Interview

最速142キロの群馬の公立の星・佐藤祐(前橋工)はエースの覚悟を胸に強豪私学を圧倒する!

2020.07.25

 7月18日から開幕した群馬県の独自大会。前橋育英健大高崎桐生第一と例年以上に熾烈極める大会となるが、そこに待ったをかけようとしているのが、前橋工佐藤 祐だ。

 身長181センチ83キロの恵まれた体格から、最速142キロのストレートなど力強いボールで打者を翻弄。県内屈指の力投派投手だ。そんな佐藤はここまでにどのような道のりを歩んできたのだろうか。

1つ1つの練習を真摯に受け止め、積み重ねて成長してきた

最速142キロの群馬の公立の星・佐藤祐(前橋工)はエースの覚悟を胸に強豪私学を圧倒する! | 高校野球ドットコム
佐藤祐(前橋工)

 佐藤が野球とのかかわりを持ち始めたのは小学2年生から。近所の友人からの誘いで軟式野球の福島ガッツに入団。様々なポジションを転々としながら、小学5年生の秋ごろからピッチャーへ挑戦し始める。

「とにかく全力で投げてスピードで勝負をしていましたが、コントロールが悪くて苦労しました」

  小学校時代のピッチャー・佐藤を懐かしそうに振り返ったが、甘楽中学へ進学すると、1年生の夏から外野手として出場。そして1つ上の先輩たちの代になると、本格的にピッチャーとして練習をしていくこととなる。

  福島ガッツ時代にはあまりやってこなかったブルペンでの投げ込みに力を入れ、走り込みも積極的に取り組んでいった。

 

「長距離などランニングは好きでしたので、ポール間などしっかりやっていました」

  また甘楽中から力を入れてきたブルペンでの投げ込みでも、佐藤はコントロール向上を意識して取り組むようにしてきた。

「とにかくブルペンで投げる時はキャッチャーの構えたところに投げること。そして伸びるボールの軌道をイメージして投げ込むようにしてきました」

フォームやリリースを大きく変えたわけではないが、イメージとランニングで鍛えてきた下半身のおかげもあり、「コントロールが良くなってバッターと勝負が出来るようになりました」と3年間での成長を振り返った。

 その後、佐藤は前橋工に進学するまでの期間、野球塾へ通うことを決心した。

 「硬球にも慣れたかったですし、高校までにレベルアップがしたかったんです。そうしたら親が見つけてくれたので、通うことを決めました」

 練習は週3日。水曜日は室内練習場を使ってトレーニングやランニング。土日になればグラウンドに足を運び、みっちり練習をした。また食事合宿も行うなど、技術だけではなく体力面も強化された佐藤。「厳しいと評判のチームでしたので、毎日きつい練習でした。トレーニングも多かったですが、おかげで力はついて球速は速くなっていきました」

 軟式から硬球に変わったことにも違和感がなかった佐藤はスムーズに対応し、高校野球への準備は順調に進んだ。

 そして「練習を見て雰囲気が良かった」と言うことを決め手に前橋工へ進学。入学時からAチームに帯同される高い期待を寄せられながら、高校野球をスタート。夏はベンチを外れたが、走り込みなど1つ1つの練習メニューを真剣に取り組み続け、1年生の秋にベンチ入り。さらに公式戦デビューもした。

 

「最初は緊張しましたが、先輩方にもいろんなことを教えていただき、しっかりと調整ができましたので、自信を持って投げられました」

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名実ともにチームのエースへ!

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佐藤祐(前橋工)

 確かな手ごたえを持ちながら公式戦デビューを果たし、春以降の飛躍に繋げるところで肩を痛めた佐藤。投げ過ぎが原因で春はベンチから外れ、2年生の夏に怪我を治してベンチ入りを再び果たしたが、初戦の高崎北にチームは敗れた。

 「緊急登板という形でしたが、抑えないといけないところで抑えられなかった」という反省点を挙げたが、それ以上に佐藤の中で問題となていたのがフォーム固め。ケガの影響で夏の大会の際はフォームがバラつき、コントロールも不安定に。新チームでは主戦力で投げることになる佐藤にとって、この課題を解決することが重要となった。

 

そこで夏休み中はフォームを固めるべく、体重移動を中心に見直していった。

 

「本来であればマウンドから真っすぐ降りていけばいいところを浮いた状態でしたので、担ぐような投げ方になり、ボールに伸びがありませんでした。ですので、キャッチボールから体重移動を意識しつつ、メディシンボールを投げたり、チューブを使って投球動作を1つ1つ確認しながらフォームを固めました」

 昨夏の高校野球界を沸かせた奥川恭伸を参考にしながら、佐藤はフォーム修正に取り組んだ。夏休み期間中に練習試合で佐久長聖などの強豪校相手に好投するなど、秋に向けて少しずつ手ごたえを感じてきていた。

 しかし秋季大会は初戦で、軟式U-15にも選ばれた清水 淳擁する安中総合。「清水に張り合って自分の投球ができなかった」と佐藤も振り返ったが、3対11で敗戦。実力を発揮しきれないまま、佐藤は2度目のオフシーズンに入る。

 走り込みを中心に冬場の練習をしながらも、自粛で全体練習ができなる事態に。この時、佐藤は「自分の練習が沢山出来る」と前向きにとらえ、近くの友人とグラウンドでトレーニングや遠投など、出来る練習をしながら自分の課題と向き合ってきた。

 25日に初戦を控え、「紅白戦などでも手ごたえがあって、調子はいいです」と好調ぶりを語る佐藤。この春から前橋工に来た久保田コーチも、「体がしっかりしており、投げおろすので角度があってボールにも力がある」と佐藤のボールの良さを語る。一方で、「考えて出来る選手なので試行錯誤をしていますが、出力が大きい分、小さなずれが大きくなってしまう」という佐藤の課題を感じている。

 

 だが、「毎日1時間半かけて通学して、練習も遅くまで頑張っています。それを見て同級生からは『祐がやってくれるから』と信頼関係はありますし、後輩からも慕われています」と佐藤の姿を高く評価している久保田コーチ。

「夏は自分が勝たせるつもりでやりたいです」

 最後に佐藤が残した意気込みだが、そこからも責任感の強さを感じさせる。監督、チームメイトからも信頼される佐藤は、最後の夏に最高のピッチングをして名実ともにチームのエースになれば、前橋工の躍進は十分可能だ。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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