Interview

独立からプロへ進んだ期待の星!優勝の歓喜、そして壁を痛感した3年目右腕・伊藤翔(埼玉西武ライオンズ)【前編】

2020.06.18

 オリックス・山本由伸都城出身)、西武・今井達也作新学院出身)など楽しみな投手が揃う1998年世代。その中で独立リーグを経由してプロ入りしたのが9891横芝敬愛出身)だ。

 高校時代は横芝敬愛で3年間プレーするも、最高成績は2年生の夏の千葉大会の4回戦。甲子園に進めぬまま高校野球を終えたが、卒業後に進んだ四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスで才能を開花。

 先発ローテーションの一角として1年間活躍し、独立日本一を経験。2017年のドラフトで埼玉西武ライオンズに3位指名を受けて、晴れてプロ入りすると、1年目から1軍デビューを果たし、中継ぎとしてチームの優勝に貢献した。

 しかし2年目はプロの壁にぶつかり、勝負の3年目となる。苦楽を知った20歳の右腕の今に迫った。

危機感をもって始まり、優勝を経験して終えたプロ1年目

独立からプロへ進んだ期待の星!優勝の歓喜、そして壁を痛感した3年目右腕・伊藤翔(埼玉西武ライオンズ)【前編】 | 高校野球ドットコム
インタビューに応じる伊藤翔

 キャンプではA班入り、そして開幕一軍を勝ち取るほどアピールを続けた伊藤だが、レベルの高さを肌で感じていた。

「プロに入ってすべてを磨きました。ストレート、変化球すべてです。バッターのレベルも違いますし、本当にルーキーの時はA班(1軍)スタートから始まって、周りの投手陣を間近で見ててそのレベルに達していないのを肌で感じて『このままじゃ絶対にダメだと』と思いましたので、1から全部を鍛え直しました」

 プロに入った投手ならば誰もが感じる壁。それでも独立リーグ時代から継続してきたキャッチボールを大事にしてきた。

「キャッチボールはとても大事で、質の良いボールを投げるために、短い距離のキャッチボールを重視しています。
 遠投も大事ですが投手は決められた距離(18.44メートル)を投げますからそこだけでもちゃんとしていれば分かることがあります。キャッチボールは平坦な場所、傾斜な場所で投げるようにします。平地でも、傾斜でも分かることがありますので、キャッチボールで現在の調子が確認する上でも行っています」

 伊藤の最大の長所は再現性の高さ。20歳ながら完成度の高い投球で開幕一軍入りを果たすと、4月11日の埼玉西武戦で一軍初登板。8月29日の東北楽天戦では中継ぎとしてプロ初勝利を達成した。

 30日も連日の勝利投手。10月3日は千葉ロッテ戦で先発初勝利を挙げた。独立リーグからプロ入りした選手としては上出来の内容だ。1年目をこう振り返る。

 「正直嬉しかった気持ちもあります。中継ぎで転がってきた勝利でもあったので、入団してから先発している中で、中継ぎではありましたが勝てたのは嬉しかったです。けど、心のどこかで先発で勝ちたかったと思っていたので、10月にゲームを作って勝てたのは嬉しかったですね」

 またプロ1年目にリーグ優勝を味わう。独立リーグに続いて2年連続で優勝を経験した。

 「優勝の雰囲気を味わえるものではないので、1年目で味わえたのは嬉しかったですし、『プロ野球で優勝するのは凄いんだな』と思いました」

 プロ1年目は16試合を投げ、3勝0敗、防御率2.73と好成績を残し、年俸も220万アップの820万。翌年に期待をもたせた。

[page_break:スタートで出遅れ、苦しさを味わった2年目]

スタートで出遅れ、苦しさを味わった2年目

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練習中の伊藤翔

 しかし2年目、伊藤にとって試練の2年目となった。1軍で登板した試合は僅か6試合。2軍でも13試合に登板して3勝7敗に終わった。この結果に伊藤も悔しさをにじませる。

 「全部が上手くいかなかったです。コンディションの調整不足でキャンプから出遅れてしまい、そこで焦ったことでその後の調整が上手くいかない。1年目にできていたことが出来なくなっていました」

 伊藤にとって「苦しかった」という2年目が終わり、3年目に巻き返しを図るべく、秋のキャンプやウインターリーグに参加。この時にテーマにしたのがストレートだった。

 「ファームにいた時からなのですが、コーチの方と一緒に、質のいいストレート、キレのいいストレートを最大の課題に掲げて取り組んできました。自分の中では、秋季キャンプもウインターリーグも良い感じで投げられたと思っています」

 阪神の岩貞祐太や、東京ヤクルトの原樹理などはウインターリーグをきっかけに活躍した。そのウインターリーグで伊藤は4試合に登板して2勝1敗。防御率は2.14をマークして全体4位の好成績を残した。確かな手ごたえを掴み、2度目のオフシーズンに突入した。

 ここで、徳島インディゴソックス時代では選手と監督の師弟関係として、お世話になり、世界5か国でプレーをした経験を持つ養父鉄氏とともにアメリカへ。ストレートにさらなる磨きをかけるべく、海外合宿で己を鍛え上げた。

 「ストレートを磨く。そして、オフシーズンの間に身体を大きくしようと考えていたこともありまして、アメリカへ行って合宿をすることを決めました。メジャーリーガーの方々と練習をして身体の大きさ、芯の太さを肌で実感できて、良い刺激をもらうことが出来ました」

 前編はここまで。次回はアメリカ合宿で、伊藤の中で起きたトレーニングへの意識の変化。さらにストレートを投げ込むときの意識などを語ってもらった。後編もお楽しみに!

(記事=田中裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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