Interview

少人数の野球部から軟式の日本代表へ。強豪私学が恐れる好投手・清水 惇(安中総合)の軌跡【前編】

2020.06.10

 今年の群馬県も健大高崎桐生第一、前橋育英といった強豪私学が注目される。

 その強豪私学が恐れる投手なのが安中総合清水 惇だ。中学時代は少人数の野球部ながら選抜チームで好投を重ね、中学軟式の日本代表に選ばれた実績を持つ。
 172センチと小柄ながら140キロ台の速球とキレのあるスライダーを武器にする好投手は群馬県でもそうはいない。そんな清水の成長の軌跡を知るべく、電話取材を行った。

貴重な経験となった軟式の日本代表

少人数の野球部から軟式の日本代表へ。強豪私学が恐れる好投手・清水 惇(安中総合)の軌跡【前編】 | 高校野球ドットコム
U-15代表の選手と一緒に集合写真をとる清水惇(安中総合)

 まず清水の歩みを振り返ると、幼稚園年長から野球を始め、小学4年から投手を始める。当時について清水は「人よりまあまあ肩が強くて、ソフトボールも小学校6年で60メートルぐらいでした。でも自分よりも肩も強くて、身体が大きい選手は多くいました」と振り返る。
 高崎市立長野郷中時代は全学年が揃わないと試合に出場にできない時期もあり、いつもギリギリの人数で試合に出場をしていた。そのため投手の清水は完投することも多く、「よく投げられたなと思います」と笑う。

 清水の力を持ってしても、チームはあまり勝てなかった。ここまでの歩みを振り返ると、軟式の日本代表に入ることは予想できない。きっかけは地区選抜、県選抜の練習に呼ばれ、対外試合で好投を見せたことが大きかった。追加選手として招集され、日本代表入りが決まった。

 喜びもつかの間、周囲のレベルの高さに圧倒された。
「ほかは名門の中学校やクラブチームでやってきている選手ばかりで、最初はついていけるかなと不安に思いましたね…」
 その中で最も驚かされたのは内山壮真(星稜中-星稜)だったという。
「ずっと捕手やっていたんですけど、ある日、野手練習でショートを守っている日があったんですけど、その時の動きやグラブ裁きの華麗さは今でも覚えています。打撃もすごかったですし、壮真(内山)は誰が見てもすごい選手だと思います」

 そうした選手たちのパフォーマンスに刺激を受けながら、吉田はアジア大会優勝を経験。一緒にチームメイトになった選手と仲を深めたり、有意義な代表経験となった。

[page_break安中総合進学の決め手は主将だった兄の存在]

安中総合進学の決め手は主将だった兄の存在

少人数の野球部から軟式の日本代表へ。強豪私学が恐れる好投手・清水 惇(安中総合)の軌跡【前編】 | 高校野球ドットコム
清水惇(安中総合)

 清水の評判は日増しに大きくなり、群馬の強豪校から誘いがくる。しかし、清水は兄の大さんがいた安中総合の進学を決めていた。
「やはり兄の存在は大きかったですね。2学年上なんですけど、兄と一緒に野球をやりたいと思っていましたから」
 

 大さんは、チームメイト、チームを率いる吉田省吾監督からも、大きな信頼を寄せられていた。吉田監督は当時の大さんの人間性の高さ、成長ぶりを振り返る。
「お兄さんは、かゆいところに手が届く性格を持った選手です。これは高校1年生の時のエピソードなんですけど、本校の練習環境は他部活との共用で、ボールを他部活の練習場に行かせように配慮しなければなりません。彼は我々に指示されなくても、ボールを行かせないように配慮ができる選手でした。野球の取り組みも素晴らしく、メキメキと成長した選手でした。

 当初は高校でも野球を続けるかどうかの選手だったらしいのですが、本当に成長しましたね。そういう姿を最も間近でみていたのが弟・惇だったんです。それでうちに興味を持ってくれてグラウンドにも足を運んでくれたんです」

 近年、着実に実力をつけている安中総合だが、弟の入学は驚いたという。
「高崎出身の清水兄弟ですが、我が校までは結構遠いんですよ。近くにある強い学校はもっとあるんです。それでもきてくれたのは驚きました。実際に入ってみて、実力だけではなく、人間性も素晴らしい選手でしたね」
 そして1年夏からベンチ入りし、兄と同じ公式戦登板も経験した清水は1年秋からエース格へ成長し、順調にステップアップをしていった。

 2年生には140キロに達し、県内でも指折りの速球投手となり、チームの中でも中心人物となっていた。清水は兄の大さんと違い、はっきりと主張する性格だという。
「兄は、自分を殺して周りを立てることができる選手でしたので、主将に適任の選手でありました。ただ、プレイヤーとして活躍するには、それではいけません。それだけではだめだよと指導していました。

 一方、弟は真逆で、自分の活躍がチームの勝利に関わる考えでしたから、ある意味、投手らしいですよね。また勝利のために周りへの要求が少なく、言葉が足りないところがありましたので、そういうところは指導しました。2人共、すれたところがない本当に良い性格を持った選手です」

 そして2年秋、エースとして臨んだ清水は3回戦まで勝ち進むが、3回戦の桐生第一戦に打ち込まれ、試合に敗れ、長い冬に入る。この試合を振り返って、「コントロールが甘かったですし、甘く入ったところを打たれてしまいました」と制球力を課題に語った。

 投手としてレベルアップするために、2年冬の練習に入ったが、この期間は清水の心身を大きく成長させる期間となった。

 後編では一冬での取り組みや夏へ向けての意気込みを語っていただきました。(続きを読む)

(取材=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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