

地道な基礎固めに終始した活動自粛期間


 「速いカーブ」という大きな武器を手に入れた山下だが、それでも最大の武器はやはり迫力満点のストレートだ。

 ストレートのターニングポイントは活動自粛期間にある。

 入学時には78キロほどだった体重は、春先には93キロにまで増加して体作りは順調に進んでいた。
しかし、146キロを秋に記録して以降はなかなか球速が伸びず、チームメイトの山城 航太郎が春先の紅白戦で149キロを記録する横で焦りを感じていた。

 当時の心境を「とても悔しかった」と口にするが、新型コロナウイルスの感染拡大により思わぬところでチームは活動自粛に入る。
 山下は危機感を持って日々を過ごしたと振り返る。

 「日頃から基本が大事だと言われていました。特別なことをした訳ではなく、股割りや下半身を意識したシャドーピッチングをよくやりました。
キャッチボールの中でも股割りを意識して、トレーニングも器具を使うことが出来なかったので家の近くの階段でダッシュをずっとやっていました」

 地道な基礎固めに終始して、活動自粛の期間を過ごしたという山下。体重も増やすよりも維持することに努め、下手に発想を変えてチャンスと捉えるよりも、雌伏するように日々を過ごした。
 そしてその効果は、活動開始直後に目に見えて表れた。

 活動再開後、初めてとなる練習試合で何と153キロを記録。
 カーブにもより一層磨きがかかり、福岡独自大会では東福岡戦で、7回12奪三振の快投を見せ、決勝戦の福岡戦では延長になっても150キロ台をマークするなど、ポテンシャルの高さを存分に示し、一気にドラフト上位候補へと名乗りを上げたのだ。

 この急成長の要因を、山下はフォームに「間」を作ることが出来るようになったためと分析する。
 「横向きで捕手を見る時間が、少し長くなったかなと感じています。下半身主導のシャドーピッチングを続けたことが、結果的に『間』を作ることに繋がったのだと思います」

 また八木監督も山下の成長の要因について、「それもももちろんなんですけれども、力強さが増したというのが一番です。

 力を溜められる時間。そういったところが「間」だと思うんですけれども力をうまくボールに乗せれるようになってきたというのは確かに感じます」

 山下の急成長を目の当たりにして、八木監督はプロ志望届を提出することを提案。山下本人は「それ以前からプロは目指していた」と笑って振り返るが、他人から認めてもらえたことはプロ入りに向けて大きな自信になった。