153キロ右腕・山下舜平大(福岡大大濠)をドラ1位候補に押し上げたターニングポイントは大阪桐蔭戦 【前編】
10月26日に迎えたドラフト会議。今年の高校生投手でトップクラスの評価を受けているのが山下舜平大(福岡大大濠)の注目度が大きく高まっている。
189センチの長身から振り下ろすアベレージで140キロ後半を記録する圧倒的なストレートは角度があり、ブレーキの利いた精度の高いパワーカーブ。この夏の独自大会、甲子園で開催された練習会では高い潜在能力をこれでもかという程見せつけた。
この1年でドラフト1位候補に挙がるまでとなった山下は一体どのような思考、鍛錬があって昇り詰めることができたのだろうか。
甲子園で活躍する三浦銀二に憧れて
山下舜平大(福岡大大濠)
福岡市立三宅中時代から県の選抜チームに選ばれ、全国準優勝(KWB大会)を経験するなど期待は大きかった山下。
福岡大大濠の先輩に当たる三浦銀二投手(法政大)は、実は少年野球チームの筑紫丘ファイターズ時代の先輩でもあり、選抜甲子園の舞台で活躍する姿に憧れて福岡大大濠進学を決意。
現在189センチある身長は高校入学当初からすでに183センチあり、大きなポテンシャルを秘めていることは明らかだった。名門校である福岡大大濠の環境に飛び込むことに不安はあったが、「先輩方は入った時から優しく、自分たちがやりやすいような環境を作ってくださいました」と早くからチームに溶け込んでいった。
山下は、1年生の秋からベンチ入りを果たし、2年生の春には九州地区大会出場を果たす。
まず2回戦の球磨工(熊本)戦に先発し、8回1失点の好投。そして準々決勝の大分戦では、1.2回を投げて4失点を喫し、サヨナラ負けとなってしまったが、球速は144キロを記録。この大会を機に注目を浴びるようになり、夏の福岡大会では九州国際大付に1対3で敗れ準々決勝敗退となったが、ラストイヤーの活躍に期待がかかる内容を示した。
[page_break:大阪桐蔭戦で自信をつけた「速いカーブ」]大阪桐蔭戦で自信をつけた「速いカーブ」
山下舜平大(福岡大大濠)
ここまでの歩みを見ると、一見順調に成長を続けてきたように感じるが、八木啓伸監督、そして山下の胸の内は「もっとやれる」であった。
まず八木監督が改善を求めたのが、今では山下の大きな武器となっているカーブ。
ブレーキが利いて落差のある、パワーカーブのような球質が大きな特徴だが、当時のカーブは緩くカウントを取るだけのカーブであった。
「福岡ソフトバンクホークスのバンデンハークのカーブが良いなと思い、勝負球になるような速いカーブを身に付けてみないかと言いました。これまではカーブでカウントを取って、真っ直ぐ勝負というパターンが多かったんです」(八木監督)
2年の夏から練習を始め、試行錯誤を繰り返しながら「速いカーブ」を磨いた山下。
手応えを初めて感じたのは、11月の大阪桐蔭との招待試合だった。
「その前の練習試合や練習でも調整はしていましたが、あの試合でカーブがハマってくれました。これまでの抜く意識ではなく、腕を振って(縫い目に)引っ掛けるような意識で投げるようになりました」
試合は5イニングを投げて5失点と課題も残ったが、その一方でカーブが効果的に決まり12奪三振を奪った。全国屈指の強豪を相手に、カーブが使えると手応えを感じた山下。
今振り返ると大きなターニングポイントであった。
(取材=栗崎 祐太朗)