交流試合に臨む帯広農の大黒柱。井村塁は「甲子園1勝」を目指して夏を駆け抜ける
8月に開催される『2020年甲子園高校野球交流試合』に招待されている帯広農。チームは現在、7月中旬からの各支部予選、そして8月の南北北海道大会に向けて調整を続けている。そこで大黒柱としてチームを支えているのが主将の井村塁だ。
チームの指揮を執る前田康晴監督は井村主将について「主将としての彼は信頼をしております。ここまで選手たちをまとめてくれています」と太鼓判を押している。そんな井村主将に電話取材で話を聞かせてもらい、夏への想いを語ってもらった。
ダルビッシュ投手を参考にスライダーが大きな武器に
井村塁(帯広農)
井村の野球の始まりは中学生から。幕別町立札内中に進学していた井村は、「野球は好きでしたが、小学校の時は部活動がなかったんです。ですが、兄は中学から始めていたこともあったので、中学から始めました」と、野球人生の始まりを語る。
最初はセンターやライトを中心に守り、野手としてプレーしていた井村。だが中学3年生からピッチャーも兼任するようになった。井村は当時について、「ずっと外野をやっていたので、クイックや牽制がわからず大変だった」と外野とは違うピッチャーの動きに苦労した。
その後、高校では農業高校への進学を希望したが、なかでも少しでも高いレベルでプレーすることを考えていた井村。その時、帯広農が秋の全道大会に出場。2回戦で敗退をしたが、全道大会出場を理由に、進学を決心。帯広農での高校野球3年間が始まった。
入部当初は再び外野手としてスタメンを目指した井村だったが、1年生秋に投手へ戻った。「クイックや牽制だけではなく、コントロールも定まらず苦労しました」とピッチャーとして活躍するまでには多くの課題があった。
しかし、その課題を真摯に受け止めたうえで、様々な投手の映像を見て、自身のフォームに取り入れた。特に自身の持ち球の1つであるスライダーは、地元・北海道の日本ハムからメジャーへはばたいたダルビッシュ有の握りをベースに、井村なりにアレンジ。今となっては井村の武器となった。
そしてストレートに関しても、2年生から本格的に投げ始めていくうちにポイントを掴み、現在は130キロ台中盤までスピードが出るようになった。
さらに新チームからは主将の役割も任され、井村はチームの中心選手となった。そして秋は全道大会4試合中3試合で先発登板。2回戦の札幌山の手戦では3失点完投勝利など、チームのベスト4進出に大きく貢献。そして1月24日に選抜に21世紀枠で選出され、1982年の夏の甲子園以来の出場を決めた。
[page_break:この夏は応用ではなく基礎練習が大事になる]この夏は応用ではなく基礎練習が大事になる
井村塁(帯広農)
夢舞台に向けて練習に打ち込むはずだったが、新型コロナウイルスの影響で中止。部活動も自粛せざるを得ない状況になった。この期間中に井村は下半身の強化を重点的に取り組んできた。
「坂道ダッシュをしたりして、下半身のパワーを付けていました。また素振りやティーバッティングをするときでも下半身を使ってスイングすることを意識して練習をしていました」
夏の甲子園を信じて準備をし続けてきた井村だったが、5月20日に甲子園と地方予選は中止。その時は、「自分の中では中途半端な気持ちで、どっちつかずのところがあり、悩みました」と心の内を語った。
仲間たちの支えもあり、ゆっくりと心の中を整理して6月1日から帯広農は練習を再開。再開直後はまとまらない時期もあったとのことだが、北海道の独自大会の開催が2日に決定。そして10日には甲子園で交流試合という形で1試合出来ることが決まり、チームのモチベーションは上がってきた。
井村本人も「予想外のことで嬉しい気持ちでいっぱいでした」と喜びを口にする。そして6月17日に2020年初めての練習試合も行い、「立ち上がりに崩れてしまったこと。そして肘が下がりコントロールがばらけてしまった」ことを課題に挙げたが、一方でボールのキレが増したことに手ごたえを感じていた。
7月18日から開催される令和2年夏季北海道高等学校野球大会・北北海道大会 十勝支部予選。残りの期間について、井村主将は次のように語る。
「応用ではなく基礎練習が大事になってくると思いますので、基礎を中心に組み立てて、それを試合で発揮したいです。また、1年生も入部して人数が増えましたので、改めて徹底力や団結力は磨いていこうと思います。」
そんな井村主将に、夏にかける想いを最後に話してもらった。
「甲子園での1勝がチームでの目標でしたので、そのためにもまずは北北海道大会で優勝しないといけないと思います。また、甲子園ではお客さんはスタンドにいませんが、周りの方への恩返しと言いますか、ここまで多くの人に支えてもらったので、勇気を与えられるような全力プレーで勝ちたいと思います」
主将としてチームをまとめ牽引する、井村の最後の夏はもう目の前だ。
(取材=田中裕毅)
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