巨人期待のシンデレラボーイ・戸郷翔征(聖心ウルスラ出身)。大エースの学びを実践し、二桁勝利を狙う
ドラフト6位ながら連覇を狙う巨人の先発ローテーションとして期待をかけられる投手がいる。その名は戸郷翔征(聖心ウルスラ出身)。
聖心ウルスラ高校時代、当時2年生だった2017年夏、エースとして甲子園に出場。初戦の早稲田佐賀と試合で先発をすると、11奪三振2失点で完投勝利。続く2回戦の聖光学院に敗れたが、力のあるストレートと切れ味鋭いスライダーで全国デビューを果たした。
3年生の夏は宮崎大会ベスト8で姿を消し2年連続での甲子園とはならなかったが、ドラフトでジャイアンツから6位指名を受けると、9月に1軍デビュー。チームの5年ぶりのリーグ優勝が懸かる大事なマウンドで5回途中2失点と好投。クライマックスシリーズでも登板するなど、飛躍のキッカケを掴む1年目となった。
6月9日の横浜DeNAベイスターズ戦で6回投げて2失点と好投。今後の巨人の将来を担うであろう右腕はどのようにして、現在の地位を確立したのか。
一躍、評価を高めた高校日本代表との一戦
戸郷翔征投手
2年夏に甲子園を経験。最終学年では140キロ後半まで速くなり、九州地区を代表する速球派右腕へ成長した戸郷。その戸郷がクローズアップされたのは宮崎県選抜として出場した高校日本代表との一戦だ。
戸郷はこの試合へ向けて、「どうやって抑えるか考えて練習をした」と休まずに練習を続け闘志を燃やしていた。そして試合では2番手としてマウンドに上がると、自己最速の149キロを計測するなど同世代相手に力で勝負。
さらに130キロ後半のスプリット、130キロ前半のスライダー。そして藤原恭大から三振を奪った130キロ前半のカットボールを駆使して9奪三振を記録した。当時の選手たちも「カットボールが素晴らしい。大学代表の投手と変わらないものがあった」と絶賛の声を寄せた。
しかしジャイアンツといえば、球界のエース・菅野智之をはじめとした超一流の選手が集まるスター軍団。戸郷も、「周りには一流の選手たちばかりで、壁はかなりありました」とレベルの高さを肌で感じていた。
それと同時に「1軍で活躍されるような有名な方々ばかりでしたので、その中でプレーできるのは嬉しかったですね」と厳しい環境で戦えることに胸を躍らせていた。
そうした中で、戸郷の1年目は2軍からスタート。シーズンの途中から先発ローテーションの一角を担い、先発として8試合に登板するなど11試合で4勝1敗。防御率3.00、42回を投げて44奪三振の数字を残し、9月に1軍デビューを果たす。
巨人の高卒1年目投手が先発として1軍のマウンドに上がるのは17年ぶりの出来事だったが、戸郷の中で考えていたことは意外なことだった。
「1番はチームの優勝を目標に投げていました。ただ、いかに自分をアピールして2年目に繋げるか。そのことも考えながら、全力で投げていました」
戸郷の初マウンドは自己最速となる154キロを計測するなど5回途中2失点。勝ち星こそつかなかったが、チームは5年ぶりの優勝。1軍初登板の日に歓喜の輪に加わった。
その後、9月27日の横浜DeNA戦で5回から登板すると、4回を無失点で1軍初勝利。阿部慎之助2軍監督の引退試合で記念の1勝を掴み、クライマックスシリーズでも6年ぶりとなる高卒1年目の投手の登板を果たしたのだった。
[page_break:山口俊から学んだ脱力の重要性を実践し、今年は二桁勝利を]山口俊から学んだ脱力の重要性を実践し、今年は二桁勝利を
戸郷翔征投手
チームは日本一を掴むことはできなかったが密度の濃い1年目を終えた戸郷は、オフシーズンは昨年まで巨人に在籍した大投手・山口俊(ブルージェイズ 柳ヶ浦出身)とともに過ごした。
「一緒に過ごさせていただき、1年目のオフでわからないことが多かったので、とにかくいろんなことを吸収できるように過ごしていました」
その中で戸郷が学んだことが脱力の重要性だった。
「シーズンは長いので、全て全力で投げてしまうと、どうしても体力が持ちません。ですので、少ない力で抑えられればと意識はしているんですが、山口さんは少し脱力して投げているので、参考にしました」
少しずつではあるが、力を入れずともボールに力を伝えられている手ごたえは戸郷の中でもある。最大の武器である強いストレートは、さらに磨きかかることになるだろう。
戸郷は、そのストレートを磨くことをプロに入ってからも念頭に置いて練習をしてきた。そのために下半身をウエイトで鍛えてきたが、投球フォームの中でも下半身の使い方を意識してきたことが、ストレートの強さに繋がっていた。
「僕自身、野球は下半身から動くものだと思って意識はしています。その中で下半身を使って投げる感覚が欲しかったので、踏み出す足の使い方は大事にしています。
着地というのはボールに力を伝えられる瞬間なので、そこで地面から力をもらえるように踏み込めるように意識をしています。ただ、どこで着地するなど、細かな部分までは考えてしまうと、上半身が突っ込んでしまうので、深くは考えないようにしています」
そして戸郷といえば、カットボールやスライダー。そしてスプリットといった高速変化球も武器の1つだ。これらを操るために戸郷が意識していることも聞かせてもらった。
「落ちる幅などを考えるとキリがありませんので、とにかく真っすぐと同じで思い切り腕を振ること。そして出来ることならストレートと近い球速、同じ軌道から少しでも変化してくれるのが理想ですね」
近年の野球界では高速変化球が流行しているが、そこで大事になるのがどれだけストレートに寄せられるか。戸郷もそこを意識しているが、実現させるために取り組んでいることはイメージトレーニングだった。
「『こういう軌道でいったらいいな』と思いながら投げている感じですね。ブルペンで他の投手を見ている時でもいろんなイメージを沸かしながら投げるようにしています」
2020年シーズンからは背番号「13」へ変更。宮本和知チーフ投手コーチを筆頭に先発・中継ぎで活躍した多くの投手が背負ってきた「13」を高卒2年から背負うところに球団の期待の高さが伺える。
そんな戸郷は「1番の持ち味であるストレートだけでは勝負できないので、変化球がどれだけ上手く使えるかだと思います」と2年目の課題を明確に語った。その上で今シーズンの目標を最後に聞いた。
「2桁勝利は目指しています。そのためにも1勝ずつ積み重ねていければと思っています」
チームのリーグ連覇、そして日本一。若手最注目右腕・戸郷の2年目はどんな成績を残すのか。高校日本代表との一戦のように、力で圧倒する戸郷のピッチングを楽しみにしたい。
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