潜在能力は歴代トップクラス。プロ志望の191センチの大型右腕・橋本拳汰(健大高崎)の 決意
140キロ超えの投手が数多くいる健大高崎投手陣。なんと3投手がプロ志望届けを提出した。
その中でも特に高い潜在能力を秘めているのが、身長191センチの橋本拳汰。最速142キロの速球と落差が鋭いフォークを武器にする大型右腕である。
その将来性はエース・下慎之介以上と期待される橋本のこれまでの歩みを紹介したい。
胸郭出口症候群を発症して長いリハビリを経験
橋本拳汰(健大高崎)
小学校1年生の時から野球をはじめ、当時は外野手だった橋本。当時から身長は大きく小学校6年生の時には170センチもあった。そして中学ではいなべ市の名門・桑員ボーイズに所属。中嶌優(中京大中京)、田所宗大(いなべ総合)とともに全国2回経験。さらにNOMOジャパンも経験。
身長190センチの最速132キロを誇る大型右腕として注目を浴びた橋本は、「甲子園が最も近い」という理由で健大高崎に入学。
しかし入学後、橋本は大きな壁にぶつかった。胸郭出口症候群を発症したのだ。
「血の巡りが悪くなってしまって、投げているうちに自然と肘が上がり、完投ができないんです。投げられないわけではないのですが、この現状を変えたいと思いました」と、1年生12月に手術を決断。
長いリハビリを経て6月の練習試合では139キロを計測し、練習試合でも完封勝利を挙げる。かなり状態を戻したが、夏はベンチ外を経験した。
その悔しさから「リハビリもあったとは、サボりがちだった自分の練習姿勢を改めることにしました」と日々のトレーニング、投球練習を懸命にこなし、ベンチ入り。そして主力投手として活躍し、2年秋の関東大会の常総学院戦ではリリーフとして好投。自己最速の142キロを計測し、5回無失点の好投。さらに調子が良かったと語る決勝戦の山梨学院戦では公式戦初完封。チーム初の神宮大会出場を呼び込んだ。
しかし神宮大会では調子を落としてしまい、計9イニングで7失点と思うような投球ができなかった。
そして冬場では、もう一度、下半身を鍛えなおし、投球フォームも左足を挙げた時に体が流れてしまう欠点を解消するために、しっかりと左足で立って勢いよく投げ込む投球フォームに修正。またコーチからも「もっとプロ野球投手の動画を見て研究しなさい」と指摘され、動画を見ながら、自分にあった投球フォームの動きを取り入れてきた。
その中で、2月の取材中、橋本は左腕のグラブを高く掲げて真っ向から振り下ろす投球フォームをしていた。そのフォームはとても迫力があり、他の投手にはない角度があり、シート打撃でも130キロ後半を計測。さらに120キロ台のフォークの変化量も大きく、2月にしては仕上がっていた。
将来の進路に向けて「高卒プロでいけるのならばいきたい」と語っていたが、8月、エース・下慎之介とともにプロ志望届けを提出を決めた。学年が上がるにつれて同級生に負けたくない気持ちが強くなっていた。中学3年生の時、民放のテレビ番組で投げる機会があったが、同番組に出演した木下幹也(世田谷西シニアー横浜)の投球を見て衝撃を受けた。
「今でも振り返りたくない時間でしたね。相手は140キロバンバン投げているのに対し、自分はあの時127キロでしたから」
あれから3年。まだ球速は140キロ中盤だが、それでも角度のある速球とフォークは木下にも負けていない武器だ。
群馬独自大会で登板し、状態を高めている橋本。帯広農戦で投げる機会は巡ってくるのか注目をしていきたい。
(取材=河嶋 宗一)
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