目指すは群馬の山岡泰輔。心技体を成長させた清水惇(安中総合)のプロセス【後編】
今年の群馬県も健大高崎、桐生第一、前橋育英といった強豪私学が注目される。
今年はその強豪私学が恐れる投手がいる。それが安中総合の清水 惇だ。中学時代は少人数の野球部ながら選抜チームで好投を重ね、中学軟式の日本代表に選ばれた実績を持つ。
172センチと小柄ながら140キロ台の速球とキレのあるスライダーを武器にする好投手は群馬県でもそうはいない。そんな清水の成長の軌跡を知るべく、電話取材を行った。
後編となる今回は、成長の中で参考にした投手や将来のビジョンについて語っていただいた。
山岡泰輔のフォームだけではなく、トレーニングも参考にした
清水惇(安中総合)
トレーニング期間に入り、清水はある投手の映像を見て、自分が目指す投手像が決まった。それが山岡泰輔(瀬戸内–東京ガス–オリックス)だった。172センチ68キロから150キロ前後の速球と切れ味鋭い変化球を次々と投げ込む山岡の姿は強く印象に残った。
「自分の身長と体重は170センチ72キロ。山岡さんと体型が似ていたので、目指すべきタイプかなと」と心に決めた清水は動画を見てフォームを真似るだけではなかった。
山岡が自身のSNSにあげていたトレーニング動画などを見て、自分に合うものであれば、取り入れた。また山岡の同僚の山本由伸(都城出身)のトレーニング動画を見て研究を重ねてきた。
オリックスが誇るダブルエースの姿を見て学んだことは投手として能力を高めるためには、全身のいろんな箇所を鍛えていくことが必要だと感じた。
「肩甲骨、胸骨など、あらゆる関節、筋肉を鍛えていくことが大事だと学び、投球にも良い影響を与えています」
投手として必要なことを学べると、日々の練習もさらに目的意識を持って取り組むことができた。
今年に入ってからの投球練習では、昨秋の練習試合で計測した最速142キロのストレートもさらに威力が増した実感を持っていた。
成長の舞台を試せる舞台を待ち望んだ中、新型コロナ感染拡大の影響により起こった部活動の長期休部。そして群馬は公式戦が中止。それでも清水は前向きに取り組んでいた。
この期間、午前7時には起床し、午前中は学校の課題を行い、涼しくなった時間帯からトレーニングを行い、お風呂に入った後は柔軟体操を行うなど、計画性を持ってトレーニングを行い、そして夜も学校の課題を行った。
この生活に飽きないよう、練習の合間に趣味の時間を過ごし、メリハリが効いた生活行動をしてきた。この休部期間は自主性を高めるきっかけとなった。
「活動ができていたときから、投手メニューは個人で任されている部分があって自分なりでやっていたのですが、この期間でトレーニングに対する考え方ももっと深まりましたね」
指揮官を驚かせた清水の将来のビジョン
清水惇(安中総合)
活動もできない中で甲子園中止が決まったが、「自分はこれからも野球を続けるので、そのことを見据えて練習に取り組んできました」と前向きに取り組んできたが、それでも夏の大会は特別なものだと語る。
「僕は野球を続ける側の人間ですけど、高校で野球を終える人がほとんどです。そういう方にとって野球人生の締めくくりになる場だと思いますし、特別な大会になる。それは僕も大事な大会になると思っています」
そしてこういう時期だからこそ気づいたことがある。当たり前にあった練習や試合ができたことは幸せだったこと。
「野球を始めた時から当たり前のように試合、練習をしてきました。しかし今、こういう時期になって、多くの大人の方々の支えによって実現しているんだなと実感しています」
今は群馬県も独自大会へ向けて検討を続けているが、高野連の方々へ配慮のコメントを出せる清水は非常に大人びている。
大人びたということに関して、吉田監督はこんなエピソードを明かしてくれた。
「先日、学校で彼と面談する機会がありました。その時、驚かされたのはこんなに先のことまで見据えて、ビジョンを組んでいたことです。
たとえば、大学に進んだ場合、この時期まで、この取り組みをして、ここまで成長するんだという計画内容がとても具体的なんです。
そうした姿を見れば、彼はどの舞台に進んでも成長ができる人間性を持っています。上背が低いので投手として伸びしろがない見方があるかもしれません。しかし私はもっと成長すると思っています。そういった彼の人間性を高く評価し、指導していただけるチームに進んでほしいと思っています」
清水が将来的に目指すストレートの球速は150キロ。アベレージも140キロ中盤にいきたいと考えている。秋よりも成長した姿を見せるために心技体を磨いてきた。
その発表の場が訪れることを期待したい。
(記事=河嶋宗一)
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