Interview

甲子園で衝撃を与えた最速146キロ右腕・常田唯斗(飯山)が磨いてきた全国で戦うためのピッチング

2020.07.27

 昨夏、春夏通じて初の甲子園となった飯山。初戦の仙台育英には敗れたものの、聖地で存在感を示したのが常田唯斗だ。

 最速146キロを計測するストレートの威力で、同世代でもトップに入る実力を持っている。甲子園は中止となり独自大会のみとなったが、常田は甲子園からの1年間をどのように過ごしたのか。

磨いた制球力と手にした新たな武器

甲子園で衝撃を与えた最速146キロ右腕・常田唯斗(飯山)が磨いてきた全国で戦うためのピッチング | 高校野球ドットコム
最速146キロ右腕・常田唯斗(飯山)

 昨夏の甲子園でマウンドを経験した常田は、改めて甲子園での投球を振り返るとこのように語った。
 「甘いボールは全国クラスになると打たれてしまいます。しかし、インコースなど厳しいコースに投げ込めれば抑えられることがわかりました。ですので、その辺りのコントロールが必要だとは感じました」

 強力打線・仙台育英を前に投げたことを思い出し、より高い制球力を求め始めた常田。その一方で、新たな武器の必要性も同時に感じ取っていた。
「インコースを攻め切ることも大事ですが、そこでストレートだけではなく内側に食い込むツーシーム。さらにはカットボールなど少ない球数で打者を抑えるために少し動くボールを練習し始めました」

 体力を温存するという狙いも持ちながら、新チームから常田は球種を増やすために練習を重ねた。どちらもストレートと同じ握りから、カットボールはスライダーを投げるイメージでボールを切り、ツーシームは逆にシュートのように捻る。捻る分、抜けやすくツーシームの習得には時間をかけながら、球種を増やそうと試行錯誤を続けた。

 それと同時にインコースへの制球力を高めるべく、ブルペンではインコースのギリギリにキャッチャーを座らせてひたすらコントロールを磨き上げた。

 また常田の一番の魅力である角度のあるストレート。投球フォームで参考にしている投手などはいないとのことだが、新チームスタート時から伸びるボールを投げられるようにすべく、スピン量を増やそうと心がけてきた。

 「低めに投げたときにボールが伸びてストライクが取れるように、リリースを今までよりも打者の近くで離せるようにイメージをしっかり持って取り組みました」

 投球フォームを大きく変えることはなく、前でリリースするイメージだけをもって常田は調整を進めた。そしてエースとして迎えた秋の大会は北信予選会の決勝戦で長野日大に0対1で敗戦するも県大会出場。「最後に甘いボールを打たれてしまいましたが、そこまでの投球は納得できる内容でした」と常田本人もコントロールミスを課題に挙げつつ、手ごたえをつかみながら県大会へ進んでいた。

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楽しんで終われるような夏を

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最速146キロ右腕・常田唯斗(飯山)

 今年のチームは「一度打ちだしたら勢いが止まらない」と常田自身が分析するように、打力が武器となっている飯山。初戦の上田千曲は9対2で勝利。準々決勝へコマを進めると、県内の強豪・上田西と対戦北信越大会まであと僅かというところだったが、試合は5対10と常田が打ち込まれる形で敗れた。

 「途中で足がつってしまうなど、体力面でのレベルアップが必要でした。今年は打ってくれるチームですので、余計に自分がしっかり抑えないといけないと思いました」

 この課題を真摯に受け止めた常田は、オフシーズン中に下半身をメインにトレーニングを重ねてきた。トレーナーの指導による、いくつかの種類のスクワットを重量を変えながら下半身を強化。「負荷のかかり具合に違いがありますが、おかげで投げ終わりに軸足できっちり立てるようになりました」と変化を実感。

 コントロールもアップし、成果を試す春の大会に向けて準備を進めた。だが、学校が自粛となり活動ができなくなった。さらに5月20日は甲子園が中止となり、聖地に2年連続で行くチャンスを失った。

 常田は当時の心境、そして飯山が属する北信予選会は18日から開幕した独自大会への想いをこのように語った。
 「なくなったことは仕方がないと思っています。ですので、いつまでも悲しまず大会を楽しんで終われるように頑張っていきたいと思います」

 現在は前の方でリリースすることだけではなく、左足の上げ方も意識している。
 「上げる時に力んでしまうと上体が反ってしまい、ボールが浮いてしまいます。ですので、前かがみ気味でも力を抜いてあげることで、低めに投げ込もうとしています」

 甲子園で見せたストレートに磨きをかけながら、1年間で多くのモノを積み上げてきた常田。それをいかんなく発揮した時に、どれだけのピッチングを見せてくれるのか、常田の投球に注目したい。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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