ドラフト6位でも大成の可能性を秘めた井上広輝(日大三-西武)。高卒プロは常に考えていた
2019年の高校生右腕は奥川恭伸(星稜)、佐々木朗希(大船渡)が注目を浴びた年だった。そしてそれ以外にも多くの高校生投手が高卒ドラフト1位されたが、同等の潜在能力を秘めた投手がドラフト6位にいる。
それが埼玉西武6位の井上広輝だ。2年時、春夏連続甲子園出場。2年冬は東京選抜に選ばれ、キューバのU18代表相手に圧巻の投球を見せた。しかし最終学年は思うような投球ができずに夏は準々決勝敗退で夏を終えた。井上はどんな思いで過ごしてきたのか。そしてプロへの決意を聞いた。
2年春、夏の甲子園の快投が高卒プロを意識するようになった
井上広輝(日大三-西武)
井上が高卒プロを意識したのは2年春の選抜だ。初戦の由利工戦で6回無失点、5奪三振の好投。さらに迫力のある140キロ後半の速球を投げ込み、大きく注目を浴びた。2回戦で敗れたが井上にとって自信を深める大会となった。
「あの大会で高卒プロは目指していこうと思いましたし、練習のモチベーションとなりました」
ただ、順風満帆に過ごせたわけではない。2年春の都大会の準決勝・早稲田実業戦で肘の不具合を訴え、途中降板。それ以降、リハビリに努めてきた。投手として投げられない期間は苦しいものだったが、プロに行きたいという気持ちを支えにリハビリ、練習に取り組んできた。
そして甲子園に復帰し、奈良大附戦で最速150キロを計測。ベスト4進出に大きく貢献した。
「この甲子園の好投で自信をつけて、高卒プロの気持ちはさらに強くなってきました」
秋では東京代表に選ばれ、キューバ遠征を経験するが、キューバはU-18代表揃い。そんな相手にも井上は140キロ中盤の速球とシンカー気味に落ちるチェンジアップを駆使して、計5回を投げて、11奪三振の好投を見せ、東京代表のエースとしての実力を十分に発揮した。
ここでつかんだものは大きかった。
「キューバ打線はスイングは強いですし、配球は、かなり考えながら投げました。国際大会は日本の高校野球とはリズム、間隔が違うので、そういったところで投げらえたのもよかったです」
その後、より高いレベルにいくために投球フォーム、配球などにこだわってきた。
「2年生の時はイケイケどんどんといいますか、勢いに任せているところがありました。ただ最終学年でエースという立場になってチームを勝たせるには、配球を考えながら投げていかないと思いましたので、捕手の佐藤英雄と話しながら投げていきました」
背番号「41」を背負い、球界を代表する投手を実現する!
井上広輝(日大三-西武)
しかし、思うようにいかない期間が多かった。春先では140キロ後半の速球を投げ込むなど、「感触は良かった」と手ごたえを感じながらも、夏以降も調子が上がらない日々が続いた。
そして最後の夏は準々決勝で桜美林に敗れ、夏を終えた。
「夏は自分にとって感覚が合うフォームが見つからず、思い通りのストレートを投げることができませんでした」
勝負をかけた最後の夏に思うような実力を発揮できなかったのは痛恨の思いだったが、それでも体づくりやキャッチボールを重点的に取り組んできた。体づくりの成果はしっかりと出ている。180センチ85キロと取材時に登場した井上の姿を見ると筋肉の盛り上がりに学ラン姿はパンパン。明らかにたくましくなっている様子が見えた。
そんな井上がつける背番号は「41」。かつて西武のエース・渡辺久信投手がつけていた番号で球団からの期待も高い。そして新入団会見では「球界を代表する投手」を目標に掲げた。
ルーキーシーズンは活躍するために先輩からいろいろと吸収する。
「自分の生きる道を見つけるために、この1年は先輩たちの練習の仕方をいろいろ見て学んでいきたいと思います」
井上の3年間を振り返れば、抜群の伸びを見せるストレートの勢いは東京都の高校野球関係者に衝撃を与えた。井上の投手としての凄さを「宝物ですよ」と絶賛していた他校の指導者もいた。
まだまだこんなものではないだろう。理想的な投手像、ストレートを追求し、目標通り、ドラフト6位から球界屈指の剛腕へのサクセスストーリーを必ず実現する。
(取材=河嶋 宗一)
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