さらなる進化へ今永フォームを模倣。高校屈指の左腕・高田琢登の視点は高卒プロへ【後編】
今年の高校生屈指の本格派左腕として騒がれるのが高田琢登(静岡商)だ。
左腕から最速148キロの速球、切れのあるスライダー、チェンジアップを武器とする高田は高卒プロ志望を掲げている。
能力的には申し分ないものを持っている高田だが、悔しい敗戦を幾度もしている。そういう積み重ねによって高田は多くのNPB球団から注目を集める左腕へ成長をしてる。そんな高田の成長の起点となった出来事を野球人生とともに振り返る。
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高校生屈指の148キロ左腕・高田琢登(静岡商)。自身を変えるきっかけとなった津商戦【前編】
高卒プロを意識してから投球スタイル、投球フォーム、練習の取り組みも改革
高田琢登(静岡商)
東海大会後、高田はある決断に傾いていた。それは「高卒プロ」だ。
昨秋から練習を視察するスカウトが見ていたことも1つのきっかけだったが、最大の要因は、もっと自分を高めたいからこそ、プロを目指した。
「大学進学をすすめる声もありましたが、自分にとってプロ野球選手はかっこいい職業で、自分が好きな野球を仕事にしたいと思いました。その確率が少しでもあるのならば、プロを目指そうと思いました」
その確率を高めるために心身ともにレベルアップをしなければならない。そこで高田は練習の取り組みを見直した。
「実はけっこうサボり癖があって、仲間から言われていました」
分かっていてもなかなか動けない。しかし東海大会の負けをきっかけに自分を変えないと痛感したのだ。
そこで高田は自身の投球内容を見直した。変化球の球種の少なさが課題となった。
「変化球が甘く入ってしまう事が多かったので、津商戦を振り返ると、投球パターンがまっすぐとスライダーに偏ってしまっていて、その他の変化球の精度が駄目だったかなと思って、それからは他の変化球の精度も磨いて行こうと思いました」
磨き直したのはチェンジアップとカーブだった。投球練習ではこの2球種を中心に投げていき、緩急が使える投球ができることを心がけた。その成果を発揮したのは11月のオータムフレッシュリーグ・早稲田大学戦だ。高田は5回をなげ、1安打2四死球無失点、6奪三振の快投でマウンドを降りた。また変化球だけではなく、投球フォームに変化をつけていた。高田が参考にしたのは横浜DeNAのエース・今永昇太(北筑出身)だった。177センチの高田と178センチの今永。体つきも似ており、高田にとって今永は理想の投手に映った。
「今永投手は下半身をとても使えていて、体全体を大きく使ってコースにしっかりと投げ分ける投球が印象に残りました。自分としてはどれだけスピンが効いたストレートを低めに投げることが大事だと思いましたので、身長もそれほど変わらないですし、今永投手のようなピッチングをしようと思いました」
早稲田大学戦の好投や、日々練習を積み重ねていく中で、「高卒プロフォームも徐々に固まり、パワーアップするべく、冬の練習に入った。主に下半身強化に取り組み、スクワットは230キロを持ち上げるまでの筋力を身に着け、さらに食事にも気を使い、冬場で5キロ増量に成功し、177センチ77キロまでサイズアップした。ストイックに取り組む高田の姿に、チームメイトは驚きの声をあげたという。
「みんなから『お前どうした?』といわれるぐらい変わったと思います」
このように心身の変化を遂げたのは高卒プロを意識したことで、高田のライバルがチームメイトから、全国のトップレベルの選手に変わったことだ。
[page_break:最速148キロ計測も、津商戦の10失点敗戦が転機に]初めて3年生全員で臨む独自大会だからこそ優勝したい
高田琢登(静岡商)
「今まではチーム内で意識していたんですけど、プロを目指すとなると、やはり甲子園で活躍している投手や、トップレベルの選手と比較して、取り組むようになりました」
ドラフトは相対評価で運命を分ける。同じ高校生左腕。もしくはアマチュア球界の左腕と比較して、プロにいくに相応しい実力を持った投手であるか。そのためには文句なしの実力、実績を付けないといけないと考えていた。
一冬の成果は実感しており、3月の紅白戦では7、8割の力でも最速146キロをマーク。
「目標とする150キロは近づいているかな」と順調な仕上がりを見せ、春の大会に臨むつもりだった…。しかし、新型コロナ感染拡大の影響で、春季大会が中止。高田は夏の大会火災を信じて、自宅でキャッチボール、腕立て、もしくは蒲原シニアのグラウンドで当時の仲間と一緒に体を動かすなどできることをやってきた。
そんな中、5月20日に甲子園中止が決まった。高田は「この状況ですから、中止になるのは致し方ないことだと思います」と受け止めながらも、昨年の夏の負けた時の悔しさが蘇っていた。
「今振り返ると、甲子園に行けるチャンスだったというのは2年夏の大会だったと思います。あの大会で甲子園にいけなくて、本当に悔しかったなと思っています」
それでも今は独自大会優勝を目指し、調整を続けている。この大会では3年生全員がベンチ入りすることが決まった。
「3年生全員が入ることは初めてなことで、だからこそ勝ちにこだわって優勝をしたいです」
そして改めて高卒プロの思いを口にした。
「プロ野球選手となって、そして活躍して、今まで支えた方に恩返しできたらいいなと思っています。」
静岡商の初戦は7月18日に決まった。8月1日までの決勝戦までの6試合はこなすハードスケジュールとなる。その中で、高田はこれまでの積み重ねを発揮し、高校生ナンバーワン左腕にふさわしい実力を発揮し、頂点を勝ち取る事ができるか注目をしていきたい。
(取材=河嶋 宗一)
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