Interview

目指すは高校通算60本塁打。阪本和樹(松阪商)の本塁打量産をもたらした打撃技術論

2020.06.24

 今年の高校生野手では明石商来田涼斗や、東海大相模西川僚祐などスラッガーが揃っている。各地の独自大会でどのようなバッティングを見せるのか。注目が集まる。その中で高校通算58本塁打をマークしているのが松阪商阪本和樹だ。

 松阪商では1年生の夏からベンチ入りを果たし、4番としてチームの打線の中心を担うスラッガーだ。そんな阪本に電話取材で話を聞かせていただき、ここまでの歩みや夏への意気込みを聞かせてもらった。

 前編では4番として活躍するまでを振り返ったが、今回は新チーム以降の阪本の成長を見ていく。

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三重に現れた高校通算58本塁打のスラッガー・阪本和樹(松阪商)はなぜ本塁打を量産できるようになったのか?【前編】

猛練習の中に質を求め、打撃開花

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ティーバッティングの様子 ※写真提供=松阪商野球部

 阪本は2年夏で逆方向へのバッティングの技術を身につけていた。
 「その時までは引っ張りが得意だったんですが、少し調子を落とす時期があって。その時に『右方向から打ってみろ!』ってアドバイスをもらって。その通りにセカンドゴロを打つイメージで取り組んでいたんですが、次第に打球が飛ばせるようになって、ホームランを打てるようになりました」

 北村監督は「逆方向にも大きいのを飛ばす力は持っていた」と阪本のバッティングを分析しているが、本人の中で大事にしているのはヘッドを走らせることだった。

 「足を上げるタイミングを遅らせたりもしますが、バットを外側から回してミートさせる感じです。普通はインサイドアウトでバットを使いますが、僕の場合は身体の大きさがあるので、外側から出してヘッドを走らせてミートさせることで、ボールに負けないですし大きい当たりを飛ばしています」

 自分が主力チームになると、ホームラン量産態勢に入った。それは広角に長打が打てるようになったこともあるが、質の高い練習を積みかねたことも関係している。
 「ピッチャーのレベルも関係していると思いますが、居残り練習で人一倍素振りだったり、バッティング練習をしたりと練習を積み重ねました」

 バッティングにまだ自信を持てなかった中学生の時のように、もう一度振り込んで打撃に磨きをかけた阪本。だが、その時と違うのは具体的なイメージの持ち方だ。
 「300とか400回ではなく150回とか少ない回数ですが、相手投手の投げるボールまでイメージして、1回1回スイングをしています。ですので、1回のスイングに対しての意識はかなり高くもってやっていると思います」

 相手投手のイメージにより具体性を持たせるべく、相手投手の映像まで見てフォームやボールの軌道までイメージを膨らませる徹底ぶり。そうしたところからも阪本の意識の高さ、考える力を感じさせるが、バッティングフォームはどうなのか。今意識しているポイントを解説してもらった。

 「僕の場合は遠くに飛ばす意識はあまり強く持っていないです。その代わりにバットの芯でしっかりボールを捉えて振り抜く。とにかくフルスイングをすることを徹底しています。これは冨山先生に2年生の秋ごろに『打球は気にせずに、フルスイングをしろ』と言われてからですが、おかげで調子は上がってきたんです」

[page_break:個人では高校通算60本塁打。そして三重大会優勝を目指したい]

個人では高校通算60本塁打。そして三重大会優勝を目指したい

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阪本和樹 ※写真提供=松阪商野球部

 北村監督は、新チームからの阪本の変化を感じ取っていた。
 「元々考えながら練習できるので、あまり細かなことを言わずに来ましたが、勝利への意識が高まってからはしっかり振って捉える打球が増えました。好投手相手にも打ち損じが減って、一段階上がった感じですね」

 好調の阪本を擁する松阪商は秋季大会の地区予選を勝ち抜くと、県大会でも順調に勝ち上がる。準々決勝・菰野戦では1点を争うゲームとなったが、3対2で勝利しベスト4まで勝ち上がった。

 東海大会出場まであと1勝と迫ったが、準決勝の津商、そして3位決定戦の三重の前に敗れ、東海大会出場を逃した。 「ベスト4の中で唯一東海大会に行けず、悔しい想いをした」という阪本だが、一方で充実感もあった。

 「最上級生で責任もありましたが、周りの人から注目されていたのはわかっていたので、弱いところは見せられなかったです。また、凄いと思われているからこそ、それ以上の結果を残したいと思って高いモチベーションで過ごせたので、密度の濃い時期だったと思います」

 今年のオフシーズンは今まで以上に甲子園を意識して練習ができた。厳しい練習に対しても全員で乗り越えていく雰囲気を阪本は感じている中で、冬場は下半身の強化を重点的に取り組み、春を待った。しかし、新型コロナウイルスの流行で春の大会は中止。練習も自粛となり、冬場の成果を発揮する舞台が夏に持ち越しとなった。

 阪本は自粛期間中に自身のフォームを見直し、「パワーが必要だ」と分析。外で思い切り練習ができない状況も上手く使って、トレーニングと食事に力を入れて、身体づくりに徹した。補食をいれて1日6食にするなど取り組みが実を結び、体重は5キロ増。練習再開後のバッティングで、「打球の速さや伸びが違う」と手ごたえを感じている。

 5月20日に夏の甲子園が中止となった際は、「気持ちが下がることがあった」と振り返りながら、「野球が出来ることへのありがたさや感謝の気持ちをもてるようになった」と前を向いて練習に取り組んでいる。

 三重県は独自大会が、7月11日から開幕する。「個人としては通算60本塁打を目指していきますが、チームは優勝目指して今練習をやっています。そこを目指しながらですが、最後は3年生全員笑顔で終わりたいと思います」と独自大会へ想いを語った。

 指揮官の北村監督は、「自粛期間がなければ、三重県最多の山本竜也さん(久居農林)の72本を超えていたと思います。ただ60本は十分届くと思いますので、夏は良いところで打ってくれればと思います」と語る。

 三重の高校野球史上トップに入るスラッガーは最後の夏に大暴れし、三重から全国へ一気に名を轟かせる。

(記事=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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