目次

[1]1日7、8時間の面接練習の末、慶應大に合格
[2]慶応大は野球人生の中で最も野球について考えた4年間

慶応大は野球人生の中で最も野球について考えた4年間



佐藤宏樹(慶応大)

 佐藤は1年春からベンチ入り。5試合に登板し、防御率1.93と好成績を残したが、それでも、大学野球のレベルの高さを痛感していた。

 「慶應大は僕なんかよりよい選手が多く集まります。また大学野球は思い切り投げるだけで打たれますし、高校の時はコントロールが悪くても思い切り投げていければ三振も奪えて、なんとか済んでいたんですけど、大学ではそうはいかなくて、投球面、投球フォーム、体作りなど、野球部に入ってからは野球人生で一番考えるようになりました」

 投球フォームは二段モーションにならないよう気をつけて思い切り投げられない時期はあったが、脚を上げる時に手と足を同時に動かす意識で投げたらうまくはまった。1年秋、佐藤はかなり良い感覚でリリースができていた。

 「感覚的な話なのですが、2度リリースしている感じです。そして打者の反応を見るとまっすぐとわかっていても真正面のファールだったり、空振りを奪えていたり、そして捕手のミットを突き刺さるように投げることができる。悪いときは垂れた感じになるのですが、1年秋はそういうストレートをずっと投げることができていました」

 高確率で空振りが奪えるストレートの回転数は最高で2600回転を記録。「回転数を挙げたいと思って投げたわけではなく、良い感覚でリリースしたいと思ったら、この回転数になっていました」と語るように、佐藤のストレートは140キロ台でも異次元の伸びがあった。

 このシーズンは3勝0敗、26.1回を投げて42奪三振、防御率1.03と抜群の安定感を発揮し、最優秀防御率を獲得した。しかしここから怪我の連続。3年春に10.2回を投げ、最速151キロを計測したものの、左肘の状態が思わしくないが続いた。

 ただこの期間で学んだこともある。
 「自分の限度を知ることができましたし、体について知ることができた」
 そしてうまく投げられなかった分も4年春にぶつけようと、今年はじめのアメリカ遠征、オープン戦から精力的に投げたが、左肘を痛め、まだ春、秋でも登板はない。「怪我をしないこと。規定投球回に達したい」と語っていた佐藤にとっては悔しいシーズンになっている。

 潜在能力の高さについて、かつてJR東日本で監督をしていた堀井監督は田嶋 大樹佐野日大ーJR東日本ーオリックス)を引き合いに出しながらこう評価する。
 「タイプは違いますが、田嶋のような切れのあるストレートを投げるのとは対象的に佐藤は威力のあるストレートを投げる印象があります」と評価する左腕の登板はあるのか。

 一度だけでもいい。大学ラストシーズンでロマン溢れる投球を見せてほしい。

取材=河嶋 宗一


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