Interview

プロを目指して名門街道を駆け抜けた。世界一を知る今江敏晃コーチ(PL学園OB)から球児たちへのメッセージ

2020.02.02

 現役18年間で積み上げたヒットは1682本。千葉ロッテ、東北楽天の2球団を渡り歩き、4年連続ゴールデングラブ賞、ベストナイン1回受賞。さらに2005年と2010年には日本一を経験し、MVPにも輝いた。2006年のWBCでは代表に選出され初優勝に貢献。2019年限りで現役を引退し、2020年シーズンからコーチとしてのキャリアをスタートさせた今江敏晃さん。今回は、PL学園時代の話を中心にお伺いしました。

プロに近い環境だった京都田辺ボーイズでの3年間

プロを目指して名門街道を駆け抜けた。世界一を知る今江敏晃コーチ(PL学園OB)から球児たちへのメッセージ | 高校野球ドットコム

今江敏晃コーチ ※写真提供=東北楽天ゴールデンイーグルス

――京都田辺ボーイズから、PL学園へ進学を決めた今江さんでしたが、その理由は何だったのでしょうか?

今江敏晃さん(以下、今江さん) 最初はPL学園には「あわよくば」という感じでした。ただ僕が中学生の時のPL学園は、今の大阪桐蔭くらい高い知名度がありまして、中学3年生の夏頃にはPL学園鳥羽高校かの2校で悩んでました。
 そんな時、京都田辺ボーイズ時代の2つ上の憧れの先輩である覚前昌也さんからお電話を頂き、PL学園で挑戦し、プロ野球選手へ繋がる道筋がイメージ出来たことによってPL学園への進学を決めました。

――中学時代はどんな取り組みをしてきましたか。

今江さん 京都田辺ボーイズは当時、全国大会3連覇を成し遂げたチームで、先輩も後輩も上手い選手が沢山いる環境でした。ですので個々のレベルが凄く高くて、いい意味でライバルが沢山いたので、「負けないぞ」と思いながら練習やってました。

――その京都田辺ボーイズの当日の練習は、日本一のチームだけあって厳しい練習だったのでしょうか?

今江さん 平日でも毎日練習をやっていて、電車移動で1時間半くらい離れた場所にグラウンドがありました。練習も終わるのが夜10時くらいで、電車がなかったので帰りは親に迎えに来てもらって、12時にくらいに帰宅するような感じでした。金銭面でも負担をかけていたので、当時から「プロになったら恩返しをする」と言う気持ちはありました。
 また練習から結果を残さないと使ってもらえないようなプロに近い環境だったのも、今振り返ってみれば、それがその後の高校とプロの世界でも活きていたかもしれないです。

――その後、PL学園へ進まれましたが、当時の練習の取り組み方で勉強になったことは何でしょうか。

今江さん 捕球態勢などの守備の構え方。インパクトまでのバットの出し方などの構え方など、基礎的な練習を徹底的に繰り返しやった事が身につきました。最初は「なぜ、こんなに長い時間をかけるのか」と考えたのですが、改めて振り返ると「あの時間があったからプロでも時間をかけずに活躍することができた」と思うんです。

[page_break:この1年を良い経験として今後の人生に活かしてもらいたい]

この1年を良い経験として今後の人生に活かしてもらいたい

――今の高校野球を見て、選手のレベルや野球スタイルなど、今江さんが感じることはどんなことですか?

今江さん 僕たちの頃と比べてもレベルはめちゃくちゃ高くなっていると思います。球速や飛距離が全然違いますし、今はウエイトトレーニングも凄いですし、パワーが違いますよね。また動画をはじめ沢山の情報がすぐに手に入るようにもなりましたので、プロとアマチュアの差は段々縮まっていると思います。

――プロ野球もまだシーズンが開幕していませんが、高校野球も、現在はまだ活動再開しているチームが少なく、自宅でのトレーニングなど自主練習を続けている選手もいます。そんな選手たちが今できることはどんなことだと考えていますか?

今江さん これまではグラウンドで練習できることが当たり前だと思っていたと思うんです。それがこういった状況になってしまいましたので、今の状況をどのように過ごすかだと思うんです。「人の見ていないところでどれだけ努力できるか」と言いますが、個人の意識の差が、実力差を埋めることも広げることも出来ます。みんな限られている中で今やれることをしっかりやれるかだと思います。

――今江さんは、最後の夏は出場できず、高校野球を終えました。当時は次の進路に向かって、どうやって気持ちを切り替えていきましたか。

今江さん 当時は主将でもありましたので、先輩方や後輩、そして学校に対しても申し訳ないと言うことで頭がいっぱいになっていました。頭が真っ白な時期もあり、進路のことは全然考えられなかったですが、夏休み期間に実家に戻ってから少しずつ落ち着いてきました。ですのですぐに切り替えるというのは難しいと思います。
 (今回甲子園の中止の発表をうけた高校3年生の球児たちも)今回、春の大会もなくなってしまい、夏の大会もなくなってしまったら野球だけではなく高校3年生全員が可哀そうです。
 それでも、やっぱり、この1年間は本当にある意味、すごく特殊で、特別な1年だったと思うので、これから色々な進路に進むと思いますが、ある意味この1年をいい経験として今後の野球人生に活かして欲しいと思います。

今江さん、ありがとうございました。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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