けがで秋、春は未登板。プロへいく道を切り開いた最後の夏 埼玉西武ライオンズ・國場 翼(具志川出身)【前編】
昨年ファームで4勝し、一軍で15試合に登板。9月の千葉ロッテ戦では、延長10回に登板しプロ初勝利と初のお立ち台に登った國場翼(具志川ー第一工業大学ー埼玉西武ライオンズ)。チームの勝利に貢献するためには、どんな場面でもマウンドに立つことを厭わない。1月のうるま市。自主トレに励む國場投手に話を伺ってきた。
同郷の先輩東浜巨らと自主トレ
同郷の先輩東浜巨らとうるま市で自主トレを行う國場
快晴となったうるま市上空。10時前に続々と選手たちが集まってきた。埼玉西武ライオンズ國場翼と、與座海人(沖縄尚学出身)、そして福岡ソフトバンクホークスの東浜巨(沖縄尚学出身)。地元の沖縄電力から都市対抗を目指す山城悠輔(沖縄尚学-九州共立大)や、比嘉大智(宮古高校-栃木ゴールデンブレーブス)らも参加した。
まず選手たちは10時前までみっちりストレッチをすると、外野に移動してアップを開始。股関節を中心に、一つ一つの動きに無駄がない。全ての動作に意味があって行われるプロの練習こそ、中学生や高校生たちに見てもらいたいものだ。
次にライトポールからレフトポールのフェンス際をダッシュ。最後の10本目は、レフトポールからライトポールを直線で結んでのダッシュで締めた。
その5分後にキャッチボール。それが終わると、さらにその5分後に全員がマウンドに上がってピッチングを開始した。その一人一人に、東浜からアドバイスが出る。「こうやって投げると開いてしまうよ。」主に身体の使い方だが、これがピンポイント。だからこそみんな東浜の元に集まるし、東浜も沖縄の後輩たちのために全てを伝えていく。
ピッチングが終わり暫く立って内野でのノック。締めは外野でのアメリカンノック。凝縮された自主トレを終えたばかりの國場。疲れを見せずに、高校野球ドットコム読者のため、インタビューに応じてくれた。
エース候補になるも、夏まで未登板。悔しさを晴らした最後の夏
キャッチボールを行う國場
――まず、高校野球最後の夏の思い出を語ってもらいたいと思います
國場 2年の夏が終わり、新チームがスタートした直後、当時、監督の仲宗根先生から『お前が投げれば勝てる』と、言われました。
でも新人大会地区予選で、セカンドとして出場していた僕はボールを追いライトと接触。ケガをしてしまいました。秋も春も投げることがなく、悔しい思いだけを胸に、ゲガも完治した夏は絶対やってやるという思いを持って向かいました。
初戦は読谷高校。でも僕は腰に違和感があり、サードでの出場でした。リードを広げられていく中で投げたい思いが募って。サードから一塁ベンチは真正面。肩を振りながら『投げさせてください!』とアピールしましたが、僕の身体のことを考えて下さっている仲宗根先生は動きませんでした。
―― 7回裏、小学校からずっと國場投手と一緒に野球をやってきた原田のホームランなどもあり一挙6点を奪い勝利。二回戦は美里工高校。でも具志川高校ナインは、シードの嘉手納高校が来ると思っていた。
國場 だからこそ、手強い相手になるなと。満を持してマウンドに上がりました。
―― 10奪三振の快投。さらにチームは9回サヨナラ勝ちを見せました。
國場 本当に出来過ぎのピッチングで。でもこのピッチングがあったからこそ、次の興南高校戦でも臆せず投げることが出来ました。
秋春と通じ1勝しかなかったチームに、ベスト16進出をもたらした國場のピッチングが光った。三回戦は前年度、島袋洋奨らと共に甲子園春夏連覇の舞台にいた大城滉二(現オリックス)や高良一輝(元日本ハム)らの興南高校に1-3で敗れたが國場投手は完投。強い興南が相手だったからこそやりきった感に満たされ、清々しく高校野球を終えた。
その後、鹿児島県の第一工業大学に進み、三年には最優秀投手賞を獲得。ベストナインにも選ばれるなど成長。2015年、埼玉西武ライオンズから指名されプロ入りした。
――昨年、ファームで4勝。さらに一軍で自己最多の15試合に登板を果たしました。2年間、一軍のマウンドから遠ざかっていましたが、ご自身どのような成長があったのか。
國場 まず、プロ一年目で一軍のマウンドで投げさせて頂いて。自分の中では三年目には一本立ちしているイメージを抱いていました。
ところが、二年目の春のオープン戦で右胸横を肉離れして。三ヶ月何も出来ない状態でした。三年目も苦しみもがいて。このままでは終われないと。昨年、東浜さんと一緒に自主トレさせて頂いて。東浜さんに投手としてのあり方を、色々教えてもらった結果だったと思います。
後編ではプロ初勝利をあげたときのエピソードや高校球児へメッセージをいただきました。⇒(後編を読む)
(取材=當山雅通)
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