指揮官が絶賛する147キロ左腕・松島元希(中京大中京)。覚醒のカギは「良い意味で負けん気の強さ」
中京大中京はエース・高橋宏斗が注目されるが、左腕の松島元希も最速147キロを誇る。さらに中学時代はセンターを務めていたこともあって、チームトップレベルの俊足を誇る。160センチ台ながら、ポテンシャルは素晴らしいものを秘めている。
選手に対して「まだまだ」と目線が厳しい高橋源一郎監督も「160センチながら、あの馬力、ボールを投げる速さ、身体能力は素晴らしいものがある」と絶賛する。そんな松島の成長の歩みを追った。
名門の中京大中京の環境に合致し、順調に成長
松島元希(中京大中京)
幼稚園年少から野球を始めたという松島。名古屋市千種区出身の松島の少年時代を振り返ると、広場で野球、サッカーなどいろんなスポーツをしていた。そういう積み重ねが現在の高い身体能力を生んでいるのだろう。
そして中学では軟式野球クラブの名門・東山クラブに進む。ここでは主に外野手を務め、俊足を生かし、1,2番。そして2016年には全国制覇を経験。そして進路先は指導者の薦めで中京大中京への進学を決める。
そしてポジションも肩の強さを買われた投手へ本格転向した。
入学すると、同級生であるエース・高橋宏斗の速球に目を奪われる。
「高橋もすごかったですし、ほかの同級生のみんなも速かったです。自分は軟式なので、ついていけるか不安はありました。ただこういう高い舞台で野球ができてよかったかなと思います」
レベルの高さに圧倒されながらも、前向きにやっていける人間性が松島にはあった。また投手転向を大きく進めたのも、高橋源一郎監督だ。
投手に転向させた理由について高橋監督はこう語る。
「なんといっても160センチ台ながら馬力が群を抜いて違うことです。外野手で足も速く、野手としても行けると思ったのですが、あのボールの速さ、馬力の大きさを見ると、将来的なことを考えて、本人も投手をやりたい気持ちがあったので、すすめました」
松島元希(中京大中京)
また松島自身、硬式のほうが投げやすい感覚があった。すぐにアジャストすると、順調に成長。1年秋には、入学当初、130キロ前後だった速球は最速138キロまでスピードアップ。ベンチ入りを果たし、1年秋の県大会決勝の東邦戦では先発を任され、打ち込まれてしまったが、高橋監督は打たれても、そこから何かを感じて成長の糧にするために送り込んだ。
松島は決勝戦の登板を振り返って「あの試合はただ緊張しただけで終わった試合でした。同じ舞台を任されても緊張せず自分の努力をしていこうと思いました」とやる気を高める登板となった。
松島は投手コーチの三次コーチや投手指導を行う学生コーチの技術指導のもと、才能を伸ばしていく。冬場は公式戦で投げてみて体力不足を痛感した松島は筋力トレーニング、走り込みを行うだけではなく、伸びのあるストレートを投げるためにキャッチボールからも工夫した。
「マウンドの距離18.44メートルの倍の距離でキャッチボールをするのですが、そこからシュート回転しないように、真っすぐの軌道で投げるように心がけています。シュート回転してしまうと、どうしてもボールの軌道に無駄があったり、体の使い方にも無駄があるということなので、その点は気を付けています」
一冬超えると、3、4月頃の練習試合ではストレートの球速は140キロに到達。そして夏の愛知大会では4回5奪三振無失点の好投を見せたが、準決勝の誉戦では7回途中で登板するが、勢いに乗る誉打線の勢いを止めることができず、2安打を浴び、交代。大事な試合で結果を残すことができず、悔しい夏となった。
大会後、足を痛め、戦線離脱。だがこの離脱は松島をさらに進化させるものとなった。
[page_break:最速147キロ到達も指揮官が求めるのは「良い意味での負けん気の強さ」]最速147キロ到達も指揮官が求めるのは「良い意味での負けん気の強さ」
松島元希(中京大中京)
1か月間、治療とトレーニングに励みながら、復帰初戦は菰野(三重)。スピードガンも計測する菰野グラウンドで常時140キロ前半・最速147キロを計測。一躍、この世代を代表する速球派左腕へ成長する。
「あの期間は肩を休ませていたことも大きかったですし、またあの試合で直球で押せることに自信を持つことができました」
こういうストレートを投げることができたのは自分なりの投げるポイントができたのが大きい。
「体を投げるときにテークバックの時に投げるほうを肩を力を入れる、張ることを大事にしていて、前に出すことはリリースの時点で腕を向かわせるイメージで投げています。」
よく投手は脱力するイメージで投げがちだが、松島の場合は「自分の体が硬いというのもあるんですけど、その感覚は合わなくて、ぐっと入れたほうが投げやすいと感じてします」
また変化球にも磨きをかけた。もともとスライダーを投げていたが、曲がりが大きすぎるということで、ストレートと同じ握りにしたカットボールに修正。さらに薬指と中指を挟んで投げるチェンジアップを取り入れ投球の幅を広げる。この2球種をマスターしたことで空振りも奪え、打たせて取ることができるようになった。
先発として活躍を見せ、神宮大会でも先発。しかし天理戦では5回を投げ6奪三振を奪ったものの、5失点と悔しいマウンドとなった。そして中1日の決勝戦の健大高崎戦では再び先発。5回を投げて、被安打7、自責点2と踏ん張った。修正できた要因として、
「準決勝はストライクゾーンに入れすぎたところがあったので、決勝戦では腕を振っていくことを心がけました。初回に先頭打者を三振にとれて波に乗れたと思います」
ただ、松島自身、全国の舞台でレベルの高さを痛感した大会となった。
「速いボールだけだと全国では打たれる部分があるので、コントロールをもっと向上させていかなければならないと思います。自分の実力不足を実感しました」
冬場ではコントロールの精度を高めるために練習を積んできた。全国デビューも迫ってきている。高橋監督もエース・高橋との二枚看板としての期待も高い。
「松島は二枚看板で考えていますが、投球制限も設けられる状況になると全国制覇するには彼の力がとても重要です。ですが、まだ出してしまうと、高橋をリリーフに出してしまうことを考えてしまう。しかし、彼には良い意味で負けん気を持ってほしいですし、1人で試合を任せられる投手になってほしいです」と願っている。
松島はこう意気込んだ。
「自分の投球によって、少しでもチームの勝ちが近づければと思っています。そのためにはいつも通り、練習通りの投球ができる精神力をみにつけたいと思います」
そう謙虚に語る松島。ひたむきに努力を続けていれば、必ずやチームの窮地を救う左腕となるだろう。
(取材=河嶋 宗一)
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