Interview

最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】

2020.01.18

 全国各地から逸材が多く集まる大阪桐蔭。ポテンシャルの高さではこの世代どころか、歴代の大阪桐蔭の選手の中でもトップクラスの素質を秘めたのが1年生左腕・松浦 慶斗だ。186センチ84キロと恵まれた体格から最速146キロのストレートを投げ込む。2021年の世代を代表する左腕になりうる松浦の軌跡を振り返っていきたい。

なぜ旭川から大阪桐蔭に接点を持つようになったのか?

最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】 | 高校野球ドットコム
1年生左腕・松浦 慶斗(大阪桐蔭)

 松浦が野球を始めたのが小学校1年生から。もともと宮城県の石巻市出身の松浦は親の転勤の都合で、北海道の旭川市に引っ越し。小学校5年から投手をはじめ、小学校6年には北海道日本ハムファイターズジュニアのセレクションを受ける。このセレクションは3回あり、まず一次試験では1000人から150人に絞り込み、二次試験では150人から30人程度まで絞り込み、最終試験では30人で紅白戦を行い、18人を選ぶという狭き門を潜り抜け、松浦は北海道日本ハムジュニアに選出され、2015年のNPBジュニアトーナメントに出場する。

  ちなみに松浦は古谷優人江陵-福岡ソフトバンク)がいとこ。高校時代から150キロを超える速球を目の当たりにしていた松浦は「直接は教えてもらっていませんが、古谷さんのようなストレートは投げたいと憧れを持っていました」と振り返る。

 そして中学では自宅から自転車で通える旭川大雪ボーイズに入団。冬になると、グラウンドが使えない。その中で、雨天練習場や体育館を借りながら練習を積んだ。

「人工芝が使えるところではピッチング、バッティングの実技。使えないところでは、ひたすらトレーニングをして体を鍛えていました」

 そこでもエースと主軸打者を務め、チームの柱として活躍。中学1年には身長170センチだったが、中学3年には185センチまで伸び、ストレートの球速は120キロ程度から138キロまでスピードアップ。その球速アップは体の成長だけではなく、旭川大雪ボーイズに投手専門のコーチから投球フォーム、感覚などあらゆるところまで教わったことで、大きく伸びた。旭川出身の松浦が大阪桐蔭と接点を持つようになったのか。

 それは昨年8月に行われたボーイズの全国大会でベスト8に進出したことがきっかけだった。ここでの活躍が大阪桐蔭の関係者の目に留まり、またU-15代表の池田陵真(忠岡ボーイズ)からも「一緒に大阪桐蔭で野球しよう」と誘われた。そして松浦はさらにうまくなりたい思いがあった。

「北海道では物足りないというわけではないのですがうまい人と一緒にプレーして自分を高めたかったからです」

 強い上昇意欲をもって大阪桐蔭への入学を決める。

[page_break:高校で直球を磨く重要性を痛感]

高校で直球を磨く重要性を痛感

最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】 | 高校野球ドットコム
指導を受ける松浦 慶斗(大阪桐蔭)

 その気持ちは正しかった。入学するとレベルの高さを痛感する。練習試合や、シート打撃で先輩たちに投げると、これまで通用していた武器が通用しない。

「中学時代、自分が得意だったのは速球ではなく、変化球だったんです。中学時代、変化球を投げればごまかせました。しかし高校に入ってことごとく打ち返されて、じゃあどうすればいいかと思ってストレートを投げるとき、思い切り腕を振っていったら、抑えることができて、ストレートで攻めようと思いました」

 またその姿勢は西谷監督や投手コーチの石田コーチから薦められた。

「自分はストレートを投げる際、コントロールを意識してうまく合わせようとする意識があったのですが、そうではなくて、コントロールを気にせず思い切って腕を振って行けとアドバイスをもらいました」

 投球練習から強く腕を振ることを意識し、昨夏には142キロに到達。また高校に入ってからは、中距離走、インターバル走、体幹を鍛えるTRXなどを行い、課題だった下半身と体幹を鍛えていき、平均球速を高めていき、昨秋にはベンチ入りを果たす。

 昨秋の公式戦では限定的だったが、リリーフで好投。近畿大会の立命館守山戦では、最速146キロのストレートを投げ込み、観衆を驚かせる。ただ松浦自体は自身の速球には納得していない。

「146キロを計測したストレートはボール球でしたので、あまり良いストレートではなかったと思います。自分が満足するストレートでスピードを出せればと思いました」

最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】 | 高校野球ドットコム
松浦 慶斗(大阪桐蔭)

 そして近畿大会準決勝・智辯学園戦では先発。事前に言われてしっかりと準備したが、初先発はこれまでの公式戦のマウンドとは比べものにならない緊張感があった。

「本当に緊張していましたし、相手打線もすごくて、相手の応援もすごくて、マウンド上で震えていたと思います。まだああいうチームには自分のストレートは通用しないんだなと思いました」

 結果は4回を投げて5失点。超高校級打線に触れたことで、コントロール、変化球の精度、あらゆる面で課題となった。

 後編では現在の課題へ向けて、どんな取り組みをしているのかをうかがいました。⇒(後編を読む)

(取材=河嶋 宗一

最速146キロの大型左腕・松浦慶斗はなぜ旭川を飛び出して大阪桐蔭を選んだのか?【前編】 | 高校野球ドットコム

 春夏合わせて8度の全国制覇を果たし、いまや全国の高校球児、中学球児の憧れとなっている大阪桐蔭
 高校野球ドットコム編集部総出で、現役球児にも参考になる練習方法や選手の考え方など、徹底取材してきました!

 大阪桐蔭の強さ、選手たちの意識の高さを学び、2020年からのチームや自分のスキルアップにつなげていこう!

~予告~ 大阪桐蔭特集2020

1月17日(金)18:00配信
【動画】関戸康介選手特集

1月18日(土)12:00配信
松浦 慶斗選手インタビュー記事

1月23日(木)12:00配信
「西谷浩一監督が語る一流選手になる条件」コラムにて公開!

1月24日(金)18:00配信
【動画】松浦 慶斗選手特集

1月31日(金)18:00配信
【動画】仲三河 優太選手特集

※配信日時は予告なく変更になる場合はございます。ご了承ください。

バックナンバー

12月23日(月)
【動画】過去最大の大阪桐蔭特集がクリスマスイブからスタート!

12月24日(火)
【コラム】3季ぶりの甲子園出場・全国制覇を狙う大阪桐蔭の現在地。「我の強い集団が1つになったとき」
【動画】大阪桐蔭のバッティング練習にド接近!西野や池田など秋の主力組が快音連発!

12月25日(水)

【コラム】超一流だけではない。全部員を活躍させる大阪桐蔭メソッドに迫る vol2


【動画】大阪桐蔭のボール回しを肌で感じる!覇気の強さがビンビン伝わる!

12月29日(日)

【コラム】ブームが起きそうな大阪桐蔭の効率的ボール回し、体幹トレーニングを特別公開!


【動画】大阪桐蔭のトレーニングを公開!他にはない一味違った方法が多数!

12月30日(月)

【インタビュー】もう一人の規格外の逸材・関戸康介が明徳義塾中、大阪桐蔭でプレーする理由【前編】

1月3日(金)

【動画】スペシャル編 大阪桐蔭の現在地。「我の強い集団が1つになったとき」

1月6日(月)
【インタビュー】憧れは野茂英雄。世界一、日本一の投手になるために1分1秒を無駄にしたくない 関戸康介(大阪桐蔭)【後編】

1月10日(金)18:00配信
【動画】全部員を活躍させる大阪桐蔭メソッドに迫る

1月12日(日)12:00配信
【インタビュー】大阪桐蔭の左腕エースでは田中誠也以来の実力派・藤江星河を覚醒させた「内角攻め」と「チェンジアップ」

1月15日(水)12:00配信
【インタビュー】伸び盛りの二刀流・仲三河優太(大阪桐蔭)が目指すは投打での大活躍!

1月17日(金)18:00配信

【動画】藤江星河(大阪桐蔭)の切れ味抜群のクロスファイアー!決め球のチェンジアップも解説!

高校野球ドットコムチャンネル

関連記事
他のインタビュー記事はこちら!
◆中京大中京の注目スラッガー・印出太一に迫る⇒「高橋監督を日本一の男にする!」と宣言した男気溢れる大型捕手!
◆明石商の注目スラッガー・来田涼斗に迫る⇒ドラフト1位になるための課題

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.15

宮崎の中学から東海大相模へ! スーパー中学生・三渡琢真は超実戦派左腕!

2024.03.15

【準硬式関東大会】早稲田大、中央大が初戦突破 駒沢大は延長10回の熱戦を制す

2024.03.15

昨年センバツ8強・東海大菅生、主力選手は亜大、東海大など関東地区強豪大学に進学! エース日當は楽天3位

2024.03.15

甲子園はほかの球場とはこんなに違う! マウンドの形状、視界を遮るもの、外野守備の落とし穴……元阪神投手とPL出身投手が注意点を語る!

2024.03.16

【東京】16日開幕!堀越が京華と対戦<春季大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.12

都市対抗16回・東邦ガスが積極補強! 前ヤクルト・吉田と甲子園優勝経験者2人が加入!

2024.03.12

【準硬式関東大会】慶應義塾大、両軍合わせて27安打の乱打戦を制す 東洋大は1点差の投手戦を勝ち切る

2024.03.10

日本体育大が新入生を公開!浦和学院、長崎海星、常総学院、興南、花咲徳栄など甲子園経験者・強豪校出身者が大挙入学!

2024.03.13

副業で高校野球の仕事に携わりたい人、大募集!営業、企画管理、編集など、あなたの“できる”を高校野球メディアで生かしてみませんか?

2024.02.25

取材歴13年「私の出会った個性派キャプテン」たち…叱咤激励型、調整型、高校・大学・社会人ですべて日本一の「殿堂入りキャプテン」も!【主筆・河嶋宗一コラム『グラカン』vol.8】

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.02.24

【大学野球卒業生進路一覧】 2023年の大学野球を盛り上げた4年生たちの進路は?

2024.02.26

ポニーリーグの球春告げる関東大会が開幕! HARTY氏の大熱唱で協会創立50周年が華々しくスタート! 「まさにプロ野球さながら」

2024.02.16

【関西地区高校・大学監督人事】天理の名将・中村良二氏が大阪学院大に、後任は天理大6連覇指揮官! 近大、関大、立命大なども監督交代!