大阪桐蔭の左腕エースでは田中誠也以来の実力派・藤江星河を覚醒させた「内角攻め」と「チェンジアップ」
全国の球児が憧れる大阪桐蔭。そしてエリート揃いの大阪桐蔭の投手のエースの座をめぐって激しい争いが行われる。2020年のエースとして期待されるのが藤江星河だ。
長崎県諫早ボーイズ時代はボーイズ世界代表を経験。大阪桐蔭入学後は1年秋にベンチ入りし、地道に積み上げ、2年秋には近畿大会準優勝に導き、左腕エースとしては田中誠也(立教大)以来の実力派だ。そんな藤江の歩みを振り返る。
大阪桐蔭に憧れ、レベルの高さを感じながらエースを目指してきた
インタビューに応じる藤江星河(大阪桐蔭)
長崎県・諫早出身の藤江が野球を始めたのは小学校2年生から。当時は親の仕事の都合で、鹿児島県の鹿屋に住んでおり、小学校3年に諫早に戻り、諫早ボーイズの小学部に所属。そのまま中学部に進むと、中学3年には最速133キロのストレートとキレのある変化球を武器に九州では指折りの投手となり、2017年ボーイズ世界代表に選ばれる。
長崎県ではトップレベルの投手として、長崎県の強豪からのオファーが相次いだ。そんな中、藤江は全国制覇経験を持つ大阪桐蔭を選んだ。
「自分が野球を始めたときから大阪桐蔭はいつも甲子園に出ていて憧れのチームでした。小さい時から行きたかったチームなので声がかかったときはうれしかったですね」
藤江が1年生時には根尾昂(中日)、藤原恭大(千葉ロッテ)を中心とした春夏連覇のメンバーたち。ハイレベルな先輩たちを間近で見たのは大きかった。
「本当にレベルが高い環境だと思いました。それでも自分が決めた道ですので、それを貫いて、やっていこうと決めていきました」
そんな藤江は1年秋にして背番号19でベンチ入り。ベンチ入り人数が2人減る近畿大会でもベンチ入り。何をアピールしたのか。
「バットの手元で強く伸びる、ベース盤で強く伸びるところが自分の特徴だと思うので、そこをアピールしていってベンチ入りすることができました」
1年冬には、下半身中心に強化を行い、球威アップ。2年春の府大会では先発を任されることも多くなる。この大会で課題になったことは集中打を浴び敗れた近大附戦など終盤に打たれる傾向にあることだった。
「良いところも悪いところも経験して、終盤まで集中したピッチングをすることが自分の課題となりました」
2年夏はベスト8どまり。新チームでは練習試合で好投を続け、ついに背番号1を獲得する。
秋は近畿大会準優勝に導くもまだまだ実力不足。この冬の取り組みは?
藤江星河(大阪桐蔭)のチェンジアップの握り
藤江は背番号1をもらった心境についてこう振り返る。
「嬉しかったのですが、自分はそこからスタートだと思っていて大阪桐蔭の背番号1にふさわしい投手になりたいと思っていました」
そのために、藤江は中学2年生から投げ続けてきたチェンジアップをさらに極めた。藤江のチェンジアップの握りを見せてもらうと、人差し指と中指を挟んでいる。この握りは試行錯誤の末、いきついたものだった。
「最初はわしづかみをしていたのですが、全然うまくいかなくて、いろいろ試した結果がこの握りになったんです」
そして前で離すことがポイントだ。
「前で離すことで、打者にとっては距離感が短く感じられるのでそれはとても意識しています」
また握りを浅くしたり、深くしたり、変化に幅をつけて、浅い時はゴロを打たせて取り、深く握るときは空振りを狙う。その使い分けはまるでフォークやスプリットのようだが、あえてチェンジアップと意識している。
「投手コーチの石田コーチからスプリットみたいだといわれるのですが、スプリットと意識すると落とさないといけない意識になってしまい、自分的に感覚が合わないんです。だからチェンジアップにしています」
そしてブルペンでも右打者、左打者の内角へ強く投げる意識も行った。強気の内角攻めとチェンジアップがうまくかみ合い、昨秋の公式戦で好投。明石商戦では来田涼斗にも内角攻めを行い、完投勝利。藤江にとっては会心の勝利だった。
「この試合に勝てばセンバツがほぼ当確される状況。去年もベンチ入りさせていただいたのですが、近畿大会準々決勝と、あともう1つ負けてしまったので、勝つことを考えて投げていました。この試合を含めて、右打者の内角、左打者の内角に投げ切れていなかったのですが、そこに投げ切れたことが勝因だと思います」
藤江星河(大阪桐蔭)
ただ自分のストレート、コントロール、投球内容には満足していない。選抜までに最速145キロを目指し、日々のブルペン投球から工夫が見える。まずはキレのあるボールを投げるために、25メートル~30メートルの距離からストレートを投げ込む。
「25メートルから30メートルの距離でも強いボールを投げれれば、マウンドからホームベースまでの距離である18.44メートルでも強いボールは投げられるので、そこは求めています」
また藤江は自身のピッチングフォームの課題点として、軸足に膝が乗らないことを挙げた。
「やはり軸足を乗せることでパワーが生まれるので、しっかりと軸足を捕手方向に向くことができれば、もっと力強いストレートが投げられると思います」
そうした取り組みで目指すのは田中誠也(立教大)のような投球だ。
「田中さんはものすごい速いストレートを投げるわけではないのに、空振りが奪えるのは憧れます。ああいう投球ができれば、選抜出場が実現した時、もっとチームに貢献できると思うので、これからも研究していきたいです」
最後にこの1年の意気込みを語った。
「選抜が実現するかもしれないですし、そうなれば、わくわく感がいっぱいで甲子園で投げたいです。チームを日本一に導ける投球をしたいと思います」
地道に積み上げてきた2020年の大阪桐蔭エースは全国の舞台でも躍動なるか注目だ。
(取材=河嶋 宗一)
春夏合わせて8度の全国制覇を果たし、いまや全国の高校球児、中学球児の憧れとなっている大阪桐蔭。
高校野球ドットコム編集部総出で、現役球児にも参考になる練習方法や選手の考え方など、徹底取材してきました!
大阪桐蔭の強さ、選手たちの意識の高さを学び、2020年からのチームや自分のスキルアップにつなげていこう!
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