「補欠合格」から始まった日本代表への道 尾崎悠斗(糸島ボーイズ) 精神力を武器に高校野球でも日本代表を目指す
2019年に二人の日本代表選手を輩出した糸島ボーイズ。そのうち、U-15日本代表に選出されたのが尾崎悠斗だ。
屈強な体格の選手が揃うU-15日本代表の中で、尾崎は171センチ61キロと決して体格が大きいわけでない。だがスピンの効いた最速135キロの直球を武器に、フィリピン戦では1イニングを三者凡退に打ち取る。危なげない投球で世界大会デビューを飾った。
今回はそんな尾崎に、中学野球を振り返って頂いた。日本代表までの道のりを辿っていく。
体力以上に成長した精神力
尾崎悠斗(糸島ボーイズ)
「実は尾崎は、セレクションでは補欠合格でした。辞退者が3、4人出たため入団することができたのですが、あれよあれよという感じで成長して日本代表に入りました。体は決して大きくはないですが、度胸もあるんですよ」
そう語るのは、糸島ボーイズを率いる北村俊策監督だ。
入団にはセレクションを勝ち抜かなければならない糸島ボーイズだが、尾崎は補欠合格から入団に漕ぎ着けた。当時は体が小さいだけなく力もなかったが、尾崎は気持ちでは負けていなかったと当時を振り返る。
「他の選手よりも少し下からのスタートだと思っていました。なので、それだけ頑張らないといけないなと思ってました」
投手だけでなく、内野の守備も得意としていた尾崎は、堅実なグラブさばきと軽快なフットワークでまずは野手としてチームの信頼を掴む。1年生の冬頃からベンチ入りを果たすと、2年夏の新チームになってからは投手としても登板機会が増え、投手兼遊撃手として頭角を現わす。
次第に、同学年でNOMOJAPANに選出された香西一希と二枚看板を形成するようになり、春季全国大会、ジャイアンツカップと2度の全国大会の舞台を経験した。
「投手としては、ジャイアンツカップ予選の京築ボーイズとの試合で手応えを感じました。三振も取ることができましたが、自分の思うようにボールを投げることができたと思います」
少しずつではあるが体が大きくなるにつれて、パフォーマンスも上がってきたと話す尾崎。だが、それ以上に北村監督が成長したと語るのが精神面だ。ピンチでも動揺することなく、果敢に内角を突けるピッチングは、尾崎の大きな武器であると北村監督は話す。
「タイブレーク(一死満塁からイニング開始)に入った試合で、相手の四番バッターが打席に入った時も内角を突いてフライに打ち取ったり、左バッターも苦にしません。度胸も尾崎の武器ですね」
[page_break:高校でももう一度日の丸を背負いたい]高校でももう一度日の丸を背負いたい
尾崎悠斗(糸島ボーイズ)
技術面も、精神面も大きな成長を遂げた尾崎は、全国大会での実績が認められて、侍ジャパンU-15日本代表に選出された。選ばれたことについては「正直驚きました」と振り返るが、いざ日本代表のメンバーが集まるとさらに大きな驚きが待っていた。
「上には上がいるなと思いました。一番すごいなと思ったのは福原聖矢です。2年連続ということもあって、ずっと1番セカンドでチームを引っ張っていて全てにおいて完璧と言うか。一人だけ違うなと思いました」
また同じ投手でも勉強になる選手は多くいた。中でも、安仁屋ヤングスピリッツの仲宗根大斗は、どんなピンチの場面でも自分の投球が出来る投手だった。その精神力の強さに、尾崎は非常に驚かさせたと語る。
「仲宗根大斗は、1試合目に満塁の場面でリリーフで登板したのですが、ピンチだったのにも関わらず緊張せず変化球も真っ直ぐもしっかり投げれていて、本当にすごいなと思いました」
日本代表を経験したことで、より高い向上心が身についた尾崎だが、今春からは高校野球の舞台に進むこととなる。
高校野球でも投手としても、野手としても活躍していきたいと意気込む尾崎は、目標とする存在として2018年のドラフト会議で中日ドラゴンズに1位で指名された根尾昂の名前を上げる。
「同じ内野手と投手をやっている選手というところで、根尾選手を目指したいです。 ピッチャーとしては150キロという数字を目標に、高校でももう一度日の丸を背負いたいと思います」
そのために今は、とにかく体重を増やして体を大きくすることを意識していると話す尾崎。体力と精神力を兼ね備えた尾崎が、高校野球でどんな活躍を見せるか楽しみだ。
文=栗崎 祐太朗
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