Interview

明石商を二季連続甲子園ベスト4に導いた水上桂が名捕手になるまで【前編】

2020.01.29

 2019年、二季連続甲子園ベスト4入りの明石商。全国6勝を導いたのは、正捕手の水上桂だ。2番打者として長打と粘り打ちを兼備した嫌らしい打撃で存在感を示し、そして1.9秒台の正確なスローイング、相手打者の弱点を徹底的についたインサイドワークなど捕手としての力量は高く評価され、侍ジャパンU18代表にも選出され、ワールドカップでは本塁打も放ち、評価を大きく上げた。

 この大会を機にプロ志望に切り替えた水上は東北楽天ゴールデンイーグルスから7位指名を受け、子供の時から夢だったプロ野球選手をかなえた。そんな水上はいかにして高校生でも指折りの捕手へ成長したのか。

(インタビューの様子を動画で見る)

まずは必死でレギュラーを取ることを目指した

明石商を二季連続甲子園ベスト4に導いた水上桂が名捕手になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
インタビューに応じる水上桂

 水上の野球人生の始まりは、幼稚園年少から。野球をしていた兄・翔さん(大阪市立大)の影響で始めた。

 兵庫夙川ヤングでは投手などをポジションをこなし、中学では三田ヤングに所属し、2年生までショートをしていたが、最終学年では捕手を務めた。

 明石商進学するきっかけについて
 「まず狭間監督が有名な方でしたので、そういう方を学んでみたいという思いがありました。また、設備もすごいですし、明石商に決めました」

 明石商に決まり、水上は宝塚にある自宅を出て、明石商近くにあるアパートと下宿生活を始めた。

 入学すると、1年春の県大会からベンチ入りを果たす。水上にとっても驚きだったが、狭間監督は「もともと能力は高い選手でしたので、期待を込めてベンチに入れました」と振り返る。

 水上は「僕が入るということは入れないということは、入れない先輩もいます。そういう中で、まだ力もない中で入るというのは不安が多かったです。」

 それでもベンチ入りしながら、明石商の野球や狭間監督の姿を目にしたことは大きかった。
 「狭間監督は練習ではとても厳しい方なのですが、試合では良いプレーがあればしっかりとほめる姿を見れましたし、新鮮なことばかりでした」

 そして1年夏が終わり、新チームの練習が始まると、三塁コンバートが決まる。
 「突然でした。学校が終わって、練習場のボードに守るポジションを選手のマグネットを置くのですが、自分のマグネットがサードにおいてあって、びっくりしました」

 これも水上の能力の高さを評価して試合を経験させるためのコンバート。しかしレギュラーをつかむための練習は厳しいものだった。まず三塁手に入ってみて打球の速さが違う。それに慣れるために浦井佑介部長が放つノックにくらいついて、内野手としての守備力を高めていった。

 まず三塁手としてレギュラーに出場した水上は翌年には一塁手として甲子園に出場。八戸学院光星戦では2番ファーストとして出場し、4打数1安打2犠打ときっちりと仕事を果たしたが、初戦敗退。次回こそはセンバツで校歌を歌うことを目標に掲げ、新チームに入った。

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明石商の正捕手を務める大変さ

明石商を二季連続甲子園ベスト4に導いた水上桂が名捕手になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
2年生の秋・龍谷大平安戦での水上桂

 新チームでは捕手へコンバート。水上にとっても希望通りのコンバートだった。
 「2年秋になってから捕手はやるつもりでいました」

 捕手に転向したことは緻密な野球を展開する明石商野球にダイレクトに触れることになる。水上はコンバート直後は捕手の大変さを痛感した。
 「やはり試合中は常に相手打者を見ていきますが、、自分の配球で試合が決まってしまうので、捕手はとても大きいポジションだと思っています」

 練習試合では常に狭間監督からリード面で指摘される毎日だった。
 「いらない見せ球を使ったり、不要なボールを要求してしまうと、結果問わず指摘をされます。また、後ろにそらしたりすると、やはり叱られたと思います」

 明石商は相手打者の事前分析を徹底的に行うチームとして有名だが、その中で最も分析の時間をおいていたのが捕手・水上だった。
 「練習が終わって下宿先でコーチと一緒に見るのですが、見るのはしんどい作業でした」

 分析しながらビデオを見ると、観察眼は磨かれた。最初は長い時間をかけていたが、今では短い時間でも相手の傾向が分かるようになった。
 「1つのポイントが分かれば、ずっとそこを見ていくと、さらに相手の弱点がどんどん分かっていく。それは観察を続けるうちに身についてきました。だんだん経験を重ねていくと、最後になってくると相手監督の雰囲気を見てこの作戦をやってくるんだろうなというのがなんとなく分かるようになってきました」

 また相手の分析をするだけではなく、自省することも忘れなかった。
 「連打が続くときは 自分のせいだと思っているので、どう言う配球をしたのか、カウントなどを振り返って反省をしています」

 2年秋は中森俊介など多くの投手陣が成長し、近畿大会準優勝。初めて正捕手となった大会で大きな成果を残し、水上自身も手ごたえを感じていた。

 「智辯和歌山に12対0で勝てたことは自分としてもチームとして大きな経験となり、自信となりました。決勝戦の龍谷大平安戦は延長まで戦って宮口大輝で0点に抑えられたことは自信になりました。」

 そして冬場では決勝戦の龍谷大平安戦でスローイングミスと判断ミスで試合を落としたことを反省し、スローイングの確実性を鍛え、実戦練習で判断力も養うことをテーマに練習を積んでいった。

 そして二季連続の甲子園出場が決まり、センバツでは全国1勝。その先の全国制覇を目指して、二度目の甲子園に臨んだ水上だった。

 後編では、水上選手の名を一躍有名にした3年時のセンバツから夏、そしてU-18。さらにプロ野球選手になった現在までを振り返っていただきます。⇒(後編を読む)

(取材=河嶋 宗一

(インタビューの様子を動画で見る)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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