大学生屈指の強肩強打の捕手・古川裕大(上武大)の覚醒のきっかけは日本代表候補合宿
今年の大学生捕手で、身体能力も高く、強打の捕手として注目される古川裕大(上武大)。リーグ戦通算12本塁打を放ち、さらに俊足でスローイングタイム1.8秒台と打てて走れて守れる捕手として注目を浴びている。
そんな古川の軌跡とドラフトにかける想いを聞いた。
プロ入り捕手の攻守に刺激を受け、レベルアップ
古川裕大(上武大)
福岡県出身の古川は久留米ボーイズ時代、ジャイアンツカップに出場。しかし当時、中学5冠の枚方ボーイズに敗れ初戦敗退。
そして久留米商に進学するが、なかなか勝てず苦しい時期があり、秋から夏まで九州大会や甲子園につながる公式戦は1勝もできずに終わった。
ただ高校通算21本塁打を放っている強打の捕手として潜在能力は高いものがあり、上武大の進学が決定。
古川は「プロに絶対にいくつもりでこの大学(上武大)にきました」と意気込み、その後、1年春からリーグ戦に出場。才能を開花させたきっかけとなったのは2018年12月の全日本大学代表の候補合宿だった。1学年上の海野隆司(東海大ー福岡ソフトバンク)、郡司裕也(慶応大ー中日)など好捕手のプレーに目を奪われた。特に捕手としては海野のプレーに衝撃を受けた。
「レギュラー捕手として出ていた海野さんのプレーを見たのですが、本当に捕手スキルが高い方で、やはりワンランク挙げないといけないと思いました。さらに打撃は郡司さんの打撃を見て、もう1つのレベルを目指していかないと思いましたので、刺激になりました」
スローイングで右足、左足をリズムよく使うことを意識した。
「自分は投げたいあまり、上半身が突っ込んでしまうのがあったんですね。だから下半身から動くことを意識しています。最近は左足から先に出して投げる捕手も増えましたけど、自分の場合、右足から動いて、左足という動きの中にリズムを取って体重移動することを意識しています」
この感覚でいくとスムーズでスローイングができるようになった古川。1.8秒~1.9秒台を計測し、10月4日に開催された新潟医療福祉大戦では最速1,78秒を計測。また、打撃面で意識することは、ボールを長く見ること。そのためにタイミングを早く取ったりして、的確にボールを捉える。そうすることで、タイミングも取りやすくなり、強く振ることを意識した。
その長打力が開花したのは3年春から。リーグ戦で5本塁打を放ち、3年秋には3本塁打を放ち、リーグ通算11本塁打に到達。2020年当初、ドラフト候補として注目され、勝負に臨んだシーズンだったが、大学野球もコロナの影響で活動自粛。春季リーグが中止となり、秋のリーグ戦に臨んだ。
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4番キャッチャー・古川裕大(上武大)
そして秋のリーグ戦ではこれまでの鬱憤を晴らすかのように、快打を連発。ファーストラウンド、セカンドラウンド合わせて、27打数10安打、1本塁打10打点、打率.370と好成績を残している。
特に4日の新潟医療福祉大戦の本塁打は3回裏の第3打席で1ボールからの2球目にしっかりと反応し、弾丸ライナーで右翼席に打ち込んだ。この場面の本塁打について古川はこう振り返る。
「自分は2打席凡退していましたし、大量リードはしていたのですが、チームの流れが悪かったので、チームの雰囲気を変えようと思っていました。打ったのは低めの変化球で、弾道が低くて、入るかどうか分からなかったのですが、うまく伸びてくれてよかったです」
古川の打球はよく伸びる。凡退した打席でも思った以上に伸びていく打球も多い。古川はしっかりと筋力トレーニングにも励んでおり、ベンチプレスは100キロ以上、スクワットも180キロ前後と数値も優れており、現在は182センチ88キロ。一見、古川を見ると引き締まっているように見えるが、じっくりと見ると下半身、上半身も実に筋肉隆々で、余計な脂肪がなく、プレー全体にキレがある。
さらなるステップアップへ向けて、動画を見て研究する機会も増えた。
「昔はあまり見ていなかったんですけど、今はプロで活躍する左打者は見ますね。森友哉選手(大阪桐蔭ー埼玉西武)、村上宗隆選手(九州学院ー東京ヤクルト)など。見直すことがあります」
ストイックに取り組む古川。今はドラフトのことを考えず、目の前のリーグ戦に集中している。11日にはライバル・白鴎大と対戦する。
「そこが勝負になりますし、持っている力を発揮して、普段通りの野球ができればと考えています。今はそこしか考えていません」
最後にプロ入りが実現した時、どんな捕手になりたいかを聞いた。
「打てる捕手というのは誰もがなりたいと思うんですけど、自分は勝てる捕手になりたい。信頼される捕手になりたいんです」
捕手として長く出場し、成功を収めるには、古川の答えこそ真理だ。最後のリーグ戦でライバルを破り、有終の美を飾っていきたい。
取材=河嶋 宗一