Interview

プロ入りを目指し佐賀から鹿児島へ 鹿児島NO.1右腕・ 八方悠介(鹿児島城西)が味わった悔しさ【前編】

2020.01.31

 「プロに行く!」という高い志を掲げて、佐賀からはるばる鹿児島までやってきた。プロ出身・佐々木誠監督が就任した年に入学した「1期生」に当たる。最上級生に上がる今年春に、鹿児島城西はセンバツ出場を決め、創部以来初の甲子園出場を果たす。同じ2年生右腕の前野将輝との2本柱は甲子園出場の原動力となった。

佐々木監督に魅せられて

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練習に打ち込む八方悠介

 佐賀県唐津市出身。野球を始めたのは小2からで、中学時代は福岡の糸島ボーイズでプレーした。幼い頃から父・博さんに連れられ2つ上の兄・大輔さんと共にヤフオクドームでホークスの試合を何度も観戦に行っており「プロ野球選手になる」という夢を幼い頃から抱いていた。

 元々は捕手で、のちに秀岳館(熊本)に進学する大輔さんとずっとバッテリーを組んでいた。「ずっとピッチャーをやりたいと思っていたけど、兄とバッテリーを組まされたのでさせてもらえなかったんです」と苦笑する。

 中学に入って膝をケガして座れなくなったこともあって、三塁手に転向。投手を始めたのは中2の終わり頃で、投手歴は意外に浅い。「たまたまブルペンにいたら、コーチから『投げてみないか?』と言われたのがきっかけ」だった。

 高校進学は「いろんなところから特待の話もあったので、どこに行こうか、迷っていました」。佐賀県内はもちろん、福岡、大分、熊本からも声が掛かっており、その中の1つが鹿児島城西だった。18年から監督に就任する佐々木監督が糸島ボーイズとつながりがあり、就任前に声を掛けた数少ない選手の1人だ。

 「プロに行きたいのならプロの、大学に行きたいのなら大学の、希望に沿ったレベルの選手に育てる」
 他よりも遠い鹿児島まで行くのにためらいがあったが、父・博さんを通じて伝えられた佐々木監督の言葉が、進学の決め手になった。

 02年生まれだから、佐々木監督の現役時代は知らない。ただ名前を知ってからYouTubeの動画でプレーを見ると「すごい選手だった」というのは分かった。自分の好きなホークスの元選手だったことも縁を感じた。何より「自分の個性に合った指導を受けられる」というのが魅力だと思った。

[page_break:「屈辱」を「成長」に変える]

「屈辱」を「成長」に変える

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力投する八方悠介

 順調に成長し、直球の最速は140キロ台を超え、2年春からエース番号を背負った。前野と3年生で楽天の育成2位だった小峯新陸、右腕3枚を擁するチームは、夏の大会の第2シードで優勝も十分狙えるチームだったが、昨夏は野球人生最大級の屈辱を味わうことになる。

 4回戦の鹿児島玉龍戦。前野が先発し、5回に2点、6回に1点を加え順調に進んでいたかに見えたが6回裏、前野が突如崩れて集中打を浴びる。瞬く間に同点に追いつかれたところでリリーフのマウンドに上がったが「勝てるだろうと思っていたので、全く準備ができていなかった」。

 制球が全く定まらず、6、7回の2イニングで5つの四球、3つの暴投と完全に自滅。終わってみれば3対10の7回コールド負けで、夏の甲子園への挑戦はあっけなく終わりを告げた。

 「地に足がつかないというのはああいう感覚なんだ」と痛感した。体も心も全く準備ができていなかった上に、相手はノーシードながら甲子園出場経験もある公立の伝統校。スタンドの応援も一気に鹿児島玉龍寄りになり、何の抵抗もできないまま試合が終わってしまうというかつてないマウンドだった。

 そんな経験をしたからこそ「あの試合が一番成長できた試合だった」と思える。最後まで油断をしてはいけないこと、心と体の準備を常にしておくこと、力で抑えるよりも制球が大事なこと…「負け」につながった要因の全ては、自分が取り組むべき「課題」であることを教えてくれた大事な教訓になった。

 敗戦の「屈辱」を「成長」の糧に変える。周囲から「力がない」と目されたチームが創部以来初の甲子園を勝ち取れた大きな要因だ。

 今回はここまで!次回の後編では新チーム結成時のことから九州大会4強入りまでの道のり。そして春先以降の戦いへの想いを語ってもらいました。後編もお楽しみ!

(取材=政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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