ずば抜けたポテンシャル!荒削りの145キロ右腕が目指す高み 牟田稔啓(香椎)
杉野弘英監督が牟田稔啓(むた・じんけい)を初めて見たのは、牟田がまだ中学の時である。その頃の杉野監督の評価は「球は早かったです。でも全くストライクが入らなかったですね」だ。この出会いこそ、杉野監督がまさに荒削りだのダイヤの原石に出会った瞬間である。
それから約半年後に、牟田は香椎の門をたたくことになる。
入学当時の牟田は、まだ制球が安定していなかった。
「ブルペンで立ち投げを10球させたら、キャッチャーが取れるところに1球しか行かないんですよ。それぐらいバラバラでひどい状態でした」
こんな状態の牟田だが、この時からすでに杉野監督は牟田の底知れない可能性に惚れ込んでいた。
「やっぱり抜けていますね。体のバネとか状態の強さとかはものすごい、いいものがあります」「速いボールを投げること自体が僕は最大の魅力だと思っており、それぐらいのボールを投げるピッチャーはなかなかいないので、何とか牟田をものにしたいなと思って」
杉野監督は、率直に牟田の魅力を語ってくれた。こうして牟田と杉野監督は香椎で出会い、そして二人三脚が始まった。
地道な練習と実戦経験を積ませる!
牟田稔啓(香椎)
2018年、香椎がベスト4に進出した夏が終わると、牟田は本格的に投手として始動した。杉野監督は牟田を成長させるために、バラバラだったフォームを丁寧に指導し修正していくことになる。そして、同時に練習だけでは付けることが出来ない、実戦経験を積ませるために練習試合に牟田を起用していくことになる。
杉野監督は語る、「中学校の頃もほとんど登板の機会というのが無かったそうなんですね。だからそういう経験を積ませながら。だからたくさんの練習試合の相手の監督さんには頭を下げて「すいません」と」。
コントルールが安定しなかった牟田に実戦経験を積ませるための杉野監督の決断である。こうした中、牟田は1年生の冬に紅白戦で145キロを出すまでに成長していった。
牟田本人もこの時期の成長を実感している。
「1年生の冬から春にかけてスピードは一番伸びました」「入学した時は130前半でした。球速は一番成長していると思います」と話すように、杉野監督の下、着実に成長をしていったのである。
更なる成長へ!150キロ台到達のために!
牟田稔啓(香椎)
牟田は「150 キロというところを目指して冬をやってきています」とこの冬の目標を話してくれた。
もちろん、150キロ到達のための課題も考えている。フィジカル面では体重の増加だ。この冬場で75kgだった体重は4kg増え目標とする80kgまであと1kgとしている。
「食べるようは意識して食べるようにしています。夜は家でどんぶり茶碗2杯3杯ぐらい食べてその前に野球の練習でおにぎりを食べてます」と食事からのレベルアップも考えている。
また、投球に関しても、
「ストレートを投げるときは、今まで抜けることが多かったので指にかけることを意識しています。抜いて抜いて(ボールを)話す瞬間に入れる」と150キロに向けて自分の課題を自身で考え、レベルアップを図っている。
杉野監督は、そんな牟田の課題としてトップまでの間を上げてくれた。
「トップまでの間というか時間がずれている感覚があるんですね。だから状態が前に行こうとするんだけどもトップが上がりきってこないとか、だから今そのトップを一生懸命合わせる練習を繰り返し行なったりしています」
この課題も牟田は着実にこなしている。ここに牟田の凄さの秘密が隠されている。自身で考えた課題は納得しているので取り入れやすい。ただ、他者からのアドバイスに対しても牟田は、自身で噛み砕き考え、取り入れることができるのである。それは、杉野監督の牟田評にも出ている。
「物事を素直に聞いて一生懸命向上しようという気持ちもあります」
これも、150キロ到達には欠かせない牟田の武器である。
牟田稔啓(香椎)
冬場多くの課題と目的をもって過ごしている牟田だがその成長をもっとも近くで見ている主将の吉村南杜捕手に、この冬の牟田の状態について聞いてみた。
「最近は投げ方とかも調整して、伸びる球と言うか質が良くなっているのを感じます」
吉村の言葉からも、牟田が有意義な冬場を過ごしているのが分かる。
まだまだ荒削りな牟田が、香椎に入学し杉野監督と出会い着実に成長してきている。ポテンシャルはずば抜けている、150キロ超えへ牟田は歩みを止めないだろう。牟田の成長が見られるシーズンインが今から待ち遠しい!
取材後記1
今回は、牟田の150キロへの軌跡をベースに執筆させていもらったが、牟田の魅力は実は投球だけでなく、バッティングにも及ぶ。投げるよりもバッティングが好きな牟田だが、牟田の魅力は、自身でも意識しているフルスイングだ。
「スピードとかパワーがあってピッチングだけでなくてバッティングもすごいいた打球と飛距離があります」とチームの柱でもある吉村主将が話してくれた。是非投打に注目してみたい。
取材後記2
牟田だが、家のある古賀市から学校まで自転車登校である。10キロ少しの距離である。自転車とはいえ、この距離を毎日30分近く自転車を漕ぎながら登校してくるのである。足腰の強さはこの自転車登校でも磨かれているはずだ!
(記事=田中 実)
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