Interview

いなべ総合の環境が最適だった。最速146キロ右腕・伊東邑航の最大の武器は「強い向上心」と「ゲームメイク能力」

2020.07.23

 今年の三重県を代表する大型右腕として注目を集めているのが、伊東邑航だ。182センチ88キロと恵まれた体格から最速146キロの速球、3種類のスライダーを武器にする投手だ。正捕手の田所宗大曰く、好不調関係なく、どの試合でも、安定してゲームが作れるゲームメイク能力の高さが最大のウリだという。

 多数のNPB球団からも注目を集める伊東の成長の歩みに迫った。

いなべ総合の教えはすべてが新鮮だった

いなべ総合の環境が最適だった。最速146キロ右腕・伊東邑航の最大の武器は「強い向上心」と「ゲームメイク能力」 | 高校野球ドットコム
伊東邑航(いなべ総合)

 小学校1年生から野球を始め、そして5年生から投手人生がスタートする。そして、大池中に進み、軟式野球でプレーし、この時からいなべ総合の憧れを持っていた。
 「自分と同じ大池中の先輩で、いなべ総合のエースだった倉田さんは2015年、主将だった加藤勝平さんは2012年の県予選の決勝に出場したんです。尾崎先生から教わって、成長した姿を見て、自分も尾崎先生から学んで甲子園に行きたいなと思いました」

 そしていなべ総合に進むと、尾崎監督の教えはすべてが新鮮だった。
 「フォームの動きだけではなく、体の構造まで踏み込んで教えていただきました。尾崎先生から教わって、投球フォームはここまで考えて投げるのかと思いましたね。中学時代に教わったことがないことばかりで、一から学ぶ形となり、とても勉強になりました」

 伊東が成長できたのは尾崎監督の教えや、日々行っている密度の濃いトレーニングの質を高めるために、少しでも多く吸収しとうとした姿勢があったことだ。いなべ総合では、野球ノートを取っている。投手は投球フォームのイラストを書いて、フォームのことを学んだり、日々の練習の振り返り、投球の振り返り、そして改善ポイントを記入をしていく。

 伊東は野球ノートを通して、「練習の質は上がっていった感じはあります」と振り返るように、伊東はいなべ総合入学1年間で2年春の練習試合で最速142キロをマークするようになる。
 「高校に入学して、ウエイトトレーニング、体幹トレーニング、自重トレーニングなどを重視して取り組むようになりました。それがあったからこそ球速が伸びたと思います」

 2年夏の三重大会の宇治山田商戦では最速145キロを計測。2020年度のドラフト候補と思わせるパフォーマンスをしっかりと示すことができた。

 そしてセンバツを狙った2年秋の県大会準々決勝で東海大会に勝ち進んだ近大高専相手に7回を投げ、1失点、10奪三振の快投を披露するが、伊東は「自分はいつも惜しい負けをしてしまうので、勝負強さということを意識して練習試合は投げてきました」

 その後の練習試合でも好投を見せてきた伊東は勝負の冬を迎えた。

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全体練習再開から146キロを計測するなど着実な成長

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伊東邑航(いなべ総合)

 冬では引き続き、ウエイトトレーニングに取り組んだ。さらに投球フォームの改善も行った。
 「自分は足を上げて、そして並進運動に入る前に身体が反る癖があってバランスを崩す癖がありました。それを直すことを意識し、並進する時にしっかりと身体が捕手と打者に向かっていけるようにしていました」

 身体をそらすことなく、投げる際にそのまま真っすぐ倒れこむようにして投げる。まだ完成形ではないが、以前よりもしっかりと指にかかるようなストレートを投げることができる手応えは掴んでいる。

 昨年は全力で145キロだったのが、7、8割の力でも投げられるようになっている。そしてコロナで活動が自粛となっていても、「ここで気持ちが折れてはいけないのですし、言い訳にしてもいけない」と自宅近くの練習場で、投球練習、ランニング、シャドーピッチング、バント処理の練習と、練習場でできることはなんでもやった。

 そうした自主性の強さが練習試合の成果にも現れているのだろう。オフのトレーニングで、182センチ88キロまでサイズアップした伊東は練習試合で、140キロ前半ぐらいの感覚で、最速145、6キロを計測するなど、力強さは増している。

 多数のNPBの球団から注目を集めている伊東だが、進路については迷っている様子を打ち明けた。それはプロに入ることが目標ではなく、活躍することが目標だからだ。

 「プロでは10年ぐらい活躍して、記録にも記憶にも残る選手になると思っています。だから入ることがゴールではなく、そこからがスタートなので。数年で終わるようなスタートラインでは、厳しいと思っています」

 何が何でも行くというわけではなく、しっかりと活躍できる実力や、自信をつければと考えている。だから伊東にとっても、チームにとっても甲子園の存在はとても重要だった。迷わず即プロ!ではなく、アピールする公式戦の機会がほとんど失われ、思わずためらうような心境を持った高校生は伊東だけではないだろう。

 そういう中でも自分を厳しく律し、日々の練習にテーマを設け、着々と実力を積み重ねる伊東のメンタルの強さは大きな武器だ。

 この3年間を見てきた尾崎監督は「メンタリティ、マインドともにいなべ総合の環境に一番合った選手」と評する。

 今は三重独自大会優勝を目指して練習に取り組んでいる。最後の意気込みを語った。
 「チームもみんな優勝に燃えているので、絶対に優勝を勝ち取っていきたいです」

 初戦の相手は津商といきなりハードな相手と対戦する。だが、伊東にとっては自身の真価を試す良い機会だといえるだろう。

(取材=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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