スラッガー・渡部海夢(東海大甲府)の強みは実戦に即した努力ができること。最後の夏に才能が開花!【後編】
これまで高橋周平や渡辺諒といったスラッガーを輩出した東海大甲府。その系譜を受け継ごうとする注目スラッガー・渡部海夢に今回は迫っていく。
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飛距離は高橋周平以上!?名将も認めた渡部海夢(東海大甲府)の長打力の秘密とは?【前編】
大きく名を広めた決勝戦の特大弾
渡部海夢(東海大甲府)
渡部の努力が実を結んだのは、2年秋から。それまで高校通算10本ぐらいだったのが、秋以降で同程度のホームランを重ね、2020年へ向けて飛躍できる準備が整った。しかし、東海大甲府も全国の学校と同じく新型コロナウイルス感染拡大の影響で、長期自粛。
兵庫に帰省した渡部はひたすらスイングを行った。それだけではなく、渡部は自身のスローイングを見直した。肩が痛いわけではないのに、なぜかボールがいかなくなっていたのだ。この自粛期間はシャドーピッチングをしながら、投手のようなフォームを固めた。すると、スローイングは元通り力強いスローイングが実現。強肩強打の外野手へ成長した。
その期間、Zoomを使ってミーティングも行った。山梨独自大会が決まった時、「とにかく感謝の気持ちでいっぱいでした。本当に厳しい状況の中で開催をさせていただいたので、まずは優勝を目指そうと思いました」
山梨独自大会では順調に勝ち進む。そして決勝戦では2016年から4年連続優勝の山梨学院と対決。夏では何度も苦杯をなめていた相手だけに「意識はかなりしていた相手でした」と燃える。4対4で迎えた7回裏。渡部の前に打席が回った。
そして振り抜いた打球は[stadium]山日YBS球場[/stadium]の場外へ消える本塁打となった。この本塁打は渡部も驚きの一打だった。
「打ったのは真っ直ぐです。本塁打は狙っていませんが、うまく振り抜いたら自分でも想像以上の飛距離になってくれました」
村中監督は渡部の3年間の集大成があの一打に出たと語る。
「彼はもともと振る力については下級生のときからありましたが、だんだん非凡さが出てきたと想います。最後の夏の決勝本塁打というのは彼の集大成が出た。そこで出たのは、将来に向けてもウエイトを占める大きな一打だと思います」
村中監督の言葉通り、渡部の名を大きく広める一打であった。
厳しいプロの世界を挑戦できるメンタリティが備わっている
渡部海夢(東海大甲府)
そして大会が終わると9月4日の練習会(東京ドーム開催)へ向けて、後輩たちと混じって練習に参加。同じメニューをこなし、自主練習と懸命にこなした。そして練習会では初日のフリー打撃で2本塁打、さらにシートノックでは自粛期間で磨いて来たスローイングを披露し、強肩強打の外野手と印象づけた。ただ2日目のシート打撃では思うようなアピールができず、「初日はしっかりアピールできましたが、2日目は自分の打撃はできず悔しかったです。ただこういう練習会の場をいただけてよかったです」と今年初めて実現した舞台で、「渡部海夢」をしっかりと売り込んだ。
今では指名を信じて練習をするだけではなく、後輩たちにも打撃指導。その指導力はなかなかで、現役選手によると、技術的なこと、精神的なことまで詳しく教え込んで、後輩たちは秋も圧倒的な勝ち上がりで県大会優勝。現チームの三浦主将は「渡部さんは準決勝の前にLINEで、詳しくアドバイスをくださって、実際に結果にも現れました」と感謝の意を述べている。
村中監督はドラフト上位を狙える選手でなければ、高卒プロに送り出さないポリシーがある。例年の東海大甲府の高卒プロ入り選手を見れば、高橋周平、渡邉だけではなく、2005年ヤクルト1位の村中恭兵と、上位が多い。それでも渡部の熱意を見て、本人の希望である高卒プロ志望を認めた。
渡部のこれまでの歩みを見れば、厳しいプロの世界での挑戦を後押ししたくなる選手であることは確かだろう。1日1000スイングを課し、その中でも自分なりに考えて独自の打撃理論を築き上げながら結果を残し、さらに面倒見もよく、後輩からも慕われる。今も打撃練習だけではなく、ジムに通いながら肉体を鍛える日々。どのステージでも這い上がって結果を残す。そんなメンタリティの強さを持ったスラッガーであることは間違いない。そして渡部はこう意気込んだ。
「自分は広角に打ち分けるのが持ち味なので、安打製造機になって、ヒットを量産して、打率を残す打者になりたいです」
選手像も具体的に述べる渡部のもとに吉報は届くのか。
取材=河嶋 宗一