もっと上手くなれる。経験豊富な巧打の三塁手・知田 爽汰(星稜)
2018年春から5季連続出場の星稜。1年夏から4季連続出場している内山壮真に注目が集まるが内山とともに2年春から甲子園に出ている巧打者・知田 爽汰だ。下級生の時からクリーンナップを打ってきた打撃を武器に全国舞台でも活躍。高校通算13本塁打の長打力はさらに伸びる可能性がある。
そんな知田の歩みを振り返る。
主砲・内山壮真など刺激を受けてきた中学時代
インタビューに答える知田爽汰(星稜)
金沢市出身の知田にとって星稜は最も近い強豪だ。
2014年の石川大会決勝戦で8点差をひっくり返し、甲子園出場を決めた試合は石川県民のみならず、全国の高校野球ファンに大きなインパクトを与えたが、知田は球場で見ておらず、少年野球チームの関東遠征時に大逆転劇を知った。
「練習後だったのですが、マジかよと驚いた記憶があります」
そして同時期、星稜中の指導者から誘いを受け、受験をして、星稜中学校に進むことになる。
星稜中の日々は壮絶なものだった。
「少年野球時代と比べても練習内容もハードで、指導も厳しく、非常にきついものがありました」
また、星稜中からプレーする内山壮真、荻原吟哉の存在は知田にとって刺激となった。
「内山は1年生からレギュラーだったのですが、別格でしたね。なんでもそつなく、それでいて凄いプレーをする選手でした。また荻原はボールも速くて、変化球の曲がりも鋭い。そしてスポーツ万能。自分は投手でしたが、荻原の存在で控え投手。なのでショートをやっていました」
知田は控え投手ながら、軟式で最速133キロを投げ、また打者として4番。本人は謙遜しているが、内山も荻原も知田の能力の高さに一目を置いていた。それでも天狗にならず、レベルアップに励むことができたのは全国舞台で活躍する内山と荻原の存在だ。
「あの2人が軟式の日本代表になったとき、もっと頑張らないといけないなと思い、高校入学まで懸命に練習しました」
そんな知田が日の目を浴びるようになったのは1年夏の甲子園終了後の練習試合だ。
なんと3試合で4本塁打を放つ大活躍を見せる。
「あの時は高校2年間の中で最も調子が良い期間でしたね」と笑う知田。
この猛打が認められ、新チームではレギュラーとなり、1年秋ではクリーンナップを任されるまでに成長した。
甲子園で味わった悔しさを成長の糧として
2019年の秋・敦賀戦での知田爽汰(星稜)
ここまで順調にステップアップしていた知田だったが、初めての甲子園は苦い記憶を残すことになる。2年春の選抜の習志野戦では痛恨のタイムリーエラーを喫した。
「三塁線に抜けていった打球でした。本当に悔しくて今でも忘れられないエラーです」
そこから知田は苦手な三塁線への打球をどう捕るのかを考えてきた。甲子園に戻ってきて、知田はシートノックの際、1球ずつ順番を回ってくるサイクルに対して、2球要求し、守備を磨いてきた。
そして2年夏の甲子園では、32打数9安打、打率.310と結果を残し、甲子園決勝戦の履正社戦では一時は同点となる適時打を放ったが、本人として全く納得がいっていない。
「2回甲子園行かせていただきましたが、悔しいことばかりですね」とさらなるステップアップを目指して新チームに入った。
秋季大会でも北信越大会で打率.353を記録するなど、打撃でも活躍を見せたが、「スイングスピードの遅さ」が課題に挙げた知田はウエイトトレーニングでパワーアップを図ってきた。そして打撃フォームも内から外に出すイメージで振るために左ひじを畳んで振ることを意識し、スイングを重ねた。「まだ試行錯誤の途中」と語るが、11月下旬の香川県の招待試合で特大本塁打を放ち、高校通算13本塁打まで達した。
知田爽汰(星稜)
また守備面が課題だった知田は三塁線へ抜ける打球を苦手にしていたが、「低く腰を構えていましたが、それだと正面にボールを見るときにどうしても腰が浮いてしまうんです。そのため、体を半身にしたことで、ボールが見やすくなりましたし、送球も安定しました」と手ごたえを感じている。
守備面の成長に林和成監督も「足の運び方がよくなっていると思いますし、苦手意識があったスローイングもかなり良くなりました」と評価をしている。
1年生の時と違って、何が課題で、どんな練習をすればいいか、考えながら練習できる。練習後ではプロ野球選手の動画を見ながら研究も怠らない。その姿勢が成長スピードを速めている。
それでも林監督はまだまだ成長できると期待を込める。
「私も要求が高いので、もっと爆発力というか、結果は出ていますけど、もっとやれるのではないかという思いはありますけどね」
センバツへ向けて知田は攻守のレベルアップを目指している。最後に意気込みを語った。
「まず守備はこれからも練習して上手くなりたい。また打撃も左投手の対応が課題なので、そこへ向けて練習をしていきたいです」
中学から内山、荻原とのライバルに揉まれながら、直向きに取り組んで実力を伸ばしてきた知田。3度目の甲子園では勝利に貢献する一打、守備を見せ、成長した姿を披露する。
(取材=河嶋 宗一)
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