破竹の勢いで成長続けた149キロ右腕・斎藤佳紳（近大泉州）。内角を突くツーシームにも要注目！
プロ注目の左腕・中尾純一朗とともに近大泉州投手陣の軸として活躍している斎藤佳紳（3年）。最速149㎞/hのストレートとツーシームでインコースを突く投球を武器に激戦区の大阪府でも上位クラスの実力を持っている。
今回は高校で大きく成長を遂げた右腕に球速アップの秘訣や独自大会への意気込みを聞いた。
清水監督からツーシームを教わり投球の幅を広げる
斎藤佳紳（近大泉州）
京都府の北部にある与謝野町で生まれ育った斎藤。かつて投手だった父親に憧れて、小学2年生から岩滝少年野球クラブで野球を始め、3年生から現在に至るまでずっと投手を続けている。
中学では京丹後リトルシニアでプレー。下級生の頃は軟式から硬式への移行に苦戦したが、「学年が上がっていくうちにいい球が投げられるようになって、充実した中学校生活だったと思います」と順調に成長を遂げる。最上級生の時には近大新宮のエースとして活躍している川口朝光と二枚看板を形成していた。
高校進学にあたっては「レベルの高い大阪で野球をやってみたいと思った」とい以降もあり、シニアの先輩も進んでいた近大泉州に入学。「監督の清水（雅仁）先生が難しい野球を教えてくださるので、レベルの高いチームに入れたなと思っています」と満足感の高い高校野球生活を送ることができている。
清水監督の教えの中で最も身になったと斎藤が感じているのがツーシームだ。1年秋から公式戦で投げるようになった斎藤だが、自慢のストレートが1学年上の打者にとって打ち頃の球速であり、打ち込まれることが多かったという。
その時に清水監督からツーシームを教わったことで、インコースを効果的に使えるようになり、投球の幅が広がった。2年春の初戦となった上宮戦ではインコースへのツーシームが見事にハマり、8回2失点の好投。「そこからは一つ上相手でも打ち取れるようになりました」と自信を深めるきっかけとなった。
次の3回戦では同期の中尾が大阪桐蔭を相手に3失点完投。エースナンバーを争うライバルの好投は大きな刺激になったという。
「あの試合は全部が良いように中尾の方向に行っていたので、『何か持っているのかな？』と思いました。僕も負けず嫌いなので、あれを見たら『もっと上に行ってやろう」と思いました。同級生にそういうピッチャーがいた方がありがたいですね。アイツがいたおかげで自分も成長できたと思っています」
1年秋は斎藤が背番号1を獲得したが、2年生になってからは中尾にエースナンバーを譲り続けている。普段はライバル心をむき出しにしており、清水監督によると、隣に並んで投球練習をすることはほとんどないそうだ。こうした関係も両投手が成長する大きな要因となっている。
高校に入学後、球速が10キロ以上アップ
斎藤佳紳（近大泉州）
2年夏は4回戦の大商大堺戦で先発マウンドに上がった。これが大会初登板ということもあり、「地に足がつかないというのが初めてわかった」と緊張から本来の投球ができなかった。6回を投げて自責点1（失点は3）と決して悪い内容ではなかったが、チームは2対5で敗北。これが公式戦初黒星となった。
「自分のせいで負けたので凄く悔しかったです。あの負けを経験して、負けたくないという気持ちが強くなりました」と負け投手になったことで、勝負への想いがより強くなった。
そして、最上級生となった直後に球速が一気に向上。秋季大会前の練習試合では自己最速となる145㎞/hをマークした。中学時代の球速は130㎞/h台前半だったので、高校に入ってから10㎞/h以上伸びたことになる。その理由について、「ウエイトをしたりして、体の使い方を自分で勉強し始めてから速くなりました」と語る斎藤。高校に入ってからより専門的なトレーニングを学ぶことで、快速球を手に入れることができたのだ。
冬場には3年夏での150㎞/h到達を目標に掲げた。ウエイトトレーニングに加え、瞬発力を上げるための短距離ダッシュ、肩甲骨の柔軟性を高めるトレーニングなど様々な努力を重ねてきた。
「真っすぐが垂れなくなったので、低めでもそのままストライクゾーンに行くようになりました。我慢してやった意味があったと思います」と練習の成果を感じている。取材日にはブルペンでコーナーに威力のあるストレートを次々と投げ込んでおり、強豪校相手にも通用しそうな気配を感じさせてくれた。
しかし、新型コロナウイルスの影響で春季大会は中止。練習の成果を発揮する場を奪われてしまった。その後も学校で練習を続けることができていたが、緊急事態宣言が出てからは、実家に帰ることを余儀なくされる。
休校期間はランニング5㎞、シャドーピッチング、腹筋、背筋、空気椅子5分を毎日のノルマとして定め、ストイックに努力を続けてきた。「何のために頑張っているのだろう？」と自問自答した時期もあったそうだが、やると決めたことを欠かすことはなかった。
休校期間にも努力を続けてきたことで、「また一段と球が良くなって、充実した日々を送れていると思います」と全体練習が再開してもブランクなく、今まで以上のボールを投げることができている。18日から開幕する独自大会でも期待が持てそうだ。最後の夏に向けて、斎藤は次のように意気込みを語ってくれた。
「今度は自分が勝利に導きたいと思います。ガンガン行くのが持ち味だと思っているので、元気よくピッチングしているところを見てもらいたいです」
力のあるストレートと内角を突くツーシームを軸に、強気で押していく投球スタイルで、強打者を次々となぎ倒してきた斎藤。初戦の相手は強豪の大阪偕星学園に決まったが、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしたい。
卒業後は大学で野球を続ける予定だ。将来は「アイツが投げたら全部勝てると言われるようなピッチャーになりたいです」と周囲から信頼される投手を目指している。さらにその先はプロという大きな目標もある。将来有望な右腕の今後のさらなる成長から目が離せない。
（取材＝馬場 遼）
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