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[1]自分の持ち味をはっきりさせて挑んだ甲子園交流試合

 鳥取城北に劇的なサヨナラ勝ちを収めた明徳義塾。四国地区の王者の意地を終盤に発揮したが、その中でも一際存在感があったのが1番に座る奥野 翔琉だ。

 鳥取城北戦は5打席立って1打数ノーヒット。4四死球とほとんど出塁して、9回のサヨナラ劇の足掛かりも作った。さらに2度の盗塁成功するなど、聖地・甲子園を駆け回った。

自分の持ち味をはっきりさせて挑んだ甲子園交流試合


 俊足として注目されていた鈴木だったが、どれくらいのスピードで走るのか。実際に、5回のタッチアップの際にサードからホームのタイムを計測すると3.4秒という数字が出た。また2度の盗塁の際もタイムを計測すると3秒前後の記録を出すなど驚異的な数字を叩き出しており、持っている素質は全国トップクラスだ。

 それは相手の鳥取城北もわかっていたこと。その中で盗塁2つを成功させられた要因を聞くと、こんな答えが返ってきた。
 「事前にピッチャーを見ているとクイックは速くなかったので、自分なら成功できると思っていました」

 鳥取城北の先発・松村 亮汰のクイックは1.2秒前後と決して遅いわけではない。たしかに足を上げてからタメを作っている時間があるとはいえ、このタイムでも走れる自信を持っている奥野の脚力は対戦する相手は相当厄介だ。

 足を武器にしている以上、事前準備は大事だ。そのことは奥野も理解をしている。
 「アウトカウントだけではなく、相手の守備位置や投手の癖を頭に入れておくことが走塁では大事です。そこに加えてクイックの速さであったり、ランナーがいる時のピッチャーの制球力もきっちり確認するようにしています」

 数多くの情報を頭に入れたうえで、自分の走力と比較して判断を下す。こうした判断が正確にできるからこそ奥野は走塁で輝きを放っている。その証拠に鳥取城北戦で決めた2つの盗塁はすべて「行けたら行っていい」というサイン。

 このサインは出るとそうでない時があるが、ほとんどの場合は奥野の判断に任されている。名将・馬淵史郎監督からも信頼を寄せられているといっても過言ではないだろう

 だが、先日まで開催されていた高知県の独自大会では自身の役割を見失っていた。
 「独自大会では長打を狙いすぎてしまい、結果が悪かったです。自分勝手なバッティングでしたが、決勝戦が終わってから『自分の持ち味は何だ』と聞かれたんです。そこから意識を変えて甲子園までしっかりと準備をして、足で稼げるようにしました」

 今は「1番に自分がいるのは足で相手にプレッシャーをかけることで、自分が出塁して脚でかき回せば得点になると思っています」と奥野の中で役割をはっきりとさせている。実際に4度の出塁で2度得点に結びつけている。自分の仕事をきちんと果たしている。

 高知の独自大会も終わり、鳥取城北戦を最後に高校野球には一区切りがついた。これからのステージではどのような活躍を見せてくれるのか。自慢の足を使ってグラウンドを駆け巡る奥野の成長した姿を見られることを楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅)


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