Interview

ドラ1を現実化へ。世代を代表するスラッガー・来田涼斗(明石商)の課題

2019.12.28

 2020年の世代を代表するスラッガーといえば、来田涼斗明石商)の名前がまず浮かぶ。

 2019年の全国での活躍は素晴らしいものがあった。選抜準々決勝の智辯和歌山戦では先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打、選手権準決勝の履正社戦で先頭打者本塁打。甲子園での活躍が評価、注目度を高め、今ではスカウトからも高く評価されているという。

 そんな来田は2019年以上の活躍を見せるためにどんな課題をおいて練習に取り組んでいるのか、話を聞いた。

来田の欠点克服のために取り組んだノーステップ打法

ドラ1を現実化へ。世代を代表するスラッガー・来田涼斗(明石商)の課題 | 高校野球ドットコム
来田涼斗(明石商)

 来田の評価について狭間善徳監督について聞くと、さっそく狭間節が飛んだ。
 「あいつは普段は打たないのに、甲子園で打つ。だからプロ、プロという声が聞かれる。何がプロや」

 このコメントはある意味、来田の本質を現したものといえる。甲子園という大舞台で打てる勝負強さ、スター性を評価しつつも、安定した結果を残せていない要因である技術的な課題を解消できなければ、プロでも厳しいという話をしているのだ。そういうこともあっての厳しいコメントだろう。

 来田はもちろん、この1年間のパフォーマンスについて、満足していない。
 「県大会では全然打てないですし、先輩たちに助けられた1年だったと思います」

 

 来田には技術的な狂いが出ていた。それはノーステップ打法による体の突っ込みだ。まず来田が高校2年生になってからノーステップになった理由は狭間監督が進めたものだ。狭間監督はその意図についてこう説明する。
 「来田はタイミングの取り方が下手なんです。上手い選手は足を挙げながらうまく投手のボール、軌道に合わせることができるのですが、来田は足を挙げながら合わせるのが課題なんです。センバツの本塁打を振り返ってください。すべてノーステップでしょう?」

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国体での来田涼斗(明石商)

 改めてセンバツの2本塁打を見てみると、確かにノーステップで打ち返している。狭間監督はノーステップにする意図をイチローと松井秀喜を例に出しながら、説明を行った。
 「イチローも日本では振り子打法でしたが、メジャーにいってからは振り子をやめた。松井も、アメリカにきて小さなステップに代わった。速い球に対応するために工夫した結果、皆、ステップが小さくなっていくんです。来田はそういうところを考えてほしく、ノーステップを変えていきました」

 実際に来田もセンバツ前のインタビューでは、手ごたえを感じるコメントを残している。
 「今、タイミングという面ではいい感じになってきていると思います。ボールをとらえる確率は以前に比べ、明らかに上がりました」

 それがセンバツの活躍にもつながった。ただこの打法はもちろん万能ではない。狭間監督は「前かがみになっている」と指摘し、来田自身も
 「前かがみになることで、アウトコースの球は打てるのですが、強いボールが打てず、自分が追求する逆方向への強い打球が打てなかった」と反省する。

 強豪校はその課題をすぐに察知する。秋の近畿大会準々決勝の大阪桐蔭は、前かがみになり、ボールが死角に感じる内角を強く攻めたのだ。結果として安打は振り遅れの打球1本のみ。本塁打はなく、来田らしい打撃はできなかった。

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ドラ1を現実化するための課題

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来田涼斗(明石商)

 今も来田はタイミングの取り方、足の挙げ方を試行錯誤している。打てる確率を高めることを考えれば、ノーステップが一番だ。ただ狭間監督は今後のことを考えて、足を挙げることを容認した。ただし1つ注文をつけた。自分が取り組んだことを継続することだ。
 「来田の課題は自分がこれだと思ったことを継続すること。すぐ自分の好きな方向へ流れてしまう癖がある。気持ちに波があるんですよね」

 狭間監督がここまで来田に厳しく姿勢面を指摘するのは来田のポテンシャルの高さを評価してこそである。狭間監督は来田を初めて見たのは中学2年生の時。中学生離れのパフォーマンスに衝撃を受けた。
 「体の強さもすごかったですし、何よりスイングスピードの速さは明徳中で見てきた生徒の中でも記憶にありません。足も速い選手でした」

 

 来田は中学通算25本塁打を放つなど走攻守で高いパフォーマンスを示し、50校ほど多くの学校が勧誘に来る中、明石商に行くことを決めたのは、兄・渉悟さん(現日本体育大)の影響が大きい。

 明石商では狭間監督の下、厳しく指導を受けてきた。現在、高校通算29本塁打。多いほうではあるが、来田のポテンシャルの高さからすれば、さらに打ってもおかしくない。伸び悩みの理由としてはタイミング面が挙がる。

 来田は2020年へ向けて逆方向に本塁打を打てることを目指している。
 「29本のうち、逆方向への本塁打は4本ぐらいでしたので、もう少し伸ばしていきたいです」

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ティーバッティングでも深く掘って打つのが来田流だ

 それはティーバッティングでも深いこだわりが見える。来田はティーバッティングでも、普段と同じ打席のように深く掘って打つ。その時スパイクは埋まっていて、下半分が見えない。
 「このほうが安定して打ちやすいです」

 その後、見事なフルスイングでボールを打ち返していたが、下半身の安定性が復調のカギとなるだろう。

 2020年、主将として日本一を目指すためにチームを引っ張る来田だが、個人の目標はプロ。それぞれの課題を聞くと、プロを見据えたコメントばかりだ。
 「まず打撃について確率の高い打撃をしていきたい。そして走塁については、今まではあまりこだわりはなかったのですが、これから深く追求していかなければプロでは厳しいと思っています。そして守備面も苦手なところがあるので、基礎的なところも磨いていきたいです」

 そのため日々の行動も変わってきている。現在の体重は85キロ。ここから増やす予定はなく、スピードを求めた肉体へ切り替えている。柔軟性を増やすために風呂上りのストレッチは欠かさない。
 「私生活でも気が抜けない生活になっています。自分の夢はプロ野球選手ではありますがただ行くだけでは意味がないので、覚悟をもって臨んでいきたいと思います」

 近年、ドラフト1位になった野手は高校3年になってからのパフォーマンスは素晴らしいものがあった。スカウトから高い評価をされている来田だが、昨年のインタビューで掲げた「ドラ1」という目標。それを現実化するには技術的にも、精神的にも、ホンモノとなりうるか。この1年のパフォーマンスに注目だ。

(取材=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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