センバツ出場を呼び込んだ強打の核弾頭・下林源太(天理)が語る「フルスイング」のメリット
昨年、出場校トップと公式戦20本塁打を放った天理。12試合で驚異的な本塁打を重ねた全国トップレベル打線の核弾頭の役割を担ったのが下林源太(高校通算13本塁打)だ。昨年の近畿大会では報徳学園戦の先頭打者本塁打など打率.688、2本塁打7打点の活躍を見せ、優勝に貢献した。さらに俊敏な動きを見せる三塁守備も魅力だ。
そんな下林は168センチ70キロと決して大型ではない。だが、それでも躍動感溢れるパフォーマンスには大きな可能性を実感させる。そんな下林の成長の原点はフルスイングにあった。
天理の野球に憧れて
下林源太(天理)
大阪北ボーイズ時代から巧打の内野手として知られた下林。天理に憧れたきっかけは2017年、強打を武器に躍動する天理打線だった。
「天理は伝統のある学校で、テレビからなのですが、紫のユニフォームが甲子園の舞台で躍っているというか、暴れまわっている姿が目に焼き付いていて、天理高校を選ばさせていただきました」
天理に入学すると、1年秋から2番セカンドとしてレギュラーを獲得。コーチの指導を受けながら少しずつ長打力を身に着けていき、2年秋には主将として任されるようになる。下林は主将を任された理由について自分なりに分析していた。
「1年生の秋から試合に出させていただいて、いろいろ考えるようになりました。中学時代を思い返すと、声で引っ張る選手ではなく、プレーで引っ張る選手でした。ただ高校に入って周りのことをしっかりとみて、声を出したり、指示するようになりました。視野を広く持ってプレーしたところが指名されたきっかけだと思います」
主将に就任して、下林は週2回の早朝練習を実施させた。5時半に起床し、30分間でも守備・打撃などの基礎練習を行う。
先輩たちと比べて実力がないからこそ、早朝練習を実施した。その取り組みの成果はすぐに表れるわけではない。県大会前のブロック大会では奈良大附にも敗れ、県大会も準決勝敗退。3位決定戦で奈良に勝利し、滑り込みの形で近畿大会に出場を決めた。
大会前の下馬評は低い。初戦の相手は兵庫1位の報徳学園。この大会で周囲の予想を大きく上回る戦いを見せた天理打線の突破口を切り開いたのが1番に座った下林だった。
[page_break:フルスイング実現のカギは「内股」にあり]フルスイング実現のカギは「内股」にあり
下林源太(天理)
報徳学園の先発は兵庫県屈指の好投手・坂口翔颯が投じた初球を振りぬき、レフトスタンドへ先頭打者本塁打を放つ。下林は1球目からフルスイングする姿勢に大きなこだわりを持っている。
「1打席目の初球は特別な意味を持っていると考えています。
初球から思い切り振っていて空振りをしていても、スイングの鋭さで相手にプレッシャーを与えられると思いますので、初球からフルスイングをイメージしていました。それが本塁打になってよかったと思います」
また自身初の逆方向への本塁打だっただけに「自分なりには印象に残っている本塁打です」と胸を張る。
さらに奈良大附戦では、初球のカーブを振りぬき二塁打を放ち、突破口を切り開くと、そして2回には奈良大附の戦意を失わせる本塁打。コールドで勝利し、リベンジを果たした。この近畿大会では打率.688、2本塁打、7打点の大活躍で、優勝に貢献。強打の核弾頭として大きな印象を残した。
下林の代名詞となったフルスイングは天理に入学して身につけたものだ。
「中学校はフルスイングする選手ではなかったんです。当ててレフト前ヒットが多かったです。天理にきて、フルスイングすることを教わって空振りをしても次の球にきてメリットがたくさんあると思うので、一番良いことだと思います。天理の指導でフルスイングを一番特化しているところだと思うので、形がしっかりと決まった状態で強いスイングができるところが成長のきっかけだと思います。」
またやみくもに強く振るのではなく、合理的な体の使い方をして、ボールに最大限を力を伝えるフルスイングが重要となる。下林は「内股」が鍵となった。
「スイングでは自分の意識では内股が大事です。最初はフラットに構えて左足と右足を合わせた状態で回ると、下半身の力が全部の力が伝わる感じです。上半身は全く力を入れず、勝手についていきます」
こうして独自の感覚を身につけ、強打をストロングポイントとした下林。現在は守備を課題に鍛えている。
「神宮大会準決勝ではディフェンス面で課題を抱えて敗れました。投手では四死球でピンチを招き、守備では5失策。全員が守備力を課題におきながら練習に取り組んでいます」
あと1か月半ほどに迫った選抜に向けて下林はこう意気込んだ。
「天理らしい堂々としたプレーで思い切って全国にいる皆さんに喜んでもらえるような試合をして全国制覇を目指していきたいと思います。」
選抜初勝利へ、核弾頭・主将を務める下林が自慢のフルスイングで勝利を呼び込んでいく。
(取材=河嶋 宗一)
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