最速151キロ、二季連続甲子園ベスト4と全国的な活躍も…。もがき苦しんだ中森俊介(明石商)の2019年【前編】
2002年生まれの中でも世代ナンバー右腕の呼び声が高い中森俊介(明石商)。実際にその投球は素晴らしいものがある。常時140キロ中盤・最速151キロの直球、多彩な変化球の精度もレベルが高い。
だからこそ求められるものが非常に高い。中森にとって2019年はさらに高みを目指すうえで、苦しんだ1年だったといえる。そんな中、中森は進化するためにどんな答えを導きだしたのか。2019年を振り返りながら、迫っていく。
誰よりも文句なしの内容が求められる
インタビューに応じる中森俊介(明石商)
選抜では4試合・31.2回、7失点の好投、選手権では最速151キロをマークするなど全国の舞台では、ハイレベルなピッチングを見せる中森俊介だが、自分自身のピッチングは納得していない。
「正直いうと、先輩に頼りすぎたところがあったと思います。夏でいえば杉戸理斗さんに頼りすぎてしまったところがあり、エースにふさわしいピッチングが全然できなかったと思います。秋もフォームを見失ってしまいました」
球速、球威、変化球ともに申し分ないが、中森、狭間善徳監督ともに理想が高い。約1年とバッテリーを組んだ水上桂(東北楽天7位)が語る。
「普通の投手の場合、勝てばナイスピッチングなのですが、中森の場合は無失点でも、安打数が多ければ良くないと指摘される感じです。だから求められるものは本当に高いなと思いました」
そんな期待が高いのは、狭間監督が中森を初めて見たときに惚れ込んだことが影響している。
「私が初めて見たのは、中森の中学2年生秋頃です。私が明徳義塾中時代につながった先生の紹介で、篠山東中学校を寄らせていただいたのですが、今も忘れもしません。三塁側のブルペンで投げていたのですが、非常に良いボールを投げていました。足も遅くないですし、打撃もよい。惹かれましたね」
キャッチボールをする中森俊介(明石商)
中学3年には最速138キロをマークし、中森も明石商の練習を見て、進学を決断。わずか2年で151キロまでスピードアップしたが、中森のなかで、2年生になってからのピッチングは、満足せず、投球フォームの変更を行った。
「自分の投球フォームは、テイクバックに入る際、腕だけ遅れて入ることがあるので変えてみたいと思ったんです。踏み出す際に、右肩が上がっている状態。また足上げも変えたんですが、変えた結果、バラバラになってしまいました。
どう崩れてしまうのかというと、前に突っ込んでしまうというか、左足で一本で立つ時に、どうしても前傾姿勢になったりとか後ろに反ってしまったりとか安定しないのが課題でした。」
ピッチングの状態は上がらず、秋の大会では打たれる試合も多くなり、本来のピッチングができなくなってしまった。狭間監督はシーズン中に投球フォーム変更したことを厳しく叱責した。
「なんか見たら足の挙げ方が変わっているんですよ。呼んだら『奥川さんの真似をしています』と答えて、『それはあかんで。お前な、それは(試合がない)冬にやるもんや。何を途中に変えるんだ』と怒って、元に戻したんですけど、状態はなかなか上がらなかったんですよね」
狭間監督は中森の探求心の高さによる行動だったと語る。中森がいろいろな投手の動画を見て参考にしていることは知っている。ただ公式戦が続く中での投球フォーム変更はリスクがある。それを指摘したのだ。
雨天中止がもたらした近畿1勝と中森の復調
東山戦での中森俊介(明石商)
ただ中森が復調しなければ、勝利の道はない。近畿大会初戦は東山に決まった。幸運だったのは、雨天ノーゲームにより初戦登場が1日延びたことだ。そうと決まれば、19日~20日の間、投球フォームの修正を行った。
その修正法として狭間監督は好調時のビデオを見せた。それは選抜準決勝の東邦戦と選手権準々決勝の八戸学院光星戦の試合を見せた。
「まず東邦戦の試合を見せたのは、一番力みがなく、良いフォームで投げられていたからです。そして八戸学院光星戦では島袋翔斗選手の場面で投げた151キロですね。この時のフォームと今の中森のフォームを見比べながら、ひたすら修正作業です」
結果、東山戦では、7安打を打たれながらも3失点完投勝利。本人は調子が最悪と振り返ったが、狭間監督は「もし雨で1日延びず、もっと打撃のチームだったら厳しかったかもしれません」
大阪桐蔭戦での中森俊介(明石商)
恵みの雨により近畿1勝をつかんだ中森は大阪桐蔭戦までフォーム修正。試合が近づく頃には狭間監督からも「最悪の状態から脱してきた感じですね。大阪桐蔭戦まではまずまずの内容でしたし、あの本塁打も広い球場だったら入っていなかった、多分入っていなかった当たりだったと思います」
ただ中森は打たれるまでの過程を猛省した。
「先頭打者に死球を与えてしまい、続けてヒットを打たれてしまい、さらにホームランを打たれるという最悪な取られ方でした。またホームランも2ボールからストライクをとりにいったボールが高めに浮いてしまいました。この場面、高めではなくて、低めに投げたりできれば良かったと思います」
打たれそうな場面になればそれを察知して、危機回避を行うピッチングが求められる。中森も、狭間監督が求めているのは9回安定して低めに投げられ、完封する試合を多くすることだ。そのためにスタミナ強化はもちろん、無駄な力を入れずにフォーム修正することが求められる。
それは単なる技術修正ではない。体の機能を見直したリニューアル作業だった。
前編はここまで。後編では現在抱えている課題について、そして高校野球ラストイヤーへの思いを語っていただきました。後編もお楽しみ!(後編を読む)
(取材=河嶋 宗一)
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