Interview

最速150キロ右腕・森木 大智(高知2年)「波瀾万丈」の1年を経て熟成の時へ!

2020.04.24

 高知中で中学野球史上初の「150キロ」をマークし2019年4月に高知へ内部進学を果たした森木 大智。彼の言葉を借りれば「良い思いも悪い思いも経験して、高校野球の難しさを思い知らされた1年」。すなわち「波瀾万丈」の4文字に尽きるだろう。
 では高知中時代から指導する濵口 佳久監督いわく「ボールが軟式から硬式に変わり中学時代と違って簡単に抑えられない中で、自分を見つめなおすことができた」森木の1年とはいかなるものだったのか?2021年ドラフト候補・黄金世代のけん引車たるべき男の「過去・現在・未来」について追ってみよう。

「難しさを思い知らされた」2019年

最速150キロ右腕・森木 大智(高知2年)「波瀾万丈」の1年を経て熟成の時へ! | 高校野球ドットコム
森木 大智

 「自分の甘さ」「自分に厳しく」。この一年間を振り返る約20分間のインタビュー中、森木 大智は何度もそんな言葉を繰り返した。

 2019年・高校入学から夏までの勢いは華々しいものだった。4月13日の八幡浜(愛媛)戦で練習試合初登板を果たすと、5月の四国大会で公式戦初登板。同月の高知県総体準決勝・高知商戦では済美安樂 智大(東北楽天ゴールデンイーグルス)の1年夏の最速に並ぶ「148キロ」を叩き出すと、7月の選手権高知大会でも148キロを連発。特に「自分自身も落ち着いていたし、いつも通り投げることができた」準決勝・高知商戦での4回無失点リリーフは「圧巻」の一言だった。

 しかし……。準決勝翌日「思ったより登板が早くなったことでの準備不足もあったし、相手の3年生も死にものぐるいで襲いかかってくる感じはして、その気迫に負けないようにやっていたのですけ、それを気にしすぎしまって、自分のプレーができなかった」明徳義塾戦での高知大会決勝戦敗戦を境に、状況は一変する。「じん帯がはく離する一歩手前だった」(濵口 佳久監督)右ひじを休めるため、新人戦では野手に専念。その後、右ひじは回復したものの、秋季県大会での登板は準々決勝・高知中央戦での打者1人に留まった。

 「メンタル面が本当にチームとしても、個人としても『甲子園に行ける』と過信している部分がありました」と当時を振り返る森木。ただ、彼らには「全国レベル」を体感できる舞台がもう1つ残っていた。11月16日・高知学園の120周年記念招待試合として招かれたのは翌年のセンバツ優勝候補にもあげられていた東海大相模(神奈川)。右ひじも完全に癒え、先発した森木は、加藤 響山村 崇嘉西川 僚祐といった全国トップレベルのスラッガーたちと対峙。「下半身の弱さを感じた」ことが、彼に冬へのモチベーションを与えた。

[page_break:冬の成果は着実に。苦難を超えての「熟成」へ]

冬の成果は着実に。苦難を超えての「熟成」へ

最速150キロ右腕・森木 大智(高知2年)「波瀾万丈」の1年を経て熟成の時へ! | 高校野球ドットコム
森木 大智

 それから半年。ここまで下半身の強さを求めた冬の成果は着実に出ている。まずは「最初は自分の体重×2倍。次は身長-100=理想体重×2倍の2回以上」と濵口 佳久監督がチーム全体に課したスクワッド1つとっても夏から体重4キロ増の184センチ86キロで190キロをクリアできるように。「軽く投げてもボールに伸びが出てきた」と森木本人も実感するストレートは3月の紅白戦で7割程度の力でも146キロに到達。さらに緩急差を付ける変化球としてパワーカーブ習得に執心した結果、指揮官も「高校野球に必要な完投能力・連投能力に制球力を備えつつある」と成長の跡を認めるまでになってきた。

 プロ野球のキャンプが行われる地の利も最大限利用した。2月には最も学校に近い埼玉西武ライオンズの春野キャンプに足を運び「身体も大きいし、ストレッチなどの意識も高い。そして上のレベルに行くには基本が大事」をつぶさに観察した上で、練習後のストレッチにもより時間をかけるようになった。

 よって自身の視野も大きく広がることに。一例をあげれば四国中学硬式屈指の二刀流だった髙橋 友(182センチ72キロ・右投左打・生光学園中ヤング<徳島>出身)ら32名が入学した1年生たちに対しての接し方。取材日のトレーニング1つとっても「良い選手がいっぱいいる。固定概念をなくして、後輩の実力を認めていかないと幅が広がらないので、お互い台頭な関係を作っていきたい」フレンドリーな雰囲気を作りつつ、段階を踏んで手順を教える様が随所に見えた。

 

 全国各地と同じく現在は難しい状況が続く高知野球部。春季県大会と5月の県総体中止により夏の高知大会ではノーシードスタートが濃厚。加えて3月中旬に一度は再開した練習も、全国的な緊急事態宣言に伴い現在は5月6日(水・祝)までの休校・部活動停止中。選手寮も一時閉鎖されたため、森木も他の選手たちと共に自宅待機を強いられることになった。

 だからこそ……。森木は最後に夏への青写真と意気込みについて問われると、迷いなくこう答える。
 「自分だけがよくてもダメ。チーム全体がよくないといけないですし、いい先輩たちが守備でしっかりと守ってくれるので、そこは打たせて取っていきたい。そうすれば自分も楽だし、周りのレベルも上がっていく。
 それでも、やはり僕が投げたら絶対に勝てる投手になりたいと思っている。自信がついてくれば、もっと色々な周りが見えると思うので、練習では周りに流されず、自分のやるべきことをやって行ければ。そして目の前の試合を1つ1つ丁寧に勝って、高知大会を優勝して甲子園の土を踏みたいと思います」

 その先に現れるのは「昨夏の甲子園をみて、自分はおいていかれていると感じた」中学時代からの好敵手・笹倉 世凪伊藤 樹といった仙台育英(宮城)と共にプレーできる侍ジャパンU‐18代表の座。日本代表の将でもある明徳義塾・馬淵 史郎監督に認められる人物になるために、森木 大智は日々自分と向き合い、成長の術を探し、熟成の夏につなげていく。

(取材=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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