Interview

小学生で遠投86m 超強肩捕手・戸丸秦吾(健大高崎)の逸話がすごい!!そのスローイングの秘密を大公開!

2020.03.07

 プロ野球では、「甲斐キャノン」など超強肩捕手にキャッチフレーズがつくが、将来的にそのキャッチフレーズがついてもおかしくない高校生捕手がいる。それが健大高崎戸丸秦吾だ。高崎ボーイズから強肩捕手として注目された戸丸のスローイングタイムは脅威の1.7秒~1.9秒台。日本一の強肩捕手といっていい存在だ。そんな戸丸の強肩エピソードや、規格外のスローイングを築き上げるまでに至った過程に迫る。

小学6年で遠投86メートル、1大会4盗塁阻止、アウト3回盗塁阻止と数々の強肩逸話あり

小学生で遠投86m 超強肩捕手・戸丸秦吾(健大高崎)の逸話がすごい!!そのスローイングの秘密を大公開! | 高校野球ドットコム
戸丸秦吾(健大高崎)

 小学校の時から肩の強さは際立っていた。幼稚園年長から野球をはじめ、小学校時代は投手、捕手を兼任していた戸丸。自分が人よりも肩が強いと実感したのは、小学校6年生の時である。藤岡市の選抜チームを決めるときに市内の小学生が集まり、いろいろな測定を行った。そして遠投でなんと86メートルを記録した。大人も、同級生たちも驚きの表情を見せていた。

 「あの遠投をやるまでは自分の肩の強さは普通だと思っていました。ただ他の選手が50メートルから60メートルぐらいなので、明らかに違いました。みんな驚いていましたけど、僕自身も驚きました」

 そんな戸丸は高崎ボーイズに進んでも、強肩ぶりを発揮する。1年夏から正捕手となり、2年生に全国大会に出場。そこで4回盗塁を仕掛けられたが、すべてアウトにする甲斐拓也ばりの盗塁阻止を見せたのだ。ボーイズからのチームメイトでエース・下慎之介
 「自分はあの時、試合に出ていたかは忘れましたが、戸丸の盗塁阻止は覚えています。本当にえぐかったです」

 また下はさらに戸丸の強肩エピソードを教えてくれた。
 「中学時代、1年生だけで練習試合をしたことがあって、自分がマウンドにいたんです。先頭打者を出して戸丸が刺して、次の打者も出して、戸丸が刺して、そして次の打者も死球を与えて、それも戸丸が刺してアウトは戸丸が全部とりました!」

 本来ならば満塁のピンチ、もしくは点を失っていたかもしれない状況を戸丸1人で三者凡退にしたのだ。もちろん下は戸丸に絶大な信頼を置いている。
 「やはり刺してくれるので、投手としては投げやすいですね」

 そして戸丸はNOMOジャパンを経験するが、代表メンバーで、そして健大高崎でチームメイトとなった長身右腕・橋本 拳汰は「こんな強肩な捕手がいるんだ…と驚いた記憶があります。今では頼もしいです」と次々と驚かせる戸丸は、地元の健大高崎に進学を決める。その進学理由が独特の発想だった。

 「もともと機動破壊と呼ばれる健大高崎をつぶしたいというのが自分の目標だったんです。ただ他校に進学して、健大高崎さんと戦うよりは健大高崎に入学して、走塁練習で、足が速く、走塁意識の高い選手とたくさん対戦できるのかなと思いました。

 健大高崎に入って自分の肩の強さをどこまで追求できるのかと目標に置いて、健大高崎を選びました」

 健大高崎と戦う機会は年に数回ぐらい。だが、日々、走塁を深く追求する健大高崎のもとでやれば、捕手としてプラスになるかもしれない…。その戸丸の発想は正しいものとなる。

[page_break:小林誠司型スローイングで盗塁阻止率、スローイングタイムがアップ!]

小林誠司型スローイングで盗塁阻止率、スローイングタイムがアップ!

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神宮大会では雄たけびを上げることもあった戸丸秦吾(健大高崎)

 入学当初、自慢の強肩はなかなか通用せず、盗塁が刺せない日々が続く。そこで戸丸がヒントにしたのは、走塁練習の指導だった。
 「走塁練習は相手を欺いて盗塁しますが、逆に捕手だったらどうすればいいんだろうと、捕手の立場からスローイングについて考えるようになりました」

 その中で戸丸はスローイングで、ステップを大事にしているが、ステップに至るまでの過程をこだわっている。
 「ステップで意識していることは肩の入れ替えだけです。左肩から右肩を入れ替えるときの捻転の動きで足も勝手に運んでくれるので自分は意識しています。捕球時に左肩と右肩を強く大きくできるか意識しています」

 そして健大高崎の木村亨コーチは戸丸のスローイングの長所についてこう解説する。
 「地肩の強さはもちろんですが、高度なことができる。
 軸足(右足)を入れ込むとき、左肩をセカンド方向に向けるために身体を捻転(回転)、切り替える時にゆっくり回ってしまうと投げるまでに時間がかかってしまいます。ですので、いかに素早く身体を切り返して投げる態勢が取れるかがポイントとなりますが、戸丸はそのポイントをおさえて素早く捻ることができる。だからステップを踏まなくても投げることが出来るんです」

 木村コーチが語った長所について戸丸は
 「中学から特に意識せずやっていて、入学して、そう指摘いただいてから気付きました。そこから自分なりに詰めて効率の良いステップを求めてきました」

 戸丸は巨人・小林誠司(広島広陵出身)のスローイングを参考にしている。今では「甲斐キャノン」と評される甲斐のスローイングを参考にする選手も多いが、小林のスローイングを参考にする理由とは。
「甲斐さんのステップより、小林さんのようにその場で回転して投げるほうが僕はあっているかなと思います」

 こう聞くと、木村コーチが評価するポイントについて、戸丸は動きを理解して実践している。二塁送球最速1.79秒を計測した強肩ぶりは天性だけではなく、理詰めで追求しているからこそ成り立っているのが分かる。

 また課題の打撃も計画的に上達を目指している。入学当初、次々と本塁打を打つ先輩の姿を見て驚かされた。ただ同じようにはいかない。「下半身の割れ」「開きの抑え」など技術的な課題を1つずつ克服していくことに取り組んだ。結果として「まだ改造途中ですが、上手く打てたと思います」と、高校通算10本塁打まで達した。今ではヘッドを走らすイメージで打撃改造を行っている。

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戸丸秦吾(健大高崎)

 選抜も近づいてきた。戸丸はこう意気込んだ。
「とにかく楽しめば良いプレーが出ると思いますし、チームが勝つことを優先に自分が輝く場所もあればいいかなと思っています」

 健大高崎は機動破壊が注目されるが、2012年のセンバツベスト4に勝ち進んだ時の正捕手は長坂 拳弥(阪神)、2014年夏~2015年夏の3季連続出場の正捕手は柘植世那(埼玉西武)、2017年センバツベスト8の正捕手は大柿廉太郎(法政大)といずれも好捕手揃いだった。

 選抜上位進出を果たせば、戸丸はその歴史に名を刻む好捕手になることは間違いない。

(取材=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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