野球を超え、スポーツの価値を高める旅へ 東京ヴェルディ・バンバータアカデミー統括ヘッドコーチ 島田 達二氏(元高知高監督・侍ジャパンU-18代表コーチ)独占インタビュー
2020年5月22日(金)、驚愕のプレスリリースが「読売クラブ」からの流れをくむサッカー界の超名門・東京ヴェルディからなされた。リリース名は「ベースボールチームアカデミー統括ヘッドコーチに島田達二氏就任のお知らせ」である。
その内容は2018年よりビーチサッカー・バレーボール・フットサル・トライアスロンなど様々なスポーツクラブを運営する一般社団法人・東京ヴェルディクラブの一員として2018年に業務提携を結んだ軟式野球チーム「東京ヴェルディ・バンバータ」が運営する学童軟式野球チーム「東京ヴェルディ・バンバータJr」に加え、軟式・硬式の2チームを今年から開設するアカデミーカテゴリーを島田氏が統括するというものだ。
では、過去に高知(高知)部長、高知中監督を歴任し、2004年12月から2018年7月までは高知(高知)監督として和田 恋(東北楽天ゴールデンイーグルス)、公文 克彦(北海道日本ハムファイターズ)、木下 拓哉(中日ドラゴンズ)らのプロ野球選手を輩出。さらに2006年・明治神宮大会優勝。2013年センバツベスト4。
2013・2015・2019年と侍ジャパンU-18代表コーチも務めた知将は、新たな道で何を探ろうとしているのか?高知時代から氏を長らく取材する寺下 友徳が、正式契約のため南国高知を後にする直前の島田氏から独占電話インタビューで聴いた。
「スポーツをする意味や価値」を見出すために

東京ヴェルディ・バンバータアカデミー統括ヘッドコーチに就任した島田達二氏
――実は今年3月末で高知を退職されていた島田コーチ。高校野球・四国野球界にとって衝撃の東京ヴェルディ・バンバータ入りになりますが、その経緯についてまず教えてください。
島田 達二 東京ヴェルディ・バンバータアカデミー統括ヘッドコーチ(以下:島田コーチ まずは野球界だけでなく、スポーツをする子どもたちの人口が減少していく中で、トップアスリートを目指すだけでなく、野球だけでないスポーツをすることの意味や価値を見出してあげること。そうすればスポーツをする子どもたちも増えていくし、スポーツ人口も増えていく。2018年の夏に高知高校の監督を退き、高知県で子どもたちと関わる活動もしていくうちに、僕の中でそういった方向性が見えてきたんです。監督を退いたことによってこれまでの自分の視野の狭さにも気付きました。
そういった意味で東京ヴェルディさんは野球やサッカーなどで子どもたちを取り合うのではなく「どんなスポーツをやってもいい」という考え方。その中でうまい子は上を目指すし、それ以外でも様々な選択肢をもってやろうとしている部分に魅力を感じました。
そんなこともあって、最初は僕の方からクラブに逆オファーをかけました。
――今年からU-15年代で軟式・硬式の2チームをスタートさせた東京ヴェルディ・バンバータさんの取り組みは私も興味深く拝見していましたが、それはますます衝撃の出来事ですね。正直、東京ヴェルディ・バンバータ側の反応はどうでしたか?
島田コーチ 最初、向こうはこう思っていたと思います。「監督辞めてここに逆オファーしてきたということは、なんか(不祥事を)起こしたんちゃうんか?」って(笑)。普通はそうなりますよね。いきなりメールして、その内容が「元:侍ジャパンU-18代表コーチ」ですから。実際は不祥事も何もないんですけど(笑)
――そうですね(笑)。そのような経緯を経て東京ヴェルディとお話をされた際の率直な感想は?
島田コーチ 東京ヴェルディさんの環境は自分が当初想像していたよりはるかに上でした。高校野球の指導者として勝利を目指すと同時に取り組んできた育成の部分、人間形成についても、ヴェルディさんはうまくなくてもスポーツの価値を伝えていました。1つ例をあげれば「もし野球がダメでもサッカーをしていこう」というような、いろんな可能性の中で子どもたちのことを教えていけそうな状況がある。そこがおもしろいと感じました。
――その意味では軟式・硬式の両方でU-15チームを有している東京ヴェルディ・バンバータは、高知中で軟式・高知高で硬式を指導された島田コーチが引き出しを発揮できる環境だと思います。
島田コーチ そうですね。硬式と軟式を両方指導した経験がある指導者はそんなに多くはないので、がんばりたいですね。